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ゴールデンカムイと私

出会いは、まだ私がこの街に越してきたばかりのころ。古びているが活気のある商店街の小さな食堂で、私はゴールデンカムイと巡り合った。

その食堂は70歳前後の老夫婦がやっている小さなお店だった。古くはあるが清潔で、一通りの食堂のメニューがそろっていて、どれも美味しい。老若男女からしっかりと愛されている、長年の積み重ねを感じる暖かなお店だ。そこにふらっと入り、生姜焼き定食を頼んで、待っている間に「課長島耕作」を読む。それが私のその店での過ごし方だった。ここに通い続け、いつかは島耕作シリーズを読破するのだろうと少し先の未来を思い描きながら。

そうなる筈だった。

その店へ行くのが4回目くらいの時だろうか。いつもの通り生姜焼き定食を頼み本棚に行くと、すべての島耕作が消えていた。課長も、部長も、社長も、どのレベルの島耕作もそこには居なかった。

えーっ、まじか

ショックで声が出ていたと思う。私はまだ課長島耕作の4巻までしか読んでいなかった。これから昇進する彼の姿を追いかける夢は潰えてしまったのだ。

私は仕方なく「キングダム」を手に取り席に戻った。職場の上司が、めちゃくちゃオススメしていて、叔母もハマっていた漫画だったなあと朧気に思い出しながら。どんな話かは知らない。しかし、噂に違わずそれはとても面白かった。そういえばと、先日夜更しした時にアニメが放送されていた事も思い出した。アニメ化もしているのか、だったら間違いない作品だろうと、私はどんどんのめり込んでいった。正直、島耕作以上のものに出会えたと、かなりワクワクしたことを覚えている。半沢直樹的なものを期待して島耕作を読んでいたが、彼は女を抱きながら仕事をする不思議な人で、事業戦略・人事戦略的な話はあまり見かけなかったからだ。

その後暫くして、私が手に取ったそれはキングダムではなく「ゴールデンカムイ」であることに気付く。本屋に平積みしてあるキングダムを見て「これがキングダムか、あれじゃなかった」と一人ハッとした。タイトルの字面雰囲気で勘違いしていたのだ。ほら、カタカナで、濁音があり、なんだかゴツゴツした印象じゃない、どちらとも。

これがゴールデンカムイと私との出会いである。感謝すべきは、商店街の食堂のおばあちゃんだ。島耕作を総入れ替えし、ゴールデンカムイを置いてくれてありがとう。そして、可能であれば、10巻以降も置いてください。それまで、花の慶次を読んで、待っています。

※ゴールデンカムイのことは誰よりも愛しています。そのお話はまた今度。

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ながいけまつこ


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