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危機を通り越して壊滅的な大阪ホテルマーケット

コロナショックの影響により観光客の激減、不要不急の出張の自粛などの影響により宿泊業界が悲鳴を上げています。

実は、このコロナショックの前からホテル業界においては、供給過多リスクが指摘されており、2018年末頃から宿泊単価の伸び悩み、稼働率の弱含み現象が観察されていました

特に、大阪の宿泊マーケットは明らかに供給過剰状態であり、宿泊単価の叩きあいが既にみられ、大阪の中心部のビジネスホテルでは、シングルルールの宿泊単価が税込みで5000円程度まで落ち込んでいました。

これにコロナショックが追い打ちをかける状況になっており、稼働率が事実上ゼロホテルも出現している模様です。

大阪のホテルマーケットの特殊性

ここで、何故、大阪のホテルマーケットがここまで厳しいかを説明してみたいと思います。

大阪は行政が規制緩和に前向きな対応を行い、経済活性化の意図もあり、民泊市場の活性化に取り組んできました。

大阪市内では、次のような3つの宿泊物件が供給されており、日本最大の民泊マーケットになっています。大阪市内の宿泊施設で特徴的なものとして、2016年末からスタートした「大阪市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(特区)」(以下、特区民泊)が挙げられます。

この特区民泊制度の導入と2018年6月に施行された住宅宿泊事業法による民泊(以下、新法民泊)により相応数の宿泊施設が供給されるに至っています。
これらの法改正により大阪市内では、旅館業法に基づく営業許可施設、新法民泊、特区民泊の3種類の宿泊施設が併存する形となっている。

このように行政が旗を振って宿泊マーケットを育ててきた状況にあります。

大阪のホテル供給

リーマンショックが発生した2008年以降2014年までは大阪圏全体の宿泊施設数は減少傾向が続いていました。

その後の景気回復、インバウンド顧客の増大に伴い大阪圏においては、2015年頃から一気に宿泊施設の新設が相次ぐ状況に一転。

特に2016年以降、大阪市内で建設されるホテルは前年比2割超のペースで増加し、ボトムとなった2012年対比でみれば2018年末には、96%増とほぼ施設数が倍増するに至っています。(しかも今後、新規ホテルの計画が目白押し)

※旅館業法許可施設とは、旅館業法の許可が必要とされる「旅館・ホテル」「簡易宿所」等の許可施設数。

大阪ホテル数

大阪のホテル

このように旅館業法対象施設だけで見ても、全国平均を大幅に上回る供給が続いてきたというのが大阪ホテルマーケットの1つの特徴です。

このような供給過剰を受け、大阪のホテルマーケットにおいては、2018年の夏あたりから稼働率(Occ)の低迷、宿泊単価(ADR)の伸び悩み現象が現れ、ホテルの収益率が低迷している状況となっていました。

このように既に悲惨な状況にあったのです。

大阪の民泊マーケット

以上は旅館業法対象施設、つまりホテルの供給数についての解説でした。次に大阪の特殊性である民泊マーケットについて見ていきましょう。

大阪市は、市区町村単位で見れば日本一の民泊マーケットです。

まずは新法民泊の届出状況について、観光庁から出された最新データに基づいて解説していきます。(2020年3月11日:住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況より)

全国的に見ると新法民泊の届出住宅数は増加基調にあります。やや増勢が以前と比べて緩やかになっていますが、全体的には増加基調を維持しております。(届出住宅数は、各時点での届出済件数の総数のことです)

全国 新法民泊の届出状況

次に大阪市のデータを見てみましょう。

大阪市 新法民泊の届出状況

2019年の中盤あたりまで増勢を続けてきた大阪市の民泊届出住宅数ですが、2019年後半から増勢に陰りが見え始め、2019年末あたりから減少に転じるようになりました。

届出住宅数の増減は、新規届出数から新規廃業数を差し引いたものであり、最近の大阪市の特徴としては、廃業が新規届出を上回る傾向が顕著となっています。

民泊新規廃業件数

民泊 純増減

これまでの廃業届出総数を総届出総数にて除したものを仮に「廃業率」として数値化すると次のようになります。

民泊 廃業率

安易に参入した民泊事業者が廃業していくのは全国的な流れだと考えますが、それにしても大阪市の「廃業率」は直近データで28.2%と突出して高いものとなっています。

このデータは2020年3月11日時点のデータであり、しかも、わざわざ廃業届出を真面目に出してきた施設数であり、潜在的には事実上廃業となっている施設は多くあるものと推察されます。

これに特区民泊が加わります

さて、大阪の宿泊マーケットをここまで見てくると、ヤバそうだなということが感覚で分かりますが、更に大阪のヤバさはこれだけではありません。

ここに特区民泊が加わってくるのです。

大阪市作成「特区民泊の認定件数(全国の状況)」によると、2019年8月末時点において、全国の特区民泊の認定件数の9割超が大阪市に集中している状況となっています。(同時点における大阪市の特区民泊認定件数は、2,856施設9,043居室となっているとの由)

以上は「供給面」から捉えた大阪ホテルマーケットの状況です。

この状況に需要減という要因が加われば、壊滅的といっていいような状況になるのは明らかです。

今後の宿泊関連データに注視していきたいと思います。


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