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BOC group casual meeting ④ 上手な吸引方法が知りたーい!

2021年1月6日、BOCプロバイダーグループ(一般社団法人訪問看護支援協会)が主催するBOC group casual meeting ④ がオンラインで開催された。
BOCグループ内限定で、約40名が参加した。Facebookグループ内で同時に配信を行い、一晩で150回視聴され大きな反響を呼んだ。

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本セッションは、BOCグループのメンバーである藤戸プロバイダー(看護師)が日頃から直面している、「吸引の難しさやその対応」をグループ内で共有し、ディスカッションすることを目的に企画された。

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「吸引が難しい」と感じるとき。

具体的には、「痰の貯留音が明らかに聞こえているのに吸引してもなかなか痰が引けない」や「口腔内から気管内に吸引チューブを挿入できない」

といった課題がある。

基本的な吸引操作や全身状態に合わせた対応を行ってはいるが、「体位ドレナージやスクイージングをしてもうまく痰を出せない」、「十分な水分摂取でも痰が硬い」など悩みは尽きない。


対応として、

・枕を外す(頚部伸展)

・呼吸に合わせる吸引

・他のスタッフに共有し交代を依頼する

など、様々な工夫やテクニックが紹介された。

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基本に忠実が一番!だけど、

2人目の登壇者である山本プロバイダー(看護師)は、吸引に特別なテクニックや魔法のような解決方法はなく、基本に忠実に行うことが患者さんの負担を減らすために最も必要なことだと強調した。

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吸引が難しくなる前に「気づきたい」

理想は、

「吸引が困難になる前に患者さんの変化に気づき、先手を打ったケアや対応を行うこと」

という本質的なコメントに、参加者の多くが頷いた。


さらに、実際の吸引カニューレを用いた構造や操作の基本について、また、ぬいぐるみを用いて有効な体位変換について解説した。

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吸引基礎知識をおさらい

ここで改めて、吸引に関する基礎知識について整理しながら解説したい。

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吸引を考えるにあたり、「誰が、誰に、何を、どうやって」行うのかを順番に見ていこう。

吸引の種類

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吸引は通常、鼻から吸うか、口から吸うか、または気管カニューレを介して吸うかの3種類に分けられる。


口腔ケアでは全てのテクニックが必要になるが、ケア中は主に口腔内吸引(鼻腔内吸引)なので、こちらから説明しよう。

吸引を行う上での3原則、評価をしよう!

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まず、吸引を行う上での3原則として、

・不必要な吸引を避けること、

・合併症を回避すること、

・効果的な吸引を行うことが挙げられる。


不必要な吸引を避けるためには、吸引が必要な状態かどうかを評価する必要がある。


口腔内吸引を評価するガイドライはない?

吸引の適応と評価については、日本呼吸療法医学会からガイドラインが示されている。

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口腔および鼻腔内吸引の適応について明記されているものはないが、一部参考にできる。

特に、2の視覚的に確認できる(チューブ内に分泌物が見える)は口腔内吸引においても当てはまる。さらに、口腔ケア時にしようした水やケア前後に確認できる湿性嗄声は吸引が必要な病態として評価できる。


何を吸うのか?

吸引操作によりいったい何を吸っているのかを整理しよう。

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口腔ケアで行う吸引では、主に唾液やケアに用いた水、口腔外科手術の術後であれば血液を吸引するシーンもあるだろう。

唾液の作用を復習

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唾液は唾液腺から分泌される。

耳下腺(漿液腺、サラサラ)、顎下腺(混合腺)、舌下腺(混合腺、ネバネバ)が大唾液腺といわれる。

1日に1〜1.5L分泌され、自浄作用や緩衝作用といった、口腔環境を良好に保つために欠かせないのが唾液だ。

唾液緩衝能って?

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食事をすると口腔内は酸性に傾くが、唾液緩衝能のおかげで徐々に中性に戻っていく。

ただ、例えば間食が多い食事習慣だと、唾液が口腔内を中性に戻す前に間食することで口腔内が常に酸性に傾いていることになり、う蝕が誘発されるので注意が必要だ。


このように大切な役割をしていて、良好な口腔環境の維持に不可欠な唾液を吸わなければならないというのが今回の吸引セッションであり、皮肉なものだなと思う。
とはいえ口腔内吸引は必要だ。

口腔吸引、長さは10cm

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咽頭(声門周囲)まで吸引カテーテルを挿入するとして、口腔から咽頭までの距離は約10cmなので、10cmを目安に挿入しよう。

口腔内の刺激により異常絞扼反射(嘔吐反射)が起こることがあり注意が必要だ。通常舌根部の刺激で誘発されるが、左右の歯に沿わせて挿入すると反射が起きずらい。

とはいえ、口腔内吸引で舌根部に触れずにカテーテルを挿入することはほぼ不可能なので、嘔吐反射はある程度やむを得ないと思う。

鼻腔吸引で嘔吐反射を防ぐ?

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一方鼻腔からの吸引では、舌根部にカテーテルが触れにくいので嘔吐反射を防ぐことができる。

上部消化管内視鏡や嚥下内視鏡検査時にも、「経鼻的に検査される方が楽」と言うな患者さんは多い。

鼻粘膜にはキーゼルバッハ部位などの出血しやすい部位があり挿入時には注意したい。

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痰とは何か?

