見出し画像

【読書】ののはな通信 を読んで

初めて読書の感想について書く。それにあたって、ひとつだけわかってほしいことがある。

それは、ここに書かれている感想はすべて私個人の感想であるということ。

私の好みや、今まで読んできた本・文章・漫画・絵本。それらに影響され、感受性を育ててきたが、それは人によって器もアンテナも違う。だから、私の感想が正しいとか悪いとかないと思って読んでほしい。

ののはな通信 著者:三浦しをん

この話に重要なのは二人の女の子。ののとはな。ののとはなの文書のやり取りがまとめられた一冊となっている。

二人は横浜のミッション系お嬢様学校に通っている。ののは庶民的よりちょっと貧しめの家の子。頭脳明晰で、クールでちょっと辛辣。一方はなは、外交官の家の子。天真爛漫で、甘え上手だけどちょっと勉強は苦手みたい。正反対だけど、お互いのことをすごく大事にしている。

物語の始まりは、まだメールのない昭和五十九年。二人は当時話題だった『日出処の天子』や『かい人21面相』の話で盛り上がり、先生の噂話を手紙で授業中に回している。そんな中、ののははなに告白し、二人は恋人同士になる。二人は結構深い関係になり、手をつないだりとか、キスをしたりだとか、それ以上のこともする。しかしそれは、とある人物の行動によってどんどん崩れてしまう。

そこから二人は大学生になる二章、そこからまた更に二十年経った三章、そしてそのまま四章へ・・・といった年代を超えた二人のやり取りが収められている。

感想

とにかく泣いた。まずはその一言に尽きる。

別にののとはなが亡くなる描写はされていない。すごく悲しい結末かと言われたら、人に寄よるかもしれないが私は前向きなラストだと思った。それでも、ラストを読み終わった瞬間に涙と嗚咽が止まらなくなり、誰もいない部屋でひとしきり泣いた。

ネタバレをしたくないため詳細は話せないが、はなは一体どうなってしまったのだろうか。ののが心配する気持ちが自分にも移ってきて、はなのことを考えれば考えるほどいろんな想像があふれ出てきて涙が出てしまった。こう書くと「はなは死んでしまったのか?」と思われてしまいそうだが、何度でも言うがそれは明記されていない。

実話を例に出すと、昨年に突然「(父方の)祖母が入院した」という連絡がやってきた。しかし、当時の情勢の関係で私は実家に帰れなかったために詳細をしばらく伝えてもらえなかったことがある。そのときの感覚にすごく似ている気がする。当時は二度目の入院だったこともあり、うすうす病名はわかってはいたが、病状や本人の様子がわからず不安になった。そのような感じ。

はなが何をしたいのかは手紙で分かる。でも、本人の様子はわからない。だからこそ、応援したいけどとてもとても不安。という感情、だろうか。ただ、ののは彼女のことをすごく心配はしているが、前を向いた行動に幸せと無事を願っている。

最初から最後までを通じて、きっと二人はお互いのこと嫌いにはなっていない。むしろ、関係がどうなろうと互いのことを愛し、大切に思い、幸福を祈っている。最初の学生のときは、学生のらしく燃え上がる情熱のような愛を。大学生になってからは大人とまだ大人になり切れない心情で、でもゆるやかにお互いを大事にする気持ちが。そこから二十年経った二人には、愛よりも大きくでも恋ではない大切な思いが。そこにはあった。

私は人に恋愛感情を抱いた経験はない。だれかと付き合ったこともない。だから、二人の感情について完全に理解ができてないところはきっとある。人に恋をするってどんな気持ちなんだろう。愛するってどんな感じなんだろう。でもこの作品に書いていたのは、恋愛感情だけが人を最大級に愛することではない。恋愛よりももっと大きく、でも付き合うとかそんなんじゃない『大切』『大事』の形。それがあったのかなと考えている。

最後に

読み終わってからすぐ、殴り書きで書いた下書きがあまりにも散文で読めるようなものじゃなく頭を抱えた。ただ、本当に素敵な作品だったとどうしても伝えたくなる本だった。

この本との出会いは完全なる一目ぼれなのだが、運命というものは本当にあるんだなとつくづく実感した。本屋さんおよび本屋さんで本の配置を担当した人、ありがとう。そして執筆した三浦しをんさん、書いていただきほんとうにありがとう。

素敵な作品なので、もし出会えたら読んでほしい。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?