成瀬巳喜男監督『乱れる』と決して乱れない高峰秀子の前髪
どえらい傑作。なぜ今まで見てなかったんだろうと強く後悔…。デコちゃんこと高峰秀子のあらわな額、完璧にとかしつけられた前髪がついに「乱れる」その瞬間にすべてを賭ける。どこまでも唯物的な、その着地点が美しい…。カタストロフでありながら、センチとはほど遠いラストシーンひとつとってみても、高峰の夫・松山善三オリジナル脚本による本作は、やはり単なるメロドラマとは一線を画している。言ってしまえばあのラストカット、成瀬巳喜男のフィルモグラフィー中でもおそらく屈指の、高峰秀子の超クロースアッ