マガジンのカバー画像

好きな本のはなし(俳句、短歌、ほか)

32
句集、歌集をはじめとした「好きな本」の感想ページです。
運営しているクリエイター

#句集

まどやかな祝福:阪西敦子句集『金魚』

金魚揺れべつの金魚の現れし 華やかに鰭を動かし、水を遊ぶように泳ぐ金魚。 複数あるいは品…

あんこ
13日前
19

明日のある日常:折島光江句集『助手席の犬』

「できるだけ普段着の言葉で、普段着の景色を季語とともに俳句として詠みたい」 自分の心と身…

あんこ
2か月前
22

軽やかに、カラフルに:箱森裕美句集『鳥と刺繍』

雷鳥や刺繍の花のその軽さ 句集タイトルのイメージにもっとも近い作品を挙げるとすれば、上記…

あんこ
4か月前
20

愛とかなしみの背理法:土井探花句集『地球酔』

こんな日は仲間はづれの雉が好き この句の中に自分を見る人、あるいは共感する人は、「ここに…

あんこ
5か月前
27

独自の詩の森の世界へ:しなだしん句集『魚の栖む森』

死角の無い句集である。 どこから読んでも、どの句を読んでも面白い。 溜息が出るほどだ。 全…

あんこ
6か月前
18

月を仰ぐことを忘れない人:杉山久子句集『栞』

句会でも思うけど、俳句作品がまとまって掲載された句集を読むたびに思うことがある。 「どう…

あんこ
7か月前
53

客観的視点が生む言葉の距離と味わい:岡田由季句集『中くらゐの町』

中くらゐの町の大きな秋祭 街と町。同じ「まち」でもこの二つは違うと思う。 大雑把にいうと、街は都会のイメージ、町は都会以外のイメージ。 表題句の町は「中くらゐ」とある。 いろいろな意味で全体的に中位なんだろう、規模や人口も交通も利便性も。 もしかすると、普段は取り立てて個性が無い場所なのかもしれない。 その町が秋、大きな祭を開催する。年に一度のハレの行事。 中位の町がにわかに大きく見えるような、誇らしい瞬間。 そして、その場所で暮らし続ける作者。 町の一員としてこれからもこ

俳句のみが発揮しうる魅力:現代俳句文庫88『金子敦句集』

いつもウキウキ、ルンルン♫で俳句を作れるなんてことは先ずなくて、大体句会や締切など「必要…

あんこ
11か月前
56

感謝の証:渡部有紀子句集『山羊の乳』

あれは、所属する俳句結社「炎環」の記念大会。 当日、お祝いの為に出席してくださった大勢の…

あんこ
11か月前
20

第一句集『揮発』、紹介いただきました

先般、簡易版として限定作成した柏柳明子・第一句集『揮発』。 早速、ご購入のお申込みをいた…

あんこ
1年前
18

【俳句】玉響(たまゆら)の思い:馬場龍吉句集『ナイアガラ』

ポップで明るい表紙。 まるで懐かしいレコード・ジャケットのよう。 そういえば、レコードを買…

あんこ
1年前
23

明日へ弾む言葉たち:三輪初子句集『檸檬のかたち』

表題句 切る前の檸檬のかたち愛しめり 何となく切るのが惜しくなる檸檬の形状と感触。 切った…

あんこ
1年前
39

他者の俳句の中にいる「私」:『オルガン』29号を読んで

俳句誌『オルガン』は既に30号が出ているというのに、いまさら29号の感想とは遅くて申し訳あり…

あんこ
1年前
19

信頼できる言葉と感性:山田牧句集『青き方舟』

残暑の厳しい今年。八月も終わりに差し掛かった頃、届いた一冊の俳句集。 山田牧(ぼく)さんの第二句集。 表題句 地球てふ青き方舟終戦忌 八月十五日という深い意味のある一日を、「地球=青き方舟」というスケールの大きな視点から描いた一句。 構成は四章立て。 一章ごとに二句ずつ、感銘句を引きたい。 赤とんぼ実家の門はいつも開き 傷の掌に載せて全き冬林檎 ゆうらりと昨日に続く冬瓜かな 外套の夜気を吊して今日を閉づ 膝裏を日がな濡らして夏休 八月や花瓶の水のすぐ濁る 背のギ