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「晴れの日も雨の日も」#58 懺悔-30年間封印されてきた真実-

先日、さる友人と一献傾けた。
親会社での4年後輩だが、早期に退職して実家の実業を継いでいる。ナイスガイで、バランス感覚も優れている。将来のホープと期待されていた。
当時、私と彼は花形の営業部門におり、プライドをもって仕事をしていた。彼とは、年近の先輩後輩として、仕事の指導にとどまらず、よく酒を飲みに行ったりもしていた。仲良しだと思っていた。

そんなある日突然彼は退職話を切り出した。
当時は今と違い、一度就職したら定年まで勤めあげることが普通の時代だ。実家を継ぐというのは、いわゆるトラバーユ(死語!)の転職に比べると、理解しやすい選択肢と言える。が、それまでそんな気振りもなく、私にとっては驚天動地の話だった。
私も我々の上司もずいぶん引き留めたが、彼の決意は固く、彼は自分の道を進んでいった。パートナーを失った私には大変こたえたが、その後もお互い遺恨は無く、年賀状のやりとりが続き、また、時折何かの機会に酒席を共にしたりしてきた。

さて、ここからが本題である。先日の宴席では、いつもどおりお互いの近況など、和やかに種々の会話をしていたのだが、何かの拍子に、彼の退職当時のことに話題が及んだ。
オヤジさんから是非にと頼まれてしょうがなく退社することにしたというのが当時からの公式見解だ。それに間違いはないという。

が、「いや実は、これまで言わなかったが」と彼が続けるには、「当時、長井さんのマネはできない、と自分の限界を見てしまい、このままここに居続けることに魅力を感じなくなった」というのだ。

この話は私に脳天唐竹割りの衝撃を与えた。

その頃私は30歳過ぎ。自分で言うのも憚られるが、エース級の働きをしていたと思う。主要顧客のほとんどとしっかりした関係を築き、職場の女子事務員を一手に束ねて面倒を見、製造・技術部門からの信頼も掴んでいた。
が、ややトリッキーな個人技的対応も得意としていた。ヘラヘラと笑いながら相手の懐に飛び込んだり、ごろにゃんと甘えてみたり、そうして相手のガードを下げさせといて正論の理屈を滔々と述べてみたり、というようなことを常套的にやっていた。

ビジネス上はそれが奏功した面もあるが、正直言うと、「オレみたいになれよ」なんてイヤラシイ気持ちが心の底にあり、多分に「ドヤ顔」をしていたと思う。
件の彼は、たぶんそのあたりに嫌気がさしたり、違和感を感じたりしたのだろう。そんなマネは逆立ちしてもムリ(正しくはイヤ)、と思ったのだ。

もし彼の身近な先輩が私のような「いちびり(お調子者、目立ちたがり、一人でいい気になってるヤツ、みたいな感じの大阪弁)」ではなく、もっと常識的な普通の人だったら、彼は辞めなかったのではないか。
結局、私は独りよがりのスタンドプレーに走って、やおら前途有望な青年を一人失い、はた迷惑なものをまき散らかしていた訳だ。

彼は今、美しく優しい妻と娘たちと幸せに暮らしている。彼の選択決断は間違っていなかったのだろう。しかし、結果的に彼を退社の方向に追い込んだのは私自身だったのだ。「追い込む」はやや言い過ぎかもしれないが、トリガーの一端となったのは間違いない。

・・・30年の月日を経て表れた真実・・・
。。。愕然。。。

彼には今更ながら素直に詫びた。彼は、いや私が詫びる話ではない、と言ってくれた。そう言ってくれてありがとう。
また、この記事が彼にあらためての心理的負担をかけかねないことを私はいま恐れている。それは全く本意ではない。趣旨はあくまで私のあり方についての話だ。

そういうイヤなところが確かに私にはある。これだけはっきり認識させられたのは初めてだが、私のあり方には問題がある。イヤだなあ。。。
今はこの悪癖は多少なりとも修正されているのだろうか。
これはコーチとして目指しているのとは真反対だ。よく身を慎んでいきたい。

(注:冒頭画像は本文とは関係ありません。あしからず。。。)

今日も最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました♬ 長井 克之
仕事のご連絡・その他ご相談等はこちらに→nagairb21@jcom.zaq.ne.jp

<予告>
#59 お天道様は見ている
#60 ツナガルって?
#61 青雲の志と「一隅を照らす」
#62 妄想
#63 一粒万倍日-新たな門出 
(続く)

<編集後記>
先日息子の案内で京都・大阪・兵庫の県境交点・るり渓深山に行ってきた。拙宅家族は8月に立山登山を計画しており、その予備練習会だ。メンバーは新婚息子夫婦、第3子次女、第4子三女の計5人。山上で息子が山メシをふるまってくれたり、エンターティナー三女の盛り上げハッスルプレーもあったりして、大変楽しい一日だった。大快晴・往復約2.5時間。下山後は温泉付きのフルコース。おもろいなあ。また行こうぜ。今度は京都トレイルを案内してほしいなあ。

大阪方面をのぞむ
ごきげんさんですな


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