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好きな本のはなし(俳句、短歌、ほか)

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句集、歌集をはじめとした「好きな本」の感想ページです。
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#句集

十七音の包容力と瑞々しさ:黒岩徳将句集『渦』

煌めきながら切ない、この十七音たちは、この感覚は何なのだろう。 本句集を読み終えての第一…

あんこ
3か月前
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まどやかな祝福:阪西敦子句集『金魚』

金魚揺れべつの金魚の現れし 華やかに鰭を動かし、水を遊ぶように泳ぐ金魚。 複数あるいは品…

あんこ
4か月前
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明日のある日常:折島光江句集『助手席の犬』

「できるだけ普段着の言葉で、普段着の景色を季語とともに俳句として詠みたい」 自分の心と身…

あんこ
6か月前
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軽やかに、カラフルに:箱森裕美句集『鳥と刺繍』

雷鳥や刺繍の花のその軽さ 句集タイトルのイメージにもっとも近い作品を挙げるとすれば、上記…

あんこ
8か月前
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愛とかなしみの背理法:土井探花句集『地球酔』

こんな日は仲間はづれの雉が好き この句の中に自分を見る人、あるいは共感する人は、「ここに…

あんこ
9か月前
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独自の詩の森の世界へ:しなだしん句集『魚の栖む森』

死角の無い句集である。 どこから読んでも、どの句を読んでも面白い。 溜息が出るほどだ。 全…

あんこ
10か月前
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月を仰ぐことを忘れない人:杉山久子句集『栞』

句会でも思うけど、俳句作品がまとまって掲載された句集を読むたびに思うことがある。 「どうして同じ17音なのに、作家によって言葉や型の表情が全然違うのだろう」 「作者が違うのだから当たり前だ」と言われればその通りなのだけれども、それでもたった17音しかなくて、季語を使って、ある程度同じ条件の縛りの中で詠んでいるのに。 実際に完成した作品を目にすると、似ているようで全然違う17音がそこここに屹立しており、句集を読むたびに作家の世界観は読者である私の感覚を揺らしながらいつも遠く

客観的視点が生む言葉の距離と味わい:岡田由季句集『中くらゐの町』

中くらゐの町の大きな秋祭 街と町。同じ「まち」でもこの二つは違うと思う。 大雑把にいうと…

あんこ
1年前
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俳句のみが発揮しうる魅力:現代俳句文庫88『金子敦句集』

いつもウキウキ、ルンルン♫で俳句を作れるなんてことは先ずなくて、大体句会や締切など「必要…

あんこ
1年前
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感謝の証:渡部有紀子句集『山羊の乳』

あれは、所属する俳句結社「炎環」の記念大会。 当日、お祝いの為に出席してくださった大勢の…

あんこ
1年前
21

第一句集『揮発』、紹介いただきました

先般、簡易版として限定作成した柏柳明子・第一句集『揮発』。 早速、ご購入のお申込みをいた…

あんこ
1年前
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【俳句】玉響(たまゆら)の思い:馬場龍吉句集『ナイアガラ』

ポップで明るい表紙。 まるで懐かしいレコード・ジャケットのよう。 そういえば、レコードを買…

あんこ
1年前
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明日へ弾む言葉たち:三輪初子句集『檸檬のかたち』

表題句 切る前の檸檬のかたち愛しめり 何となく切るのが惜しくなる檸檬の形状と感触。 切った…

あんこ
2年前
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他者の俳句の中にいる「私」:『オルガン』29号を読んで

俳句誌『オルガン』は既に30号が出ているというのに、いまさら29号の感想とは遅くて申し訳ありません^_^; 前回は28号について書きました。 29号にはメンバーの作品や連句とともに、句集を読んでの座談会が掲載。 この座談会、個人的に考えを巡らす機会を与えてくれました。 取り上げられた句集は遠藤由樹子句集『寝息と梟』。 私も大好きな句集で、下記note記事として感想を書きました。 「オルガンの人たちは、どう読んでいるのかな?」 自分が好きな句集が好き! と聞けば、より増す親