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第16回 遺留分とは| 学校では教えてくれない相続の話

行政書士の長岡です。相続の話、16回目となる今回は、遺言を作るときなどに気を付けなければならない「遺留分」について解説していきます。

はじめに(遺留分とは)

遺留分を大雑把に説明すると、「相続において家族に認められた最低限の取り分」という感じです。この遺留分があることによって、たとえ遺言には「次男に全財産を」と書かれていたとしても、妻や長男も一定の財産を受け取ることができるのですね。

遺留分は、遺言だけでなく遺贈や生前贈与(時期や内容にもよります)にも適用がありますので、「亡くなる直前に次男に全財産をあげてしまった」みたいなケースも該当します。

なぜ遺留分が必要なのか

もちろん、「自分の財産なのだから自由に処分しても問題ないのでは?」という考え方もあるでしょう。でも、例えば「全財産を愛人に」なんて遺言が通ってしまったら、場合によっては妻や子が生活に困ってしまうかもしれませんよね。

そもそも、「自分の財産」と表現していますが、「その財産は家族の支えがあってこそ築けたもの」と考えることもできるでしょう。そう考えると、家族に一定の権利を認めるのも自然な流れといえるのではないでしょうか。

遺留分の計算方法

先ほどの「次男に全財産を」という例で考えてみましょう(子は長男と次男の2人だけとします)。遺留分の計算方法も法律で決まっていますので、妻と長男にはそれぞれ、遺産の4分の1と8分の1をもらう権利が残ります。

民法第1042条(遺留分の帰属及びその割合)
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
e-Gov法令検索

イメージとしては「法定相続分の半分」です*。ちなみに、兄弟姉妹には遺留分がありません。「兄弟姉妹の生活まで面倒見なくてもよい」という考え方なのではないでしょうか。

*親だけが相続人の場合は3分の1になります。

遺留分の請求

先ほどの事例、妻と長男も遺産をもらいたいのであれば、次男に対して「遺留分侵害額請求」をしていくことになります。ようするに、自分の取り分を取り戻すわけですね。

数年前までは「遺留分減殺(げんさい)請求」という方法でしたが、近年の法改正によって少し内容が変わりました。「現物そのものを取り戻す」から「金銭で補償してもらう」という考え方に変わった感じです。

遺留分侵害額請求は必ずしなければならないのか

あくまでも権利があるだけですので、例えば「次男が全財産を受け取っても構わない」というのであれば、請求する必要はありません。妻は遺言内容に納得していて、長男だけが請求するようなケースもあるでしょう。

おわりに(遺留分も考えながら遺言を作る)

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