改めて、痰とは何かを見てみよう。

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痰は咳によって気道系から喀出されるものの総称だ。

1日約10〜100mL分泌され、それを超える量が分泌されると痰として排出される。

気管内吸引

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口腔吸引、鼻腔吸引と同様、気管内吸引の長さを見てみよう。

通常鼻腔から気管分岐部へカニューレを挿入することは緊急時を除いてまれではあるが、24〜28cmと言われている。

また気管切開チューブの長さが7〜10cmであり、さらに気管の長さが10cmなので、チューブの先はすぐ気管分岐部であることを考慮し、カテーテルの挿入は長くなりすぎないように慎重に行う必要がある。

カテーテルの深さ一覧

カテーテル挿入の深さ一覧を下記に示す。

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吸引時のポイント(カテーテルサイズ)

吸引時のポイントとして、カテーテルのサイズにも注目したい。

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通常吸引カテーテルのサイズは気管チューブのサイズ(内径)の1/2が良いとされている。

例えば、内径8mmの気管チューブに挿入するカテーテルのサイズは、8mmの1/2で4mm。Frになおすと(3×4mm)12Frとなる。

吸引時のポイント(適切な吸引圧)

また、推奨されている圧は150-200mmHg(約20kPa)となっている。
イラストにあるように、もうちょっとで痰が取れそう!というシーンで、ついつい吸引時間が長くならないよう注意が必要だ。

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吸引時のポイント(吸引時間)

吸引の時間は、挿入開始から終了まで20秒以内、また吸引圧をかけている時間は10秒以内が推奨されている。

顎を引く?あげる?

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摂食嚥下リハビリテーションの領域で、

「誤嚥を防止するためには、顎を引いて食事をしましょう!」

と指導することがある。顎を引くことで喉頭侵入を防ぐことができる。


吸引をする際にはその反対で、つまり「顎を引くと飲み込みやすい」の反対をすると吸引がしやすくなる。


注:顎引き嚥下の喉頭侵入に対する有効性についてはこちらをご覧ください。
喉頭侵入を有する76名を対象に、顎引き嚥下と普通の嚥下の喉頭侵入率を比べました。
結果: 34.2% (26 / 76) の患者で顎引き嚥下は普通の嚥下に比べ喉頭侵入率が有意に低下しました。さらに咽頭残留も軽減しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33399994/

参加者(BOCプロバイダー)からの感想やアドバイスまとめ
・説明・協力を仰ぐ。
・口腔内を湿らす(経口吸引。乾燥しているとカテーテルが通りにくい)。
・鼻腔吸引時はカテーテルを一度水で濡らす。
・ゆっくり、感覚で狭い部位の通過を確認する。
・まくらを外す。場合によっては肩まくらのようにバスタオルを使用し、さらに気道を開く状態にすることも。
・カテーテルとコネクターの接続部分で吸引圧の調整をしながら行う。
・粘膜に吸い付いたと思ったら接続部分を開き圧を抜く。
・挿入するときのみ「カテーテルの根元を折り曲げ手技」を使っている気がする。
・結局吸引圧が上がるのは痰をたくさん吸引するとき、(早く多く吸い上げ時短に終了するため)。
・気管内で痰が多く長めに吸引したい時は(入りにくい人も)、カテーテルだけ残して呼吸してもらい、吸引を再度行うことがある。
・吸引が難しい人は、同僚の皆の成功体験を聞くようにしていて、どちらの鼻腔がチューブが入りやすいかや、タイミングや体位など、自分なりに分析して実践しています。そうすると、成功率が少し上がる気がします。
・基本を念頭に患者さんごとに苦痛のより少ないケアを行って行きたい。
・もう少しで気管に入りそうな感覚、触感って分かりますよね。しかし呼吸のタイミングがなかなか合わない。
・体が水分や栄養を処理できないのに過剰に栄養や水分が入ると痰や唾液がふえるんじゃないかな?と思いました。 吸引をかなり頻回にしていた方が、看取りで輸液を中止し、吸引をしなくていい状況になり、すごく穏やかな表情になります。
・意識障害、気管切開の患者さんが多いのですが、毎日腹臥位をとり、背部に微振動をあてることで痰が上がってきて吸引しやすくなります。 腹臥位が困難な場合は完全側臥位で行っています。 日勤帯で一度取り入れるだけでも夜間の吸引が変わってくるかもしれません。
・ありがとうございました。振り返ることが出来ました。質問しそびれましたが、自分でも調べてみようと思います。
・基本をおさえつつ、みなさん工夫を加えながら行っているんだな〜と視聴させて頂きました。

謝辞

セッション中やその前後で、BOCプロバイダーの方々からたくさんのアドバイスをいただきました。

ご登壇いただいた藤戸さん、山本さん。セッション中アドバイスをいただいた岡崎さん、太田さん、当山さん。グループ内でご意見、アドバイスをいただいた政時さん、飯田さん、村田さん、浦野さん、清水さん、山本さん、保口さん、渡辺さん、金山さん、野口さん、その他BOCプロバイダーの皆さんに、

心から御礼申し上げます。

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