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全中を主催しないことを求める請願に対する長野県教委の回答

私たち長野県の部活動を考える会は、2022年1月28日に「全国中学校体育大会を主催しないことを求める請願」を、5月26日に「部活動の顧問を強制しないことを求める請願」を、それぞれ長野県教育委員会に提出しました。

最初の請願から1年2カ月が経った2023年3月31日、遂に県教委の回答が私たちのもとに郵送されてきました。両請願の内容と県教委の回答、当会の考察を2回に分けて紹介します。1回目の今回は「全国中学校体育大会を主催しないことを求める請願」についてです。なお、この請願は、回答までに実に1年2カ月を要しました。

請願の内容

以下、①②の観点から全国中学校体育大会を長野県教育委員会が主催しないことを求めました。

①事実上、時間外在校等時間の上限を超えて教員が部活を指導しなければ大会には参加できない。
②部活動のあり方や中学生の発達段階に照らし、必要性・有益性が認められず、かえって悪影響をもたらす全国大会を、教員の働き方改革を進めるべき立場にある長野県教育委員会が主催することは不適切である。

県教委の回答

以下の内容が回答です。

長野県中学生期のスポーツ活動指針」(以下「指針」という。)において、1日の活動時間の基準を具体的に定め、短時間で効果的な練習の実施を求めているほか、校長に対しては教員の負担が過度とならないよう指導・是正することを求めている。
県内の公立中学校185校全校から、指針に沿った活動基準の範囲で活動しているとの回答を得ている。日本中体連は、全国中学校体育大会の目的を「中学校教育の一環として中学校生徒に広くスポーツ実践に機会を与え、技能の向上とアマチュアスポーツ精神の高揚をはかり、心身ともに健康な中学校生徒を育成するとともに、中学校生徒の相互の親睦を図るものである」としており、長野県教育委員会はこの大会開催の趣旨に賛同している。

「全国中学校体育大会を主催しないことを求める請願」に対する長野県教育委員会の回答

考察

県教委の回答には「県教委が全中を主催する」理由は大きく以下の2点が記されています。

  • 県内全ての公立中学校で指針に沿った活動基準の範囲で活動している

  • 日本中体連の大会開催の趣旨に賛同している

1点目では、県教委は「県内の公立中学校185校全校から、指針に沿った活動基準の範囲で活動しているとの回答を得ている」と言っています。指針とは「平日は少なくとも1日、土日は少なくとも1日以上を休養日。1日の活動時間は長くとも平日では2時間程度、休業日は長くとも3時間程度。長期休業中は休業期間の半分以上の休養日を設定」というものです。

しかし、本当に県内すべての中学校でこの指針が遵守されているのか、確たる証拠はありません。これをお読みの皆様はいかが思われますでしょうか?当会メンバー(中学校教員)の証言からも、必ずしも県内すべての公立中学校でこの指針は守られてはいないことが疑われます。

2点目に関して「全中の目的に賛同している」までは理解できます。しかし、全中がその目的の通り機能しているのかという点には触れられていません。私たちは請願の中で、全中はその目的に反し「部活動のあり方や中学生の発達段階に照らし、必要性・有益性が認められず、かえって悪影響をもたらす」と指摘しました。これに対して何も言及せず「趣旨に賛同するから」という回答では理屈が通りません。

まとめ

「全中を主催しないでください」という請願に対して、県教委が「はい分かりました」と言うはずがないとは思っていました。確かにこの間、部活動については、スポーツ庁・文化庁への有識者からの提言や、新ガイドラインも出されたりと、国としても動きが活発であったと言えます。

しかし、その回答の内容は、根拠が不明で理屈が通らないものでした。部活動の活動時間が基準に従っているというのは疑わしいものでした。また、勝利至上主義に傾倒し部活を過熱させる要因になっている全中が、本来の大会の趣旨を果たしていないという指摘を無視した回答は大変残念なものでした。

何度も問い合わせをし、「回答はできている。お待ち下さい」という返事が繰り返されるばかりで、ようやく送られてきた回答はA4でたった1枚(両面印字)でした。1年2カ月もかけてこの回答とは残念でなりません。

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