買い物をもっと自由に - 毎日の「あたりまえ」をリデザインする
こんにちは、クックパッド買物事業部の長野です。
個人noteは初投稿 👶🖋よろしくお願いします。
先日 2019/12/5 にクックパッド本社にて開催したCookpad Product Kitchen #5 で、デザイナーさん向けにクックパッドマートの取り組みについてお話しさせていただきました。その時の発表内容を公開します。
--------- 以下、発表内容 🎤---------
こんにちは、買物事業部の長野です。
本日私からは「買い物をもっと自由に- 毎日のあたりまえをリデザインする」と題して、お話しをさせていただきます。
はじめに
少しだけ自己紹介をさせていただきます。
私は2010年にクックパッドに入社して、もうすぐ丸10年になります。社歴は割と長いほう。デザイナー兼エンジニアとして、ずっとサービス開発をしてきている人間です。
「デザイナー兼エンジニア」という属性にやや違和感を持たれる方もいるかもしれません。私が入社した頃はまだ開発メンバーも少なく、UIデザインからプログラミングまで全般担当する機会が多かったのがきっかけではあるのですが、「ものをつくる」という意味ではデザインもプログラミングも好きだったので、両方やり続けて今に至っています。
一昨年まではずっと、クックパッドのレシピサービスの開発をやっていました。ですが、昨年から少し領域を変えて、買物領域の新規事業の立ち上げに参加し、今はその注文ユーザー向けアプリのプロダクトマネージャーをしています。
では、ここから本題。
「買い物をもっと自由に」とはどういうこと?
「買い物をもっと自由に」
と聞いて、みなさんはどんなことを想像されるでしょうか?
(5秒間考えてみてください・・・)
最近はネットスーパーだったり、買い物代行サービスだったり、「買い物」をテーマにした新しいサービスがたくさんあります。
ですが、日々の主な買い物手段というところで考えると、
やはり、「近隣のスーパーに行く」という方が今もほとんどではないでしょうか。この「あたりまえ」の買い物スタイルは、今もまだまだ変わりがないように思います。
では、この「近隣のスーパーに行くあたりまえの買い物」を少し掘り下げて考えてみます。
例えば、「品ぞろえ」。そのスーパーに置いていないものは買えません。近所スーパーの品ぞろえが豊富ならいいですが、小さなスーパーしかない場合などは、そこにあるもので妥協せざるを得なかったりします。
「営業時間」はどうでしょう。最近は遅くまで営業しているスーパーも増えていますが、仕事終わりの時間には閉まっていたり、在庫が少なかったり。休日は混雑でレジが行列するなんてこともよくあります。
「物流形態」については、普段あまり考えることはないかもしれませんが、スーパーの商品は、生産者さんが出荷してから市場や仲卸、問屋などを複数経由して私たちの元に届きます。なので、ほとんどの場合出荷から数日たったものしか店頭に並びません。また、その物流工程でのコストが商品価格に上乗せされ、どうしても高くなるのが現実です。
そう考えると、私たちが普段「あたりまえ」に行っているスーパーでの買い物が、実はいろいろな制約を受けていることがわかります。
次は、ちょっと別の視点から考えてみます。
買い物って、買って終わりじゃないですよね?
スーパーでは、品物を選んで、レジに並んで、買って帰る、といったことをします。
ですがその前に、多くの人が「今日は何を作ろうか」と考えたり、レシピを調べたりしています。
また、買って帰った後にも、再度作り方を調べながら調理をして、出来た料理を食卓に並べ、「いただきます」「ごちそうさま」。ここが、ユーザーの本質的なゴールだと思います。
だとすると、現在「買い物をする」という行為は、ゴールに至るまでの体験が3つに分断されてしまっています。
さらに注目しておきたいのが、ここ。
この二つの工程にクックパッドは頻繁に登場します。なのに、この体験全体をつなぐことが出来ていない。もはやクックパッドがやらずして誰がやるのか、と言えるかもしれません。
こうして、知らず知らずのうちに受けている制約や、途切れている体験を考えると、私たちの買い物はまだまだ不自由。もっともっとよい体験に変えていくことができるのではないかなと考えています。
クックパッドマートがやろうとしていること
そのような問題意識から、私たちはクックパッドマートというサービスを立ち上げ、展開しようとしています。
クックパッドマートとは、ひとことで言うと「生鮮食品ECプラットフォーム」です。
このようなアプリの画面だけを見ると、普通のネットスーパーと変わりないように思われるかもしれませんが、実際は裏側の仕組みが全く違います。
1つ目の特徴として、取り扱う商品。
地域の販売店や生産者さんのこだわりの食材を扱うのですが、クックパッドマートはこれらの商品の在庫を自分たちで持ったり、物流センターに集めたりといったことをしていません。ユーザーの元へ配送するその日に各販売者さんから集荷をして、そのままお届けする仕組みを作っています。
そうすることで、どこよりも新鮮な状態で安く商品を提供することができます。
2つ目の特徴は、受け取り方法。
クックパッドマートは現在、自宅までの配送を行っていません。近所にあるドラッグストアやクリーニング店などに専用の冷蔵庫を設置し、そこを受け取り場所として配送するという形をとっています。
ユーザーは自分の好きな時間にその受け取り場所から商品をピックアップします。そうすることで、自宅で待つ必要もなく、生鮮品の配達で問題になりがちな再配達の問題などもクリアできます。
さらに、配送コストも格段に抑えることができるため、最低注文金額なしで、1品からでも送料無料というサービスを実現しています。
3つ目の特徴は、買う体験。
これはクックパッドマートの「鶏もも肉」の商品画面ですが、ここで「チキンソテー」「トマト煮」「チキンカレー」など、その食材を使った食べ方を複数提案しています。
ここでレシピではなく食べ方を提案するというのがポイント。ここで特定のレシピを提案してしまうと、自分の家にない食材だったり、好みでない味付けだったり、ユーザーの気分とのミスマッチが起きやすくなります。なので、ここではあえて、レシピより一つ上の食べ方という粒度での提案を行っています。
