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私がイタリアで一番好きな場所 ~サリーナ島ケッパーの物語

その人に会ったのは、何回目かのサリーナ島訪問の時でした。最初にサリーナ島に行ったのはマルヴァズィーア・デッレ・リーパリという名ワインのカンティーナ訪問のため。そこのオーナーが紹介してくれたのが、サンティーノだったのです。当時彼は島の交通整理のおまわりさんで、「とーっても気の良い人」という印象、私たちの間では「良い人サンティーノ」と呼んでいました。

それから何年かして、彼は息子と別れた奥さんと共に塩漬けケッパーの会社を作ります。息子のロベルトは若者らしく、この小島の特産品を世界に広げるのだととても張り切ってミラノの展示会に出たりずいぶん頑張っていたそうです。それが突然の事故であっけなく逝ってしまう。

ケッパー5

サンティーノの元の奥さんマウリツィアは、彼の意志を継ごうと役場の仕事を辞めて生産から販売まで必死に働きましたが、いかんせん心の支えがない。そんな時に日本への輸出の話が持ち上がります。

私が応援している輸入業者リョーマ社長が、大阪阪急百貨店のイタリア展のために、彼女の商品を推薦したのです。すると百貨店のバイア―はわざわざサリーナ島まで行って、3~4軒の生産者を訪問。そして選んだのがマウリツィアのケッパーでした。さらに百貨店はイタリア展のために彼女を招致したいと伝えてきました、一方マウリツィアは、「ギリシャより遠くに行ったことなんてないのに」となかなか承諾してくれません。

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