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「晴れの日も雨の日も」 #87 諸葛孔明とはかりごと

三国志(吉川英治文庫全8巻)を読み進めている。
次から次へと英雄豪傑が出てくる。
戦いあり、君臣の仁義あり、裏切りあり。
立身出世したのに、結果、道を間違うものもあり。
栄枯盛衰が次から次へ描かれていて興深く読んでいる。

学生の頃に一度読んでいるのだが、きれいさっぱり忘れている。印象すらもほとんどない。あの頃にはわからなかった読み方をしているかも、と思う時もある。

やっと5巻まで進んだ。
諸葛孔明登場。
古今並ぶものなき軍師として有名な孔明先生。智謀の人の代名詞的存在である。さて、どんな奥深い知恵をみせてくれるのかと興味深々。

いよいよ有名な赤壁の戦いに入った。劉備玄徳ならびに孔明が呉の孫権と組んで、北の強大な魏の曹操を破る。「小が大を食う」戦いだ。
あっと驚くウルトラCがあるのかと思いきや、謀(はかりごと)と裏切りがこれでもかと繰り返され、だましあいに勝った方が勝利する、みたいな話だった。

敵中作敵という言葉がでてくる。
お互い、相手の中にスパイを送り込む。相手の情報を取るだけでなく相手の中を攪乱しようとする。ウソの情報を流したり、相手の信頼関係の離反を図ったり。武器による戦闘以前の戦いが展開される。
兵法には正あれば奇あり。相手が正でくれば奇で裏をかく。相手がそれを恐れて自ら奇に走れば、それは墓穴を掘ったようなもの。堂々と正で蹂躙する。
こうすれば相手はどう思うだろう、ということを相手の知略レベルも踏まえて、正確に読みつくし、そこに手を打つ。こういう孔明の軍師ぶりが克明に描かれる。

国と国の戦いというのはそういうものなのだと想像する。
現代でも、どの国も裏の外交官を相手国に派遣しており、表の外交以上に情報合戦が重要な役割を占めているという。ロシアウクライナ問題や北朝鮮、中国、台湾の動きも同質のものがあるのだろう。

が、凡々と生きている私にとっては、知略とはだましあいだ、と実もふたもなくはっきり書かれると、少々げんなりしたり幻滅したりしてしまった。

私はめちゃめちゃ性善説にたっている。
人に胸襟を開いてもらうためにはまず自分からパンツを脱ぐ、をモットーとしている。もじもじせずに一番にスコーンとパンツを脱ぐ。ずっとそうやって人との信頼関係を築いてきた。
さいわい、これまでの61年間、ほとんどいい人に囲まれて生きてきた。向こう傷はいろいろあるが、とんでもない騙しや裏切りとは概ねほぼ無縁に近い。

逆に言うと、こんな輩は、もし相手が最初から騙す気で接してこられたら、上手に嘘を塗り固めて芝居を作られたら、ゴキブリホイホイの如くイチコロだ。
聞けば、国家レベルの高級官僚や優秀な技術者にはハニートラップがしかけられるという。大した才能のない私は幸いにして無縁だが、美人絡みでこんな罠を仕掛けられたら間違いなくひとたまりもない。

世の中は厳しいものだ。食うか食われるかだ。もっと孔明先生の知略や自らを防御する術を勉強しないといけないのかとも思う。
が、なんだかなー、と正直興ざめしてしまうのだ。
もちろん、孔明先生は、人情の機微に明るく、情勢を読み尽くして次の展開を見通す明敏な目をお持ちで、だましあいばかりをやっている訳ではない。そういう点は大いに見習いたい。
しかし、人生は戦いだ、相手をあざむくことも時には必要なのだ、と衒いもなく言われると、うーん、と唸ってしまう。

武田鉄矢は「贈る言葉」で「信じられぬと嘆くよりも 人を信じて傷つくほうがいい」と歌う。私はやはりこの路線で残りの人生もいく方が性に合っていそうだ。

<編集後記>
一昨日太極拳の練習の帰り、久しぶりに虹を見た。写真の出来は良くないが、吉兆であれかし。

9月4日16時半頃 宝塚安倉にて

今日も最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました♬ 長井 克之
仕事のご連絡・その他ご相談等はこちらに→nagairb21@jcom.zaq.ne.jp

<予告>
#88 人生が二度あれば
#89 眠れない夜
#90 37年前の9月15日
#91 物欲
#92 柔らかいこころ

(続く)

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