このような提案があることで、食材を選びながら自然と「今日何作ろうか」が決まったり、いつも同じ食材で同じ料理ばかり作ってしまうマンネリ化の悩みを解消できる体験を作ろうとしています。
ここまでお話ししたサービスの特徴からわかるように、クックパッドマートは「買い物」をテーマにしつつも、「どうやって買うか」だけでなく、「何を買うか」から、それを「どう料理するか」まで、料理体験全体をよりよくデザインするというところを目指しています。
クックパッドマートがまだまだできていないこと
ここまで、クックパッドマートがやろうとしていることをお話ししてきましたが、現実はまだまだできていないことだらけです。
まず第一に、そもそもサービスを使える人がまだまだ少ないです。
現在クックパッドマートの受け取り場所は都内を中心に約40箇所。この地図の粒度で見ていただくとわかるように、家から徒歩圏内に受け取り場所がある人はまだまだかなり限られています。
この受け取り場所をもっともっと増やしていかないと、私たちの目指す世界は実現できません。そのために日々営業活動をしているメンバーももちろんいるのですが、デザインという観点でもできることがありそうです。
例えば、受け取り場所には、そのビルや店舗のオーナーのような意思決定をする立場の人がいます。その人たちが、進んで設置したいと思える動機付けや仕組みの設計といったサービスデザインによって、受け取り場所の設置を促進させることもできるかもしれません。
受け取り場所が順調に増やせたとして、今度はそこに商品を供給してくれる販売者が足りない、ということも十分に起こり得ます。
参加してくれる販売者を増やすという観点で、現在進めている取り組みのひとつに集荷方法の幅を広げる仕組みのデザインがあります。
当初クックパッドマートは販売店一つ一つを集荷して回るモデルで運営していたのですが、それだとスケールに限界がありました。そこで最近は、複数の販売者で共同の集荷場所設け、そこに商品を持ち込んでもらい、その集荷場所をドライバーが回る、という仕組みを試しています。
また農家さんや漁師さんのような生産者の方々は地方に多いので、今後はより遠方の生産者も参加できる仕組みが作れないかを検討するなど、仕組みのデザインはまだまだブラッシュアップさせていく予定です。
また、そもそもですが、販売者が積極的に参加したい!と思えるプラットフォームかどうかというのも重要です。参加しても、モチベーションを保てなければ離脱してしまうので、購入者の声を届けたり、売り上げを可視化したりといった、より積極的に参加したくなるプラットフォームのデザインも磨き上げていく必要があります。
さらには、ユーザーの料理体験全体を繋ぐこと。
この点については、先ほど「食べ方提案」の例をお話ししましたが、まだまだやれていないことだらけです。
そもそも今は、何を作ろうか考えるタイミングでクックパッドマートを見てもらえていない。そして、食材を受け取った後にも、再度クックパッドマートに戻ってくる動機付けが弱い。この辺りは、クックパッドのレシピサービスの強みもより活かしていくべきところだと考えています。
料理や買い物といった領域は、ネットだけで完結できる体験ではないからこそ、アプリでの体験と物理世界での体験をつなぐUXデザインを突き詰めていく必要があると考えています。
また、色々とサービスを磨き上げいっても、最終的に適切なユーザーに認知されなければ意味がありません。
現在も、このように冷蔵庫にラッピングをしたり、チラシをポスティングしたり、販促イベントを行ったりといったマーケティングを行っていますが、
今後も、自然と「使ってみたい!」と思ってもらえるコミュニケーションデザインの領域はとても重要になってくると思います。
まとめ
ここまで、クックパッドマートがやろうとしていることと、まだまだできていないことについて、お話ししてきました。
まとめると、
クックパッドマートは、スーパーに行く毎日の「あたりまえ」を料理体験としてデザインしなおすことで、
最初にみなさんに少し考えていただいた「買い物をもっと自由に」という世界を実現しようとしています。
そのために必要となるデザインの対象がとても幅広いということも、ご理解いただけたかなと思います。
今日この場にお集まりいただいた皆さんは様々なデザインのバックグラウンドをお持ちの方だと思います。
・・・この後の流れは察しのいい方は想像がつくかもしれませんが、
ぜひ、みなさんのお力を貸してください!
クックパッドでは現在様々な領域のデザイナーを積極採用中です。もし今日の話で少しでもご興味を持っていただけた方は、ぜひこの後また懇親会などでもお話しさせていただけたら幸いです。
ご清聴ありがとうございました。
--------- 発表ここまで ---------
おわりに
今回のイベントはデザイナーさん向けということで、最近はグラフィカルな部分のUIデザインなどはあまり担当していない分、期待に沿うお話ができるか正直心配でした。
ですが、当日発表を終えて、パネルディスカッションでの質問や懇親会でお話してみると、事業や企画の構想段階でのユーザーリサーチやデザイナーの動き方に関心を持ってくださる方も多く、楽しくお話させていただくことができました。
サービスを作っていく上で、人のことを深く考え設計していく行為はすべて広義のデザインと言えると個人的には思っています。そういうお話ができる機会はとても楽しいものでした。
多くの方の関心が高かった新規事業におけるユーザー調査の話は、クックパッドマートでも初期の頃から色々とトライしてきているので、どこかのタイミングでまとめてみたいなと思います。
また、今回の発表の中で少し触れた食べ方提案機能の設計の話や、アプリのUI設計の話は、もう少し詳しい内容をnoteのクックパッドマートアカウントの方にも投稿しています。よかったら見てみてください。
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