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世界を新しく発見する

 昨日、ショッピングセンターのフードコートの窓から駐車場を見下ろして、やってくる車や行き来する人々を眺めていたわたしは、あの人たちは自分の姿をわたしに見られているのに気づいていない、みたいなことを書いたんだけど、それは完全に、柴崎友香さんの小説『寝ても覚めても』に影響されているということは自分でわかっている。
『寝ても覚めても』の冒頭で、主人公は展望台みたいなところにいて、地上にいる人々や車の流れや遠くの空や雲、フロアにいる親子などを見ていて、その描写が、けっこう長いこと続いて、ほんとうにけっこう長くて、そういう、描写が冒頭でずっとなんの説明もされないまま続く小説は他にもあるかもしれないけど、わたしは、読んだときびっくりしたし、とても面白かった。
 小説や他の本とかを読んでいて、自分が見えているもの、人、景色、動物などが、小説や本を書いた人からはこう見えているのだ、ということに、気づくことが楽しい。
 好きになる小説は、そうやって、知っている世界を新しく発見させてくれるような一節が必ずあって、保坂和志さんとか、柴崎友香さんとか、山下澄人さんとか、赤瀬川源平さんとか、田中小実昌さんとか、滝口悠生さんとか、小山田浩子さんとか、今思い出せないだけできっと他にもたくさんの好きな小説は、読むと必ず世界が新しく発見される。
 詩もそう、詩はもっと突飛でびっくりする言葉の配列があったりするから、一行一行が発見につぐ発見、丸まっていた世界が公園の芝生にレジャーシートを敷くように楽しくて、そこで天気がいい日にピクニックができたら最高。

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