【BOCプロバイダーnote】ワンケア・ワンギフト・ワンリハビリの精神で ~食べる楽しみをもう一度~
今回のプロバイダーnoteは、BOCプロバイダーの政時さんに、彼女が勤めている療養施設(NASVA)を紹介いただきます。
1. NASVA(ナスバ)とは?
独立行政法人自動車事故対策機構(National Agency for Automotive Safety & Victims' Aid)より委託された、自動車事故により脳損傷を生じ遷延性意識障害となった患者を専門に受け入れる療護施設です。
患者1に対し看護師1.3と濃密な看護体制をとっており、ワンフロア病棟システムで手厚い看護を実践します。
患者の入院期間は概ね3年間と長期に及びます。
2. 意識障害患者の看護の基本とは?
ただ「生命を維持すること」のみならず廃用症候群を予防し、患者さんの残された能力を、より人間らしい生活行動の再獲得に向けて引き出すことです。
患者さんが持てる能力を発揮できるように、その人の力を引き出し、方向づけを手助けします。
3. 食べられるお口づくり
・脱感作
顔面や口腔を触れられることに抵抗がある、また感覚が過敏な患者さんに対して行います。 手のひら全体を肌にしっかり圧迫するように当て、刺激部位を動かさず長時間続けます。
訓練の順序は、もっとも正中に遠いところからはじめ、徐々に正中へ移行していきます。
・表情筋マッサージ
顔面の筋肉は長期間動かさないでいると固まって動かしにくくなり、表情が出にくくなります。また、それに伴い意思表示ができにくくなります。
顔や口腔周囲の筋肉は食べることに関連しており、筋肉を動かすことが食べることへの第一歩になります。
・口腔マッサージ
モアブラシにリフレケアなどの口腔保湿剤をつけ、舌や口腔内粘膜を刺激します。 また、動かない舌や、硬くなった頬、口唇を他動的に動かします。
・喉のアイスマッサージ(嚥下反射誘発目的)
凍らせた綿棒で口蓋弓、舌根部、咽頭後壁などの表面を軽くなでるように2~3回刺激してから嚥下してもらいます。
マッサージ効果により嚥下反射を誘発します。
・口唇バンゲード法(口唇閉鎖目的)
口唇を左、真ん中、右と3等分に分け、それぞれ上下を母指と示指でつまみます。 次に示指を上口唇に当てて鼻方向に押し上げます。 下口唇も示指を当てて顎方向に押し下げます。
4. NASVAでの看護の精神
「ワンケア、ワンギフト、ワンリハビリ」
ワンケア(ケアの提供)
何か患者さんにケアを提供するときに・・・(口腔ケア、体位変換、おむつ交換など)
ワンギフト(心地よさの提供)
ケアは心地よい状態であること・・・
ワンリハビリ(機能の向上)
一つのケアの中にはリハビリの要素が含まれている
例)
・洗顔時に表情筋マッサージ
・口腔ケア時に口腔粘膜全体のマッサージや舌のストレッチ
→血行がよくなり口腔内の機能が高められます!
・おむつ交換時に下肢の屈伸運動や股関節ストレッチ
→関節拘縮予防や、可動域の拡大につながります!
ケアを提供することでそれが「日常生活の自立に連動する」という考え方です。
看護師主体の口腔ケアだけでなく、患者さん自身に歯磨きの感覚を思い出して頂くように患者さんの手を支えて促します。
5. 当院使用の口腔ケア物品
・モアブラシ
咽頭奥に絡んだ痰をからめとりやすく、口腔マッサージに使用しやすい http://www.oralcarestore.jp/shopdetail/001000000002/
・リフレケア
口腔マッサージの際に使用
・歯ブラシ
・舌ブラシ、スポンジブラシなど
参考文献
1)ブレインナーシング 2012年7月1日発行 メディカ出版
2)紙屋克子 意識障害患者のケア ブレインナーシング2004年夏季増刊 メディカ出版
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?