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陽気山脈リプレイ②よろしく編

前回のお話はこちら。


【ここまでのあらすじ】
狂気山脈っつってんだろ! なんだ、その陽キャの割合は!


そんなわけで、今回はいよいよストーリーに切り込んでいきたいと思います。
※以下、シナリオ『狂気の峰へ』のネタバレが含まれます! 未踏破の方はご注意ください!
※なお、本キーパリングに関する文章は、KPのまくらさんが通ってきたRPを参考にさせていただいております。









KP : ニュージーランド航空の南極飛行観光旅客ジェット機が謎の失踪を遂げた。南極調査隊の必死の捜索の末、旅客機の無線信号が途絶えた座標の先には、未知の巨大な山脈が立ちはだかっていた。前人未踏のその山脈は、最高高度が海抜1 万300 mにも達する、エベレストを超える世界最高峰であることが明らかになった。
  誰が呼んだか、“狂気山脈”。
 そのあまりに暴力的な山嶺に、今、無謀にも挑もうとするものがいる。果たして、神々の頂の上で、探索者たちが出会うものとは。

KP:登山道具が所狭しと壁にかけられたロッジの中、暖炉がパチパチと音を立てて部屋を温めている。白髪の老年男性を中心として、6名がその場に集まっている。いずれも、色とりどりのウェアを来た登山家たちだ。
 

『狂気の峰へ』表紙より

K2(ケヴィン・キングストン) :「皆、集まってくれてありがとう。僕はケヴィン・キングストンだ。イニシャルをとってK2と呼んでくれると嬉しい。もちろん、イニシャルに恥じないよう、K2は単独で登頂している。今回、パーティのリーダーを務めることとなった。よろしく頼むよ」
K2「今回のパーティはここに集まった6名だ。初対面の者も多いだろう。まずは自己紹介をしてくれ」

テッペン「テッペン・マッターホルンです、よろしくお願いします。スイス出身なのでアルプス山脈はひととおり登りました」

 そう静かに言うと、雪焼けした肌の彼はペコッとおじぎをしてすぐに座った。
 次に勢いよく立ち上がったのは、雪焼けした肌の男。

ゼッテェ「ゼッテェ・タス・ケルッテバヨだ! ブラジルの方からきた! ここにいるみんなはもう家族だと思っている! いろんな山に登ってきた! 全ての山が大好きだ! 楽しんで行こうぜ!!!!!」

 最大ボリュームのラテンボイスがロッジを揺らす。――本当に彼を雪山に連れて行って大丈夫なのか。主に雪崩的な意味で。
 至極まっとうな懸念がゼッテェ以外の一同を包む中、彼の隣にいた雪焼けした肌の男が、いそいそと腰を上げる。


エーイチ「エーイチ・マイ・トッタルデと申します! 今回カメラマンとして、マッターホルンさんに取材同行させていただいております! 二度取材でエベレストを踏破しました! 日本人とイギリス人のハーフです。よろしくお願いします!」

 ハキハキと自己紹介した彼は、日本式のお辞儀を披露して座った。あっぱれ、これぞ礼の国と紳士の国の間の子である。帽子の先端でむしょうに揺れるうさぎのマスコットに目をつぶれば、所作の一つ一つが実に立派なものであった。

K2「では、次に……」

 ケヴィンの視線が、容姿端麗なセミロングの黒髪の女性に移る。それに応え、女性は立ち上がって言った。


『狂気の峰へ』表紙より

穂高「穂高梓です。日本生まれ。医者をしてます。今回はパーティの医療スタッフとして参加させてもらいます。職業登山家ってわけじゃないから、皆さんのように先鋭登山の実績があるわけじゃないけど、それなりに山は登ってるつもり」
K2「彼女は僕が個人的に声をかけたんだ。そこいらの自称・登山家よりよっぽど登れるよ。国境なき医師団で紛争地帯を走り回りながら働く傍ら、休日にはいろんな山をやってる。技術も知識も十分だ。信頼していい」

