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第10回 相続人から外れるパターン(欠格・廃除)| 学校では教えてくれない相続の話

行政書士の長岡です。相続の話、10回目となる今回は、法定相続人が相続する権利を失ってしまう、「欠格」と「廃除」について解説してみます。

相続人から外れるパターン(その2)

前回の「放棄」は、法定相続人が自分の意思で相続人から外れる仕組みでした。

それに対して「欠格」と「廃除」は、法定相続人の意思とは関係なく、相続人から外されてしまう制度です。

欠格

まず、相続に関して不正を行った人は、相続人から外される可能性があります。「相続人の欠格事由」というもので、被相続人を死亡させて遺産を譲り受けようとした人や、自分以外の相続人を死亡させて取り分を多くしようとした人などが想定されていますが、かなり特殊な事例といえるでしょう。

また、被相続人をだまして遺言を書かせた人や、遺言書を偽造した人、そして、遺言書を破棄した人なども、それが発覚したら相続欠格となる可能性があります。

民法 第891条(相続人の欠格事由)
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

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廃除

次に、被相続人に対して虐待を行った人や重大な侮辱を与えた人を、被相続人の意思によって相続人から外す仕組みがあります。これが「推定相続人の廃除」という制度なのですが、放棄と同じように家庭裁判所に請求して認められない限りは、廃除はできません。ですので、一時的に親子げんかをして「お前には財産を一切やらん」みたいな展開になっても、それだけでは効果がないのですね。

廃除が認められた後で気が変わった場合は、いつでも家庭裁判所に請求して取り消すことができます。だからといって、気軽に利用できる制度ではないのですけれども。

民法 第892条(推定相続人の廃除)
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

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なぜ「遺留分」が出てくる?

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