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「晴れの日も雨の日も」#17 かっぺいものがたり

むかしむかしあるところに「かっぺい」という年よりがおったげな。
髪は抜け落ち、物忘れは多くなり、腰には年中鈍痛を抱えていたが、
それでもかっぺいはしぶとく生きていた。
かっぺいは 「おらの名前は、頭に“いな”をつけると“いなかっぺ”だ。
“いな”は“否”だから、おらは”いなかっぺ”の反対、つまりシティーボーイだっぺ」と言って笑うのだが、とてもそうは見えない。

そういえば、かっぺいの若いころの知り合いにcenter villageという名の男前シティボーイがいる(以下めんどくさいのでCVと略す。「シティボーイ」も今や死後か???)。
なんでも会社の同期入社だったとか。
新入社員だったころのある休日、かっぺいは寮の最寄り駅のホームにいた。かっぺいは同じく同期入社のchief-rice field(以下crf)と一緒だった。このcrfはその国で一番の難関大学を卒業しているが、学生時代はラグビー部のキャプテン。ルックスとかシティーボーイ度も含めてかっぺいはcrfのことを自分と同類と思っている様子だ(crf、違うかったらスマン)。
ふと目を上げると目の前の反対側のホームにCVがいる。かっぺいは人目も気にせず「おーい、どこ行くんや」と線路越しにCVに声をかけた。
「今から梅田で合コンや」とCVが答える。
そこに梅田行の電車がやってきた。CVはそのまま電車に乗り、電車が発車すると向こうのホームは無人になった。さわやかな風が流れた。
その時のCVのカッコ良かったこと。ホームに取り残されたかっぺいとcrfは半ば茫然としつつ、次のような会話を交わした。

crf   :CVってなんか三浦友和みたいやな
かっぺい:ほんま。オレもあんなふうにかっこよく生まれたかったわ
crf   :そうやなー。もしあんな風に生まれてきてたら、もっともててた 
      やろな
かっぺい:そうかもしれんな。でも、その代わり、全然別の人生になって
      いて、ここまで来てなかったんとちゃうか
crf   :そりゃ、おまえやろ!
二人  :わっはっは!

ふたりとも(少なくともかっぺいは)ルックスにはコンプレックスがあり、それをばねとして勉強にスポーツに頑張ってきた。会社に入ってからも努力を重ねてきたらしい。

かっぺいは「努力は人を裏切らない」という言葉が好きだ。

努力をしても結果につながらないことが往々にしてある。
それはかっぺいももちろん知っている。
たとえば、かっぺいは大学では体育会水泳部にいた。
試合で活躍して、我がチームの勝利に貢献し、応援してくれているみんなの前でガッツポーズをすることを夢見ていた。人一倍練習した。夏も冬も。練習量は誰にも負けない自信があった。
が、かっぺいのタイムは伸びず、いつまでたっても「雑魚メン」のままだった。ずいぶん悔しい思いもした。
でも、結果的にかっぺいのそんな姿勢・努力を部員たちはちゃんと見てくれていた。大事な試合でレギュラーとして活躍することはなくとも、かっぺいはクラブの中で自分の場所を作ることができたクラブとその仲間を心から愛することで、人間として成長することができた。水泳のタイムや水球での華々しいゴールという結果にはつながらなくても、あの練習・努力は無駄ではなかったとかっぺいは思っている。

