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「晴れの日も雨の日も」#47 失敗

失って敗ける、と書いて失敗と読む。イヤな言い方だ。こんな文字を使えば、誰だって失敗したくなくなる。失敗したくないと思うと、当たり前だが安全策をとる。チャレンジをしなくなる。それでは人生ツマランじゃありませんか。

失敗は成功の肥やしだ。そのためには失敗から気づきや学びを得ることが望ましい。
が、実際には、同じ失敗を何度も繰り返す人がしばしばいる。あるいは、そっちに行ったら失敗するのはミエミエなのに、ふらふらっと行ってしまい失敗した、という事例もたくさん見てきた。

私は後進に「学習せよ。同じ失敗を繰り返すのはバカ。一度失敗したら二度はやらないのは普通。賢いやつは人の失敗から学習し、自らは失敗しない」と書き残してきた。「バカ」だった私が、「こんなふうになるな」という自戒を込めてこう記した。
が、「賢いやつ」になろうとして、ひたすら失敗しないようにするのもいかがなものかと最近では思うようになった。前向きなチャレンジの結果の「失敗」はどんどんしたらエエやないか、とも思う。

失敗は最も上質な雑談ネタだ。実は他人の成功した話なんか大しておもしろくない。人との距離を縮め、親密になる近道は、裃を脱ぐことだ。それには失敗話を明るくスコーンと笑って話すことがとっても効果的だ。変にコソコソ隠すのはマイナスでしかない。

私の人生は、自慢じゃないが、失敗だらけである。
まず酒を飲んで記憶やモノを失くす、というのは枚挙に暇がない。
また、いい気になって調子こいている時もよく失敗する。
酒を飲んで調子こいてしまうとダブルで危険が高まる。めっちゃアブナイ。自分の思いにとらわれすぎて、周りが見えなくなっている時も危険の海を泳いでいる。良かれと思ったことが実は滑稽もしくは醜悪な独り相撲、なんてのは恥ずかしながら得意技だ。いいかげん卒業したいが、なかなか足抜けできない。


さて、私の失敗話その1。
新入社員の頃、工場実習があった。夜勤もあり、その時は夕方が出勤時間になる。その夜勤の時に、駅から会社まで行くバスで拙note#17に登場した同期入社のCRFと一緒になった。そのバスには塾にでも行くのか、小学生たちがいっぱい乗っていた。
私は進路選択時に教員になるかさんざん迷った人間であり、大の子供好きだ。
で、目の前の座席に座っている可愛らしい男の子になんかちょっかいをかけたくなった。つい我慢しきれずに「ボク、ええ時計してるなあ」と声をかけてしまった。CRFはいわば私と同類のノリを持った男だ。私に負けじとさらにかぶせて声をかけた。

我々には何の悪気も無い。ただ可愛らしい小学生に「可愛い」と思っている気持ちを伝えたかっただけなのだ。
この数日後。実習生全員が人事部から呼び出し・集合をかけられた。
いわく「君らの中にバスでのマナーを心得ていないものがいる」
私は「誰や。はよ謝れ。お年寄りに席を譲らんとか、そういうことやろ」と思っていた。
人事続けていわく「会社に手紙が来た。おたくの社員がバスの中で小学生から時計をカツアゲしようとしていたと書いてある。」
私とCRFは顔を見合わせた。

「オレらや。」

あとで人事に謝りにいった。平謝りである。

この話はあっという間に同期の間に広がった。
そのおかげでCRFと私は同期一の人気者になった。かどうかは知らない。
この話のおかげでCRFと私は人もうらやむ立身出世を遂げた。はずがない。が、「小学生カツアゲ未遂事件」もしくは「実習中に人事から呼び出し事件」として私の数多い武勇伝の一つに加えられることとなったのは間違いない。

今日も最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました♬ 長井 克之
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<予告>
#48   ルーツ
#49   「ワタシ」と組織のあり方
#50   友人の恋バナ。未満の話。
#51   人と比べない
#52   誠意

(続く)

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