海外の先輩企業へのインタビューで感じた、ユーザー視点で考える大切なポイント

freee株式会社のカスタマーサクセス に関わるメンバーによる Advent Calendar12日目を担当するYujiです。

私は2020年1月に入社して以来、一貫して「APIプラットフォーム部」に所属しています。つまり、カスタマーサクセスを主業務として取り組んではいない人間です。自分のやっている仕事をもっとカスタマーサクセスに紐づけていきたいとも考えているので、その思いのをアドベントカレンダーにぶつけてみたいと思います。


私はデータのダブルインプットを阻止する部品作りをやってます

まず、私自身の仕事について「会計ソフトの会社のAPIプラットフォーム部で何してるの?」という問いに対しては、下記が回答になります。

●堅苦しく言うと・・・銀行やクレジットカード以外の外部サービス/プロダクトとのAPI連携を推進し、分断されたデータの利活用促進のアプリケーション(*1)開発の支援。

●わかりやすく言うと・・・、同じ内容を2度入れる手間の軽減(データのダブルインプット阻止)ができる部品を作っている。

(*1)ここでいうアプリケーションとは、スマートフォンのアプリとは違い、業務データを連携できるWebアプリケーションを指しています。平たく言うと、Aというサービスからfreee会計へのデータを登録するための土管のことをアプリケーションと呼んでいます。

業務レベルまで落としていくと、こんなことをやってます。

●freee以外のSaaSプロダクトや業務ツール(販売管理システムや基幹系システム)をサービス展開している会社に対し、freeeとのプロダクト連携を作ってくださいという提案営業。

●具体的には、ECサイトで日次の売上を締めたら自動でfreee会計に登録される、CRMシステムで営業担当者が発注書を回収できたら自動でfreee会計に登録されて請求書発行されるような部品を作ったり、外部の会社に作ってもらう計画を立ててもらっています。

●並行して、上記プロセスを経てfreeeアプリストアに公開されたアプリケーションの利用促進。ユースケースを十分に満たしていない機能や仕様があった場合、改善点の洗い出しとアプリの機能改善。

これらを推進していくことは、ユーザー事業所で利用している各種業務ツールのデータ分断を解消し、データのダブルインプット阻止につながります。freeeでは全社戦略として、このデータ入力の自動化を推進し、ひいてはよりよい経営示唆を与えることのできる「統合型クラウドERP」の構築を標榜しています。

freeeアプリストア

freeeアプリストアのキャプチャ画像
出所:freeeアプリストア(https://app.secure.freee.co.jp/
120を超えるアプリケーションを自社業務に合わせてご利用いただけます

業務効率化が図れ、多くの好事例が生まれています

データのダブルインプットを阻止し、データが通る土管(アプリ)を整備し、ユーザーに利用してもらう。もう少し掘っていくと、アプリは汎用的なソフトウエア(Horizontial)と特定業種に特化したソフトウエア(Vertical)に大別することができます。

HorizontialなソフトウエアとVerticalなソフトウエア

Horizontial, Verticalソフトウエアの比較
出所:著者作成

誰もが使う汎用的なソフトウエア(Horizontial)で一定のパターン化したアプリを提供することは、1つのアプリで多くのユーザー事業所に便益を届けることができます。一方でfreeeが向き合っている630万を超える個人事業主、中小企業の皆様にとって、業務上メインで利用しているソフトウエアは汎用的なものでなく、特定業種に特化したソフトウエア(Vertical)もあり、こちらのアプリ提供も重要になってきます(こちらは少数のユーザーに熱狂的に使われるイメージ)。

また、最大公約数的なユースケースを持ったアプリケーションでは満たしきれないニーズも一定数あります。例えば表計算ソフトを使って経営分析をする場合を考えても、以下のように様々なユースケースがあります。

例:表計算ソフトを使って経営分析ができるテンプレートを提供する
●A社では注視する指標は足元の売上高、受注件数、粗利率
●B社では生産性と案件進捗に関する指標
●C社では部門ごとに異なり、MoMのコスト削減額とYoYの売上高販管比率
●D社ではグラフ重視で、上記に出たような指標をA4・1枚でグラフ化

このような場合、ユーザーの求めるニーズはロングテールとなり、全てをfreee側でコントロール、ないしfreeeからその領域に強みを有するソフトウエア開発会社に声掛けをして開発してもらうことはリソース観点で難を要します。そういったケースの受け皿として、ユーザー自らAPIを叩いて意図する経営分析レポートが作れるように、データ取得方法やノウハウなどをfreee Developers Communityサイト内「ノンエンジニアのための freee会計 API 最初の一歩」等にて公開しています。

とはいえ、システム的な知識や経験に馴染みがないととっつきづらいものなので、APIとは何ぞや、どうやったら効率化を図りたい業務ができるのか、についての勉強会講座を開設したりして、ユーザーがやろうと思ったことができる施策にも注力しています。

