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【マッチプレビュー】2022 J3 第15節 SC相模原vsAC長野パルセイロ

雨降って地固まる

 第13節でヴァンラーレ八戸に対してホームゲームで勝利を収め、久しぶりの勝点3を得たパルセイロでしたが、第14節のカターレ富山とのアウェイゲームでは上位組の勝負強さの前に敗れ、上位につけるカターレ富山から勝点を奪うことはできませんでした。
 連勝を達成し勢いをもってアウェイ2連戦目に突入することはできませんでしたが、カターレ富山との戦いでチームが目指しているスタイルの一定成果が見えてきたことも事実であると考えています。

シュート数:5vs16
枠内シュート数:1vs9
パス成功数:138vs630
支配率:38%vs62%

 得点以外の数字は勝敗に直結しませんが、不確定要素の多いサッカーにおいて勝利する確率を上げるための作業は欠かせません。以上で提示したようにいくつかのデータを見る限り、パルセイロはおよそ狙い通りの試合運びができていたと言えるのではないでしょうか。
 それでも結果は1-0でカターレ富山の勝利となり、サッカーの醍醐味を身を切る形で体験することになりました。第14節を含めて5試合連続でのウノゼロ勝利を収めたカターレ富山ですから、先制点を奪った後の戦い方はある程度割り切っていた部分もあるかもしれません。カターレ富山の守備が一定水準で機能していて、ボールを握られてもゴールに鍵をかけることができた守備はゴール期待値からも推し図ることができます(0.15vs1.05)。ゴール期待値はシュートを打つ場所であったり、状況から算出されるものなので、シュート数が増えていながら得点につながらなかった要因としては、相手にとっての急所まで届かなかったことが挙げられます。
 ただ、一歩一歩成長しながら課題を解決していくパルセイロを見ているとどこかで爆発して止められなくなるのではないかと期待してしまいます。まずは、この1週間の"Grow"を第15節SC相模原戦で見せつけ、良い状態でホームに帰れるようにパルセイロファミリーで戦い抜きましょう。

通算対戦成績

 SC相模原とのJ3初顔合わせは2014シーズンのJ3初年度まで遡ります。J3創設クラブのライバルであり、切磋琢磨してきたSC相模原とパルセイロですが、パルセイロはSC相模原に対してJ3通算9勝4分3敗と大きく勝ち越しています。ただ、この通算記録は2014〜2020シーズンまでのものです。つまり、J2を経験したSC相模原とは初対戦ということになります。現状こそなかなか浮上に苦しんでいる様子のSC相模原ですが、2020シーズンの追い上げを考慮するとまだまだ勢いが死んだわけではないと考えます。暦も7月に入り心機一転、是が非でもホームで勝点3を積み上げたいところでしょう。
 パルセイロは通算成績で大きく勝ち越しているものの、直近で対戦した2020シーズンは1分1敗と勝ち星をあげられていません。そして、パルセイロの2020シーズン昇格を阻んだ張本人でもあります。パルセイロは自力で昇格を決められる状況だったので、SC相模原からしたらこじつけに感じるかもしれませんが、SC相模原に対して1度でも勝利できていれば昇格できていたのも事実です。
 2020シーズンは三浦文丈氏、今季は薩川了洋氏が率いるSC相模原。監督人事という点で観察しても因縁を感じないわけにはいきません。2020シーズンはパルセイロを知る監督に対して勝利をあげられなかったため、その事象が今季は起こらないように前半戦で必ず勝利を掴み取らなくてはなりません。
 ある意味で因縁の相手とも呼べるSC相模原に対して、アウェイの地で勝利することで、前節の成長をより確かなものにして、勝利という結果にまで繋げられるように全力で戦いに臨みましょう。

今季これまでの両クラブ

SC相模原

 まずはホームチームのSC相模原。14試合を終えて4勝2分8敗で勝点14、暫定14位に位置しています。
 開幕前の移籍市場では昨季J2組ということもあり、1年で復帰するために船山選手、水本選手、佐相選手、中島選手など各ポジションを的確に補強しました。FC岐阜やカターレ富山の補強、松本山雅FCの戦力保有に隠れていましたが、的確な補強を進めたことで開幕前の評価では戦国J3の中でも昇格争いに食い込む位置につけると予想されていました。
 ただ、コロナ感染者問題の影響もあり開幕戦と第3節で勝利したものの、4月と5月に行われた試合では未勝利となりました。5月19日に行われたY.S.C.C.横浜との一戦に引き分け、高木琢也監督を5月20日に解任、そして2016年にSC相模原を率いていた薩川了洋氏の監督就任を発表します。監督就任1試合目のカターレ富山との試合は敗れましたが、その後は新戦力の融合もあり2試合連続で3得点を奪い連勝を達成します。ただ、その後は1分2敗と再び失速しています。今季初の連勝をスタートさせたホームでパルセイロを打ち破り、7月頭から好スタートを切りたいところでしょう。
 やはり気になるのは失点をする試合の多さでしょう。これまでの14試合で無失点試合はわずかに2試合となっており、得点を奪えてもそれ以上に失点して敗れた試合もあります。この失点癖を解消できるかどうかが今後の浮上に直結する課題になってきそうです。

