映像制作の企画は、ターゲットのニーズを意識する

映像制作の一連の作業を学ぼうとすると、まず最初にやらなくてはならないのが「企画」です。
映像コンテンツの良し悪しやヒットするしないの８割は企画で決まるとも言われます。
一方で、企画ほど教えるのが難しいものはありません。
撮影のアングルやサイズの決め方、構成や編集の論理、などは、ある程度のセオリーがあり、それを学んで忠実にやれば、少なくともファーストステップはクリアできます。
ところが、企画というものは「こうやれば確実に良い企画ができる」というセオリーや方程式が「ない」と言っても過言ではありません。

しかし、その中にも、良い企画の条件というものはあるはずです。
私はテレビプロデューサー時代に、多くの新番組枠を開発しました。また編成の仕事に携わった時には、無数の企画に目を通しました。
そうした経験から、採用される企画の条件として最も重要なことは次の3つだと、学生たちに教えています。
➀新しさ（オリジナリティ）、②ニーズがあるか、③実現可能性
この中で、学生たちに企画を考えてもらうと、最も難しいという反応が返ってくるのが、②のニーズがあるか、です。
②の意味をかみ砕いて言うと、どの企画にもターゲット層を設定する必要があり、その層が何を求めていて、そのニーズに合致した企画になっているかが重要だ、ということです。
私は、➀～➂のうち、②を最も深く考えるように授業では指導します。
その理由は、放送番組に限らずおよそどのような商品開発にも、ターゲットの設定が必要なこと、そしてそのニーズに合致することが商品をヒットさせる絶対条件の一つだということです。つまり、どんな業界で仕事をするようになっても、その精神は必要だからです。

その精神は、広く考えれば「思いやりの心」の醸成につながります。
自分の作りたいものを作る、のではなく、客のニーズがどこにあるかを調べてそれに合致させるように作る。それを繰り返していくと、相手の思いをくみ取り、それに合わせていく力が身につきます。
必ずしもビジネスシーンだけでなく、日常の人間関係の中でも「ターゲットのニーズに合わせる力」は役に立つのではないかと思うのです。