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クレジットカード情報の利活用事例 ~個人情報保護委員会「パーソナルデータ利活用動向調査」から

個人情報保護委員会が「パーソナルデータの適正な利活用の在り方に関する動向調査」(平成31年3月版)の報告書、事例集、事例集サマリを公表しました。

(リンク先のページの一番下、「お役立ち情報」にまとまっています。)


2019年2月時点で、匿名加工情報の作成、提供を行っていると公表している事業者は、371社とのこと。


2017年施行の法改正で匿名加工情報の制度が導入された当初は、

「法改正前から行われていた取組みが、法改正によって匿名加工情報の提供にあたってしまい、公表せざるを得なくなっただけの事例が多いのではないか」

(=匿名加工情報を積極的に使っていく企業は少ないのではないか)

という風評もありましたが、今回の報告では、

この 1 年間での伸び率 27.5%という数値は想定以上のものになった。

(報告書8ページ)

ということで、本物の利活用事例が徐々に増えつつあるようです。

(原文のゴシック+下線から、委員会(野村総研?)の興奮が伝わってきます…)


今回面白いなと思ったのは、クレジットカード情報の利活用事例での公表の取組みです。


匿名加工情報の利活用にあたり、事業者が二の足を踏む理由とされていたのが、匿名加工情報の加工を行っていることの公表義務が課されることでした。

個人情報保護法36条(匿名加工情報の作成等)

3 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成したときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目を公表しなければならない。
4 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成して当該匿名加工情報を第三者に提供するときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、第三者に提供される匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目及びその提供の方法について公表するとともに、当該第三者に対して、当該提供に係る情報が匿名加工情報である旨を明示しなければならない。

特に、個人のお客さまを多く抱える業態である銀行やクレジットカード会社だと、お客さまがネガティブにとらえるかもしれないと心配して、公表は絶対に無理だと決めつけてしまうケースもあるような印象です。

この点、今回の取組みが素晴らしいのは、個人情報保護法で求められる最低限度の公表にとどめず、ウェブサイトで丁寧な説明を試みている点。

カードユーザに匿名加工情報の理解が十分にされていない現状にかんがみ、「匿名加工情報とは何か」をわかりやすく説明する
多くのユーザを抱えるカード会社としての社会的意義を果たすために、このような施策を法令に上乗せする形で実施している

(事例集4~5ページ)

とのことで、「お客さまを不安にさせない!」という会社としての熱意がにじみ出ているのが良いですね。

クレジットカード情報の利活用の場合、加盟店の営業秘密にもなりえる点が悩ましいのですが、この点は、加盟店情報を生のまま提供するのではなく、「店舗業種」レベルに抽象化することでクリアしたとのこと。

(事例集4ページ)


加工方法なども含め、先行事例として参考になります。


※2019/10/31編集(画像の追加、セミナーの告知文の削除)






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