AC長野パルセイロ

 次にアウェイチームのAC長野パルセイロ。14試合を終えて5勝5分4敗で勝点20、暫定10位に位置しています。
 前節カターレ富山に敗れたことで今季初のボトムハーフに転落しました。ただ、前節の敗北が響いての順位ということではなく、5月頭から始まった5試合連続勝ちなしだった状況が響いていると言えるでしょう。あの試合終了間際の…とたらればを言い出しても仕方がないので、目の前の試合で勝点3を確実に拾っていくしかありません。
 前節でも先制点を奪われて相手が戦いやすい環境を献上した形になってしまったパルセイロ。これで今季リーグ戦で先制点を献上してしまった試合は9試合目と決して楽観視できない数字であると言えます。必ず逆転まで持ち込める得点力は今のところ見られていないため、ここで連敗せずに勝点3を積み重ねるためには先制点を奪わせない。もしくは、必ず先制点を奪うという意識が重要になってきます。1点に笑い、1点に泣くのがサッカーの醍醐味ですが、これからはより多くの試合で…。いや、全試合で1点の重みで笑っていられるように先制点にこだわる必要があると言えるでしょう。
 運に左右されてしまうこともあるのがサッカーの面白さですが、その運すらも自力で手繰り寄せるような熱い熱い戦う姿勢を見せてほしいです。

今節の注目選手

※当該選手が出場することを保証するものではありません。

SC相模原

 SC相模原の今節注目選手は加藤拓己選手です。
 5月31日に清水エスパルスからSC相模原への育成型期限付き移籍が発表され加入した選手ですが、加入後5試合で既に4ゴールを奪う得点能力を持っています。監督が変わり、ゴールの奪えるストライカーが加わったことはチームにとって大きな追い風になっていることでしょう。ゴールを挙げた3試合では1勝1分1敗。2ゴール挙げた第12節での勝利に止まっています。FWとしては自分が奪ったゴールでチームを勝たせたいはずですから、試合終了の笛が鳴るまでパルセイロのゴールを狙い続けるに違いありません。
 鹿島アントラーズの育成年代を経て、山梨学院高校、早稲田大学と強豪校に進学し、U-16〜U-19の世代別代表経験もある大物ストライカーです。大卒ルーキーということもあって伸び盛りですし、180cm/82kgの恵まれた体格を生かした攻撃は、会場もどよめくほどの迫力があります。
 パルセイロにとって一番調子に乗せたくない選手で、最も警戒しなくてはならない選手の一人であると考えます。同クラブに所属する船山選手や藤本選手からのアドバイスを受けてメキメキと成長するストライカーは、1週間で更に大化けするポテンシャルを秘めています。被先制点に課題の残るパルセイロは無失点で乗り切るためにも、この選手には要注意でしょう。

AC長野パルセイロ

 AC長野パルセイロの今節注目選手は森川裕基です。
 今季これまで14試合全てにスタメン出場し、CF・両WG・IH・WBとどんどん活躍の場を広げています。そして、現在チーム内トップタイの3得点を記録し、得点した試合では全勝中となっています。得点した試合が2試合なのでまだ確固たる傾向であると判断はできかねますが、彼が躍動している場面ではスタジアムのボルテージも高まります。第7節の鹿児島ユナイテッドFC戦で見せた同点弾のような泥臭い押し込みからも得点できますし、その空中戦の強さを生かしたヘディングゴールも奪うことができます。
 FW起用がほとんどでありながら、勲章(?)のイエローカードは既に3枚の出場停止リーチがかかっています。カードが出るようなプレーを手放しで賞賛するわけではありませんが、攻撃でも守備でも彼の献身性で耐え切れている場面も少なくありません。暦も6月から7月に変わり、心機一転連勝街道に乗るためにも、彼の攻守における献身性に注目です。
 チーム単独トップに躍り出るゴールを1つでも2つでも3つでも…5つでも、気がすむまで相手ゴールを脅かし続けてほしいところです!

試合の注目ポイント

失点と得点の流れ

 お互いに失点という観点に改善点が見られることからどのような流れで、どの時間帯でスコアが動くのかが非常に重要になってきます。
 SC相模原はこぼれ球から5失点、セットプレーから4失点となっており、パルセイロはクロスから5失点、セットプレーから5失点というように明らかな失点パターンがあります。このことから言えることは、パルセイロとしてはシュートを打った後、ボールがゴールネットを揺らすまでとにかく相手より早く反応するということ。SC相模原としてはクロスを起点としたサイド攻撃が鍵になるということです。
 また、SC相模原は比較的失点数の多い立ち上がり15分間と試合終了までの15分間を無失点で流れを掴めるかどうか。パルセイロは前半後半ともに終了までの15分間を無失点で乗り切れるかどうかが試合の大きな流れを決めるといっても過言ではないでしょう。
 1点の重みがわかっていてもチームに染み付いた癖はなかなかとることができないものです。それはお互いにとって同じことですが、現状を変えて1つでも順位表の上に上がっていくためには殻を破る必要があります。殻を破るという観点において最もわかりやすいのが得点です。殻を破るゴールを奪うのはどちらになるのでしょうか。

まとめ

 ここまでSC相模原vsAC長野パルセイロのマッチプレビューをしてきました。お互いに現在地は順位表の半分よりも下。お互いにとって満足のいかない位置からの脱却を目指し、熱い火花を散らすこと間違い無いでしょう。
 SC相模原は、前節3連敗を止めたドローをこれからのジャンプ台として一気にエンジンをかけるきっかけになる試合にできるのか、パルセイロは、前節の敗北を流れを断ち切り、良い形でホームに戻ることができるのかがかかっています。
 パルセイロとしては、2020シーズン最後まで昇格圏内を争ったライバルに2022シーズンで負けるわけにはいきません。昨季J2組であろうとなかろうと世は"戦国J3時代"。強いものが勝つのではなく、勝ったものが強者。まだまだここから昇格は目指せる!

獅子よ、千尋の谷を駆け上がれ。

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