APIに関する勉強会の一例:ノンプロ研講座「GAS×freee APIコース」

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出所:freee株式会社プレスリリース『ノンプロ研講座「GAS×freee APIコース」開講 全11回のfreee APIを習得するコースを提供』
上記のノンプロ研講座「GAS×freee APIコース」は2021年9月に開催したものですが、現在第2回を企画中です。お楽しみに。

最近では、経理担当者や労務担当者の方が「表計算ソフトで管理している受注済データを業後にfreee会計に自動でインポートする処理」や「従業員の残業管理と有給管理を毎月10日、20日に表計算ソフトに自動でエクスポートし、残業時間XX時間以上かつ有給消化率YY%未満の方にアラートを出す」といったご自身の使い方で業務を効率化している事例も増えています。(皆さん、すごい!)
上記のようなユースケースはfreeeの事例ページ「freeeアプリストアやfreee APIの活用」で30件超ご覧いただくことができます。

海外の先輩企業インタビューでの学び

ところで、海外にはfreeeのようなクラウド会計・人事労務ソフトを提供する企業としてアメリカのIntuit社(製品名はQuickBooks)ニュージーランドに本社を置くXero社という会社があります。両社とも今のfreeeの何倍ものユーザー数を抱える、いわば「先輩企業」です。半年ほど前、かつてその企業に在籍していたプロダクトマネジャーにインタビューした際、「連携アプリケーションの究極の目的は何?」という趣旨の質問をしてみました。その答えが多少のニュアンスの違いはあれ、両名から共通の答えが返ってきました。

●The answer is ”our customers go home earlier”.
●ユーザーの皆様に残業することなく、早く帰ってもらうことだ

データのダブルインプットをなくしていこう、それにより自動化を推進し、効率化を肌で感じてもらおう、という大義は自分自身決して見失ってないと思っていました。ただ、その先の、「何のために」、「それによりユーザーにどうなってもらいたいか」という結び付けが弱かったなと感じ、個人的には目から鱗のインタビューを行うことができました。

この仕事は何のためにやるのか、誰のためにやるのか、その主目的と測定方法はなにか。これらの点についてfreeeではOKRというメソッドに基づいた運用を四半期、半期、年度で行っています。もちろん私のチーム含め、ユーザーに価値貢献できる指標を特定し、追いかけているのですが、海外の先輩企業たちは「その先」に目的として置いている印象を受けました。(厳密にBusiness Objectiveが”go home earlier”かどうかはわかりませんので、著者の拡大解釈が含まれている可能性がある点はご留意ください。)

ビジネス目的であるユーザーへの価値貢献と戦略・戦術・施策をがっちりかみ合わせるには何が必要なのだろう。実は、freeeが2021年6月に発表した新戦略にもヒントはありました。日本のスモールビジネスの生産性は大企業や海外に比べて低い、というスライドです。『生産性を高める→自由な時間が増え、ひいては人生が豊かになる。テクノロジーはそのために貢献しうるものだ。』という「その先」をfreee社員(社内ではfreeersという呼称を使っています)は意識しないとダメだということを暗示しているようにも見えました。

日本の中小企業の労働生産性は大企業比で低い(キャプチャの左下)

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出所:freee株式会社『freee新戦略発表会(2021年6月22日)』

ユーザーの皆様の人生を豊かにする仕事をやっていきます

冒頭で説明した私の業務に加筆させていただきます。

●業務の目的:ユーザーに業務効率化を肌身を持って感じてもらうためのアプリケーションをどんどん世に生み出していくこと。それによりユーザーの皆様の生産性を高め、ひいては家に早く帰ってもらい、仕事以外の時間に時間を充て、人生を豊かにしていくもの。

●やっていること:堅苦しく言うと(再掲)・・・銀行やクレジットカード以外の外部サービス/プロダクトとのAPI連携を推進し、分断されたデータの利活用を促進のアプリケーション開発の支援。

●やっていること:わかりやすく言うと(再掲)・・・、同じ内容を2度入れる手間の軽減(データのダブルインプット阻止)ができる部品を作っている。

上記の考えは多少今後変更はあれ、基本スタンスはブレることなく、ユーザーの皆様に貢献していきたいと思っています。カスタマーサクセスに携わらなくとも、それに寄り添った部品を提供していきたいと本稿をまとめる中で改めて思うことができました。

ありがとうございます。
このアドベントカレンダーもいよいよ中盤。明日12月13日(月)のTakashi Okadaにバトンを回します!

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freeeアプリストアにある120を超えるアプリケーションを使っての業務効率化に関するセミナーを、12月15日(水)「はじめての連携アプリウェビナー」として開催します。

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