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2020年1月、いきなり今年を代表する邦画が出て来たー「ラストレター」

 2020年1月、いきなり今年を代表する邦画が出て来た。

 と、いきなりベタ過ぎる一言をかますが、半ばそんな気持ちでいるのも事実である。はっきり言って、今年のベストワンの判断基準は私の中ではコレだな、と思っている。ちなみに去年は「チワワちゃん」が基準になったのだが。

 「ラストレター」は一応「ラブストーリー」ということになっている。実際、ラブストーリーである。青春時代の恋愛と、大人になった今とが交錯し合う。しかしただ交錯し合う訳ではない。主人公とその元恋人ーのふりをした彼女の妹の文通がやがては、元恋人とその妹の子供達にも波を及ぼす。子供達は主人公の手紙を通じて、自分の親の青春時代を知ることになる。これだけだと、なんだか甘酸っぱい空気が想像出来る。

 ところが、それで済まさないのがこの映画の企みのうまさだ。

 主人公の元恋人は冒頭で亡くなったことが明らかにされる。しかし、その時には何故死んだのかは明かされない。その妹が、姉の亡くなったことを知らせようと代わりに同窓会に出席するが、姉と勘違いされてしまう。その際に姉の同窓生から言われたある何気ない言葉が、実は重要であったりもする。何故元恋人は亡くなったのか?その理由が明かされる場面では、思わずつらくなってしまった。

 そこからがこの映画の本領発揮なのだ!

 実はここまではほんの序の口に過ぎない。後半は甘酸っぱい展開から一転、ビターな主人公の故郷彷徨劇になる。自分自身と元恋人にまつわる場所を巡った先に待っていたものとは何か。その顛末も全部語っても構わないと思うのだが、今はやはり実際に観てもらうのが一番だろうと思う。

 とは言え、やはりこれだけは言いたい。

 この映画は、「今を生きるとは何か」という手掛かりを、明確ではなくても見出せるような作品だ、と思う。

 若い世代が見ても、この映画はとても深い感動、しかも、単純明快ではないけれど、胸に詰まる何かを与えてくれる。本当に、2020年いきなり凄いのが来たぜ!という映画です。

 

 


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