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トッケビの雨

冷たい雨が降り続いている。
わたしは晴れた日より雪の日より、雨の日が好きだ。

季節も春より秋が好き。だから秋の長雨は大歓迎。
できれば今日のような日は一日中外にでないで、静かに家のなかで、雨の音を聴いていたい。

韓国では鬼のことを【トッケビ】というそうだ。
CS衛星放送で現在放送中のドラマ『トッケビ』では主人公のトッケビ(演じているのは映画『新感染』のコン・ユ)が哀しむと、雨が降る。深く哀しむにつれ、心の在りようを映し、どしゃ降りの雨へと変わる。

一般的に『雨』は哀しみの象徴に使われることが多い。陰鬱とした暗い空から降りそそぐ雨は、人が流す涙に似ているからだろう。

今日は留守中に溜まっていた『トッケビ』を何本か続けて観たせいか、雨の音が嗚咽のように聞こえる。ああどこかで泣いている鬼がいるんだな、と思う。

日本には『泣いた赤おに』という物語がある。
怖くて強いだけじゃなく、気弱で優しい鬼もいる。赤おにのために自分を犠牲にした、青おにの存在も。

なんでもこれはこうだ、あれはああだと決めつけないでほしい。雨を楽しんだっていいし、憂鬱に感じたり、わんわん泣いたっていい。

わたしもそろそろ、出掛けなければ。
雨は好きだけれど、雨のなかを歩くのは億劫だ。

泣いている鬼は、私自身なのかもしれない。


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