見出し画像

寝落ち電話●

深海魚、というタイトルで歌詞を書いてみた時にその世界を想像して書いたショートストーリーです。
実際曲を作ったわけではないのですが…。



無気力とか、別にそんなんじゃない。
『じゃあ君は何をして楽しいって顔する?』
だからその質問に答えられない私は、
私からすれば私じゃないわけで。
信じられないくらい眩しい微笑みに、
涙を堪えるなんて私じゃないんだってば。
『その顔も、やっと見れたって感じする』
嬉しそうな顔するのもやめてほしい。
誰も今のこの私を肯定しないで。
ねぇ、やめて。
これから先を私は見たくない。
『違うよ、一人で見るのが怖かっただけ』
どうして私の言葉がわかるの?
『分かるよ、君のことだから』
口も開いていないのに。
私の奥底なんて私ですら知らないのに。
『…だから知りたいんだ』
なんで、なんでそんなに私に。
ずっと知ってる間柄でもない。
情をかけるほどの、相手じゃないでしょう?
『でもどうかな、きっと君は僕を救うよ』
私があなたを?
逆じゃ、無くて?
『良かった。僕が救うかもって思ってるね』
「え…?」
『うん、でも僕は君に救われる』
「…」
『いいんだ、このままで』
眩しい微笑みに護られるように私は眠った。
どこまでも、どこまでも深い海に
潜ってるような感覚がした。
でもここが、嫌な場所だとは思わない。
貴方の話し声が遠くに聞こえる。
「みな、と、く…ん」
『…おやすみ』
「…ん」
『ほら、僕が…すく、われ…た』
シュワシュワと耳元を心地よい音が擽って、
深い深い海の底へ。
嫌いで仕方なかった明るい太陽の元から、
不思議と心地よい深海へ。
貴方の声で、私は深海に。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?