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【ながおし!⑮】好きな服と生きてゆく 北川 幸歩さん

長浜で推したい!長浜でこの活動を推している!そんな人々を紹介する「ながおし!」。
第15回目は、長浜で古着屋を営む北川 幸歩さんを紹介します。

黒壁に佇む古着屋さん

若者の中で、古着ブームが続いています。
少し足を伸ばした京都や名古屋などには、古着屋さんが軒を連ねるエリアも。
そしてこの長浜にも、いくつか古着屋さんがあります。
その中の一つ、個人で古着屋を経営する北川さんに、今回は取材していきます。
長浜では珍しい、主に20代の女性向けの古着屋です。

古着屋『RiLOU』(リル)

建物の外観は、歴史を感じる古めかしさ。
お客さまを、北川さんが選んだ服を纏ったトルソーが出迎えてくれます。
中はコンパクトですが、北川さんが仕入れた洋服がずらりと並びます。

お店の奥には試着スペースも

私もお気に入りのお店で、友人とともに2年ほど前から通っています。
客として北川さんとお話しているときに、
何気なく「いつからお店を始められたんですか?」と聞いたところ、
「卒業してからすぐオープンしました」との答えに、とても驚いたのを覚えています。
若いときにやりたいことへと足を進めたその体験談は、必ず誰かに影響を与えるのではないか…と思い、今回『ながおし』で紹介させていただくことになりました。

やりたいことを大事にする

北川さんは京都の大学で家政学部へ進み、そこで服について勉強したとのこと。
自分で服をつくるだけでなく、座学や繊維の実験など幅広く学んだそうです。
「服を勉強したいというきっかけはあったんですか?」と訊いてみると、
「服はもともと好きだったんですが、実は高校3年生の12月まで、違うことを勉強するために進学しようとしていました」との答え。
「でも、『好きなことじゃないと勉強できない』とだんだん考えるようになって。そこで好きなのが服だったので、12月からは志望する学部を変えて勉強しました」と話します。

好きなことに向き合って、自分のやりたいことを見つける。
やりたいことを見つけるのが難しいと感じる人も多いなか、改めて好きなことに向き合うことが一番大事なのかもしれません。

いつも笑顔で答えてくれる北川さん

お店のオープンは2019年。
卒業後すぐに開業ということで、思い切りの良さにそのお話を聞いたときは驚きました。
オープンすると決めたとき、「『社会経験積んでからにしたほうがいいよ』とよく言われました」と話す北川さん。
それでも、自分が入りたい会社を見つけられなかったことや、自分のことを面接や試験だけで量られるのが苦痛だった、と話します。
「やりたいことがあったら優先することは悪いことじゃない。自分で決めたことならがんばれます」と経験から話します。

「なぜ長浜で古着屋を始めようと思われたんですか?」と訊くと、
「長浜では服を買うところが少ない上にほとんど量販店。自分と近い世代の人たちに買い物を楽しんでもらえたり、量販店にはないお洋服と出会えるお店があれば足を運んでくださる方がいるかもしれないと考えました。」
とのこと。私も友人も、たくさん足を運んでおります。
センスの良い古着屋が、この風情ある街並みで営まれているというのが、なんとも素敵です。

オープン作業をする北川さん

「お金とかは、補助金や融資などやはり利用されたんでしょうか」と訊いてみると、
「臆病者で、借金をするとなると怖いので、利用していません」と笑う北川さん。
「バイトでもそのために貯めたということではありませんが、子どもの頃からのお年玉もあり、オープンできました」と予想外の答え。
子どもの頃からのお年玉がこんなところで効いてくる例は初めて見ました。
また、「商工会議所が主催している『ながはま・こほく創業塾』を受けました」とのお話。
市も協力している事業にご参加いただき、ありがたいことだなぁと感じます。

大変だったことなど教えてくださいと訊いてみると、
「オープンしてしばらくは全てが新鮮で楽しかったです。
でも、冬になると観光客は減りますし、2年目以降にはコロナが流行ってしまい、お客さんが少なくなりましたね。
焦ったり落ち込んだりすることもありましたが、ひとまず目に前にあることをやるしかないと思い、オンラインショップやSNSの更新に力を入れるようになりました。」
と、当時を振り返ります。
「好きな仕事だからといって楽しい事だけではなく、大変な事ももちろんありますよね」と笑って話してくれます。
それでも、好きなこと・やりたいことを「やめる」という選択肢はなかったんだと感じました。
あきらめずに悩んで考えた期間が、工夫や成長の実を結ばせたのでしょう。

こだわりのお店

「お店のコンセプトは、なんでしょうか?」
「クラシカルなお洋服をよく仕入れています。80年代に人気だった昔の雑誌があって、その雰囲気がすごく好きで、今でも参考にしています」
取材した時期は1月の終わりに差し掛かっていましたが、店内を見渡すと春服も並び始めていました。
服を見てみると、現在の流行りの服とは少しデザインが違い、縫製もしっかりしています。クラシカルなものや甘めなデザインを中心に、主に60~90年代頃の日本製の古着を取り扱っているとのこと。
ご自身が仕入れられたお洋服の魅力を、北川さんに聞いてみました。

ベルベットのワンピース

「これで言うと、ベロアに近い『ベルベット』という生地なんですが、この生地でプリントされているのはあまり見かけないなと思って仕入れました。また、生地の切り替え方や裾の処理がしっかりしているのは、オーダーメイドから作ったからだと思われます」

春らしいカーディガン

「このお洋服も、手縫いの刺繍なんですよね。よく見たら、手間と時間をかけて、素敵な洋服を作っています。何より古着の魅力は一点モノだと思いますね。何十年も前にこんなに素敵で質の良い洋服があったんだ!とときめきます」

直感で仕入れてから、改めて見て「きれいな縫製だな」と気づくこともあると言う北川さん。
実際に服をつくったこともあるから、洋服へ真摯なまなざしを向け、その服の魅力を深く知ることができるのでしょう。

また、お店の内装も自分でできる限りDIYをしたとのこと。
木製の壁も、明るい色でしたが自分でステンオイルを塗り、落ち着いた色合いに。
カウンターもレイアウトを変更するなど、理想のお店を作り上げるために努力を惜しまない面も垣間見えました。

これからの未来

やっててよかったと思うことは?と北川さんに聞いてみると、
「うちで買った服を着て、また来店いただいたことですね」と笑顔を見せます。
好きなことに真剣に向き合う北川さんの熱意が、お客さんに届いたのでしょう。

これからの展望は?と訊くと、
「昨年は初めてイベントに出店しました。
参加したのは市外のイベントだったんですが、普段オンラインを利用してくださっているお客様や、以前観光で長浜を訪れ、当店でお買い物をしてくださったお客様にも来ていただき、直接お話できました。
今後は遠方のお客さんにも実際に商品を手に取っていただける機会を増せるように、イベントやポップアップショップなどもできればと考えています。」
と話してくれました。
長浜に拠点を置きながら、自分の好きなことを少しずつ広げていく姿勢に、これからも応援していきたい!と感じ入りました。

自分の好きなこと・やりたいことを仕事にした北川さん。
今もこれからも好きなことに向き合って、日常に幸せを加えてくれる、そんなお洋服との出会いをこのまちに用意してくれます。

【北川さんのお店『RiLOU』のInstagram】

(さかい)