第9回 相続人から外れるパターン(放棄)| 学校では教えてくれない相続の話
行政書士の長岡です。相続の話、9回目となる今回は、法定相続人が自らの意思で相続人から外れる「相続放棄」ついて解説してみます。
相続人から外れるパターン(その1)
亡くなった人が多額の借金を抱えていた場合、その借金は相続人である子どもなどが責任を持って返さなければならないのでしょうか。そういった話は昭和のドラマでよく見た気がしますが、実際には相続放棄を選択することによって、借金の返済から解放される可能性があります。
ただし、相続放棄にはいくつか注意点があるんですね。
プラスの財産も含めて放棄しなければならない
まず、相続放棄を選択すると、借金だけでなくプラスの財産を相続する権利もすべて失うことになります。例えば、「借金は引き継がないけれど自宅だけはもらい受ける」といったやり方は通用しないわけです。
すべて引っくるめて相続するか否かを選択しなければならないのであれば、「相続した自宅を売って借金を返済してもまだお金が余る」のなら相続したい、と考えるのは自然なことだと思います。逆に、「自宅を売っても借金を返しきれない」のであれば、放棄を選ぶ人もいるでしょう。
もちろん、「親の遺産は(財産から借金を引くと)プラスなのかマイナスなのかわからない」ということもあり得ます。そのような場合を想定してか、「限定承認」といって、借金の返済額を相続した財産の範囲内に限定する制度があるのですね。ただ、手続きに手間がかかることもあって、あまり活用はされていないようです。
期限内に放棄しなければならない
また、相続放棄には期限があるので、そこにも気をつかわなくてはいけません。これは「相続の開始(があったことを知った時)から3か月以内」と決められていますので、ほとんどの場合は「亡くなってから3か月以内」になるかと思われます。限定承認する場合も同じく3か月以内に手続きしなければなりませんので、ご注意ください。
ちなみに、「長年、音信不通だった叔父が亡くなっていて、自分が相続人であることを叔父の死後6か月経ってから知った」みたいな場合は、そこから3か月と考えられる可能性もあるでしょう。
正式な手続きを踏まなければならない
ここから先は
学校では教えてくれない相続の話
相続・遺言の解説記事を投稿していきます。入門レベルです。16号から先は3か月に1本のペースで更新予定です(全20回の予定)。