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好きな本のはなし(俳句、短歌、ほか)

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句集、歌集をはじめとした「好きな本」の感想ページです。
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記事一覧

十七音の包容力と瑞々しさ:黒岩徳将句集『渦』

煌めきながら切ない、この十七音たちは、この感覚は何なのだろう。 本句集を読み終えての第一…

あんこ
3週間前
21

まどやかな祝福:阪西敦子句集『金魚』

金魚揺れべつの金魚の現れし 華やかに鰭を動かし、水を遊ぶように泳ぐ金魚。 複数あるいは品…

あんこ
1か月前
22

【俳句掲載】『名句水先案内』(角川俳句コレクション)

角川『俳句』連載の「名句水先案内」(2020年4月号~2022年3月号)。 今回、角川俳句コレクシ…

あんこ
2か月前
29

明日のある日常:折島光江句集『助手席の犬』

「できるだけ普段着の言葉で、普段着の景色を季語とともに俳句として詠みたい」 自分の心と身…

あんこ
2か月前
22

【俳句掲載】『全国・俳枕の旅62選』

俳人・広渡敬雄さんが『全国・俳枕の旅62選』を上梓なさいました(出版社:東京四季出版)。 …

あんこ
3か月前
21

軽やかに、カラフルに:箱森裕美句集『鳥と刺繍』

雷鳥や刺繍の花のその軽さ 句集タイトルのイメージにもっとも近い作品を挙げるとすれば、上記…

あんこ
5か月前
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愛とかなしみの背理法:土井探花句集『地球酔』

こんな日は仲間はづれの雉が好き この句の中に自分を見る人、あるいは共感する人は、「ここに自分がいていいのか」と思うことが多いタイプではないだろうか。 どんなに大人になっても、一日を呼吸しているだけで難しい日はある。 仕事やお金があるということと関係なしに、絶え間ない隙間風のような精神の飢え。 上記に書いた内容は、言うまでもなく私が普段感じていることである。 だから、おそらく今でもなにがしかの表現をしようとし続けている。 その手段の一つが「俳句」で、それは土井探花にとって

独自の詩の森の世界へ:しなだしん句集『魚の栖む森』

死角の無い句集である。 どこから読んでも、どの句を読んでも面白い。 溜息が出るほどだ。 全…

あんこ
7か月前
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月を仰ぐことを忘れない人:杉山久子句集『栞』

句会でも思うけど、俳句作品がまとまって掲載された句集を読むたびに思うことがある。 「どう…

あんこ
8か月前
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俳句を紹介・鑑賞いただきました☆

角川『俳句』7月号に掲載された12句作品のうち、数句について写真の俳句結社誌でご紹介いただ…

あんこ
10か月前
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客観的視点が生む言葉の距離と味わい:岡田由季句集『中くらゐの町』

中くらゐの町の大きな秋祭 街と町。同じ「まち」でもこの二つは違うと思う。 大雑把にいうと…

あんこ
11か月前
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異界への招待状:俳句誌『LOTUS』第51号

クラクラするほどの痛いほどの今夏の太陽。 八月になって、通りは急にふっと音の存在を忘れた…

あんこ
11か月前
22

俳句のみが発揮しうる魅力:現代俳句文庫88『金子敦句集』

いつもウキウキ、ルンルン♫で俳句を作れるなんてことは先ずなくて、大体句会や締切など「必要…

あんこ
1年前
56

感謝の証:渡部有紀子句集『山羊の乳』

あれは、所属する俳句結社「炎環」の記念大会。 当日、お祝いの為に出席してくださった大勢の来賓の中に、本句集の著者・渡部有紀子さんの師・有馬朗人氏の姿があった。 私の師・石寒太と仲良く言葉を交わされていた際の笑顔と、来賓の挨拶の際の明るく温かい声が印象的だった。 ちなみに、俳句を始めてようやく一年くらいだった家人も大会に初めて出席したのだが、「研究者・有馬朗人とその業績」についてはよく知っていたものの氏が俳人であること、そして「天為」主宰であることをこの時まで知らず、「なんで