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教育学部鈴木ゼミの夢サンド誕生秘話 vol.03 〜鈴木教授に聞く、社会による教育の意義〜

「多くの学生が『何かを企画したい』『運営したい』という願望を持っています。そして、教育学部の学生はその素質がある人ばかりです。しかし、企画運営の機会を見つけることは難しい。スタート地点までは教員のフォローが必要です。私はゼミ生に、企画側に立つことができる環境や社会の中で自分の未熟さや可能性を見つける環境、つまり”社会による教育”が受けられる機会を準備しています」。

そう語るのは長崎大学教育学部の鈴木慶子教授。萱瀬小学校の生徒や、地元のアグリツーリズム施設「おおむら夢ファームシュシュ」とコラボレートして夢サンドを作った3人の担当教員です。鈴木教授が話す”社会による教育”とはどんなものなのでしょうか。ここでは、鈴木教授の指導法についてご紹介します。

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”社会による教育”は刻々と変化する状況の中で、適切な判断をする力や対応力を育てる

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教育学部では児童や教員との触れ合いの中で、教育法やコミュニケート術を習得すしますが、社会との関わりを学ぶ機会は少ないのが現状です。様々な業種、役割の方と交流して、指導を受けながら企画をたて、時に交渉し、物事を実現する機会が学生には必要だと鈴木教授は話します。それが”社会による教育”なのです。

「民間企業は時代の流れに敏感で、意思決定が早いです。また、危機管理に対する鋭いアンテナをお持ちであり、加えてたくさんのシーズ(種)を蓄え持っていて、想定外の状況に陥った時には、別のシーズで補う対応力があります。そういった現場ならではの見定める感覚や対応力は、大学内で教えられることではありません。教育実習とも異なります。

当然、学生ですからシーズを持つどころか、最初は何もできないでしょう。ダメ出しされることがしばしばです。そのダメ出しされる体験がとても貴重だと思います。教員からの指導のままに動いた体験はすぐに忘れますが、自分で試行錯誤して、ねり出した体験は失敗したとしも彼らの未来を支える貴重な宝になります。それこそ社会が学生に与えてくれる力強い教育になるのです」。

マニュアルがない現場で、即座の決断を求められる

”社会による教育”を受けたゼミ生3人の成長ぶりを見てみましょう。

おおむら夢ファームシュシュでは山口社長やスタッフの皆さんとのやりとりの中で、時間の意識、コストへの意識、そして組織間での対面やメールなど、基本的な社会マナーなどを経験して刺激になったようでした。また、学生たちは、度々民間企業らしい”即座の決断が必要な場面”を経験しています。

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「”社会による教育”で期待したいのはマニュアルがない常に本番の現場。シナリオは持ちつつ、突発的な即座の決断を求められる場面が多々あることです。学生はシュシュのスタッフさんの助言の元、どのアイディアを取り上げるのか、どんな商材を作るのかなどの決断をして、実行しています。そんな決断を求められる場数を踏み、実行して認められること、成功したり、失敗したりすることで、人間として大きくなると感じます」。

3人の成長は山口社長も評価していて、夢サンド実現以降も、鈴木ゼミ生×萱瀬小学校×おおむら夢ファームシュシュの共同企画第二弾(野菜を使った染色体験教室)を計画中だそうです。

ステージが大村市である理由。大学3年で学外活動する理由。

鈴木教授が学生の活動の舞台を大村市に選んだのは実は今回で3度目。2018年と2019年には大村市青年会議所と共同して、当時の3年生のゼミ生が大村市夏越祭で子ども向けのブースを出しました。2020年こそ、新型コロナウィルス感染対策で外部との接点を作ることができませんでしたが、今年(2021年)も大村市内で訪問先、交流先を探しました。ステージを大村市に定めているのは決して偶然ではありません。

「大村市は人口急増している県内でも元気な都市ですが、主要都市の中では唯一大学がない市でもあります。それだけに、都市をあげて大学生を受け入れようとしていて、私が求める”社会による教育”ができる環境なのです」と鈴木教授は説明します。

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活動の時期を3年生前期に集中していることにも意味があります。教育実習や教職免許受験に向かう前に、民間の意識を学び、仲間と協力して企画を進める経験をすることは大きな自信になります。また、4年生後期からは卒業研究で、鈴木セミでは毎年チームで企業と共に研究を進める形をとっているため、この時の結束が研究におけるチームワークにも繋がるのです。

教員である前に、未来を力強く支える人材になってほしい

学生の成長は、交流した民間企業の方々の間でも評価が高く、中には教育学を学んだ人材の必要性に着目してくれる経営者の方もいると鈴木教授は話します。

「ある方が、教育学部生の持つ育成スキルは教育業界だけでなく、企業における社員教育でも必要だと話してくれました。相手に応じてカリキュラムを作ること、マニュアルをわかりやすく作ることを学んでいるので、確かにあらゆる業界の教育部門で需要があるでしょう。

私たちは教育学部ですから、もちろん教員人材を育てています。しかし、それ以前に未来を支える力強い人材を育てなければと私は考えます。教育業界だけに特化した人材ではなく、例え活躍の場が社会の民間企業に変わったとしても柔軟に対応できるしなやかさとタフさを身につけて欲しいのです。学生にも自分たちの価値を認識し、社会貢献できる人になってほしいと思います。

今は昔と違って教育業界でも民間企業でも、職場に若手を教育する余裕はありません。即戦力を求める時代です。だからこそ、学生のうちに、他の組織と連携して一つのものを作り上げていく体験が必要なのです」。

社会による教育の現場に学生を送り出した後、鈴木教授は必要以上の指導はしません。学生は自ら考えて、決断し、実行していくことで、自分自身の存在意義を知り、また可能性を見出していきます。「この経験が次の活躍の舞台に繋がってほしい」。学生を外に送り出す鈴木教授の胸にはそんな思いが秘められているのです。

【バックナンバー】vol.01とvol.02は下記からご覧ください。 ​


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