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エッセイ036|ゆうすずみ

夕涼み、ってすてきだ。
夏は夕方がいい。日が落ちて、涼やかな風が吹くころ。オレンジ色と紺色のグラデーションになった空の下、いくつかのお店が出ている。子供のころ、そんな地域の夏祭りが大好きだった。

外でごはんを食べるのってなんであんなに楽しいんだろう。お花見、バーベキュー、バイキング。夏祭りももちろんそうだ。
虫もいるし、風でいろいろなものが飛んでいくから、室内の方が絶対に食べやすいのだけれど、外で食べるとなんだかちょっとした焼きそばや安いお肉を焼いただけのものも特別美味しく感じる。それが涼やかな夏の夜だったら、もう何もいうことはない。

それから、出てくる食べ物も美味しい。地域のおばちゃんたちが作ってくれるそれらは、家庭の味とも店の味とも違う、その日にしか食べられない料理。しかも、大鍋でつくるから美味しい。

わたしの家の近所は海が近かったから、海鮮をたくさんいれた鍋が振る舞われた。それはもう、これまで食べた鍋のなかでも一番美味しい鍋なのだ。 
母方の実家の方の夏祭りでは、初めて牛スジ煮込みを食べて、子供だった私はその美味しさに感動した。
 
いわゆる酒のつまみが多くて、そんなところも子供だった私からすると非日常だった。

顔見知りの近所の人たちが集まって、ひとつの大きなパーティーを開く。そんな感じだった。カラオケ大会なんかが始まるのもなんだか妙な温かみがあっておかしかった。

準備をする大人たちからすれば大変なのだろうけれど、東京でひとり暮らしをしている今となっては、本当に奇跡のようにも思える空間だと思う。

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