ところで、かっぺいは、どうして「努力は人を裏切らない」と確信するようになったのだろう?ちょっとかっぺいじいさんに聞いてみよう。

「むにゃむにゃ。
せっかく気持ちよく酔っぱらっているのに、誰じゃ、小難しい話でわしを起こすのは。
“努力は人を裏切らない”の原体験?
そんな昔のことはとうに忘れたわい。そもそもわしはな、小学校の低学年の頃に、おふくろが担任の先生から  “かっぺいくんはがんばらない子ですね” と言われて恥をかいたようなボンクラだったのじゃ。
それがなんで頑張るようになったかって?そりゃあ、まずひとつは邪心じゃ。いわゆる恋心じゃな。フォッフォッ。いや、照れるのー。
中一の時にクラス1の女の子を好きになっての。そのころこっちは全然ハナクソで、話にならん。だいたい、その頃の中学っちゅうのは、運動ができないやつはあかんやつじゃ。わしは走るのがひと際遅かった。ま、その「アカンヤツ」っちゅうことや。
で、こりゃいかんと一念発起して、毎朝早起きしてその子の家の前まで走ることにした。当時は今のような個人情報が何とかなんてことはもちろんない。連絡網がちゃんとあってクラス全員の住所はわかっていたからの。ま、そこには走るのが速くなりたいという思いはもちろんあったが、何かの拍子にその子の顔が見れんかなーというのもあった。
今ならストーカーじゃな。ヤバイヤバイ。
わしはそれを3年間続けた。そうすると、3年の時には全校で何番というところまで長距離走が速くなっていた。校内選抜の駅伝チームに選ばれ、県大会に出場した。校内選考会でこのメンバーに選ばれた時はめちゃめちゃ興奮したのう。まさに熱き血踊るっちゅう感じで、思わず体がブルブル震えたもんじゃ。
うーん、わしの人生の中で、スポーツで少し目立った成績は後にも先にもこれっきりかもしれんな。
ま、このほかにも勉強を頑張るきっかけもあって、わしもやればできる、という自信がついた。原体験を簡単に言うとこういうことじゃ。

ここで大事なことは、
努力は裏切らないというのは、「継続は力なり」という言葉とセットじゃ、ということじゃ。
ちょこちょこっとハウツーものの本を読んだぐらいじゃ人間は変わらん。必死のパッチと言うじゃろが? 何?知らん? これだから最近の若いもんは。。。ま、要するに必死にしがみつくことで活路が開ける、という事も あるのじゃ。
また、わしの場合は邪心が原動力になったのだが、やっぱり人の心に火をつけるのは人しかない、誰かと関わることが成長の原動力ということもいえそうじゃなあ。

それともうひとつ、人間いうもんは氷山のようなもんじゃ、と思うのう。努力し続けたことが求めていた結果につながらなくても、それは自分という氷山の水面下の部分を必ず大きくしてくれる。
昔理科の授業でエネルギー不滅の法則というのを学んだじゃろう。
あれじゃよあれ。やったことは目には見えなくてもなくなりはせんのじゃ。人間と人間が相対した時、この人なんかスゲエなあと思うことがあろうが。それは
見た目すなわち氷山の上だけではなく、水面下の見えない部分の大きさを感じ取っている
のじゃ。じゃからおまえも手抜きせんで努力を続けなさい。
ありゃ。寝てんのか。すまんなあ。退屈な話で。むにゃむにゃ。」

今はかっぺいの若かりし頃とはずいぶん時代も変わった。かっぺいが正しいと信じてやってきたことを若い人たちに押し付けるのは弊害が多いだろう。石の上にも三年、なんて言葉は今の若者たちには通じないかもしれない。
しかし、一芸に秀でる、とか、ホンモノになる、とかという道は今も昔も変わらないような気がする。NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組に一貫して流れるコンセプトは古今東西永遠に王道のような気がする。いやもちろん、かっぺいはそこまでの「プロフェッショナル」ではないのだが。

以上かっぺいじいさんのお話でした。
えっ、かっぺいじいさんって誰のことって?そのヒントは下記のnoteにあるかもしれませんよ。


今日も最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました♬
                      長井克之
                  nagairb21@jcom.zaq.ne.jp

<予告>
#18   2021年還暦の年を振り返って-reborn 再生再出発-
#19   2022年 今年にかける想い ゆったりユルク揺ぎ無く
#20   五感+1をフル動員して生きる(今年のテーマその2)
#21 成長について
#22 聞くということ

(続く)


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