 そして、いよいよ最後の一人となった。高価な登山装備に身を包んだ若い青年が、意気揚々と背筋を伸ばす。


『狂気の峰へ』表紙より

コージー「コージーだ。出身はオーストラリア。よろしく」

 どことなく軽薄そうな印象の青年である。そんな彼に、ケヴィンは付け加えた。

K2「彼は今回の登山隊のスポンサーとなってくれた、オスコー財団の御曹司だ」
コージー「御曹司だなんて言い方、やめてくれよ。俺はいわゆる金持ちのボンボンとは違う。自らの足で、自然に抗う一流のアルピニストだ。今回の登山だって、親父がカネを出さなかったとしても俺は登っていたさ。いいか、俺は、俺の力で登るんだ。オスコー家の力で登るんじゃない」
K2「……だそうだ。よろしく頼むよ」

 こうして全員の自己紹介が終わり、ケヴィンは一つ咳払いをした。真剣な眼差しの彼の口から語られるのは、これより自分たちが登る狂気山脈のこと。最高峰の推定標高は、じつに1 万 300 m。調査のため名だたる登山家たちが挑むも、一人の帰還者もいないという大失敗に終わった。恐ろしい結末に各国が二の足を踏む中、名乗りを上げたのがケヴィンらである。

K2「僕たちは登山家だ。今までにない大きな山が姿を表した。臆している場合じゃない」

 語るケヴィンの声に熱がこもる。

K2「何が起こるかわからない、危険な挑戦になる。だが、夢がある。そうだろう?」

 強い言葉に、テッペンはうんうんと頷く。そんなテッペンを、彼の大ファンであるエーイチがキラキラした目で見ていた。

推しは毎秒シャッターチャンス

ゼッテェ「帰還者0ではない! 私の親友は生きているがな!!!」
エーイチ「!!?????」

急な顔圧

 しかし、突然のゼッテェにかっこいい登山家が作った空気は吹き飛ばされた。その場にいた全員の視線がゼッテェに集まる。そういえば、ゼッテェは彼の友人が第一次登山隊にいたことをまだ皆に説明していなかった。

ゼッテェ「……あとで説明するので!!! 失礼した!!!!」
エーイチ(根は礼儀正しい人なんだな……)

 エーイチが評価を改める中、テッペンは明らかにゼッテェから距離をおいていた。テッペンは、内向的な性格なのである。

K2「では、話を戻そう。南極上陸の許可や、そこからの移動手段などはオスコー財団が手配してくれた。狂気山脈周辺は気候条件が厳しく、安全上の観点から航空機が飛ばせない」

 ケヴィンは、ホワイトボードに狂気山脈の登山地図を貼り出す。

K2「だから、南極上陸後、南極調査隊の犬ぞりを借りて山脈の麓、おおよそ 4,000 m地点まで移動する。そこから、標高差 6,000 mの登山だ。目標は、山脈最高峰ただひとつ。航空写真から割り出された地形図を元に、最も登頂確率の高いルートを割り出した」
エーイチ(じゃあ生存率にはかなり期待できるかな……)
K2「第一次登山隊が通ったのと、恐らくほぼ同じルートだ」
エーイチ(絶望的だった)
K2「以上だ。ここまでで何か質問はあるかい?」

 ぐるりと見回したケヴィンに、エーイチが挙手をする。肯首で発言を促され、エーイチはゼッテェにたくましい体を向けた。

エーイチ「ゼッテェさん、差し支えなければ先程のご親友についてお聞かせいただいても?」
ゼッテェ「実は私の親友は第一陣で登っていたんだ! きっと今も助けを待っているはずだ!!!!!!」
エーイチ「なるほど、そういう事情があったんですね」
ゼッテェ「私は彼を助けるためにこの山に登るんだ!!! よろしくな!!!!」
エーイチ「わかりました! 協力させていただきます」
ゼッテェ「君はいい人だな!!! 親友だ!!」
エーイチ「え!!?????? ありがとうございます!!!!」

「You are my bestfriend…!」

 ゼッテェは、親友認定したエーイチを前にニコニコと笑っていた。ニッポンジンのコトナカレ精神を継いだエーイチも、つられてにこっと笑った。

穂高(……食料などの観点からしても、だいぶ絶望的じゃないかしら……)

 一方、紅一点は冷静であった。

次回「③狂気山脈麓編」はこちら。


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