SailGPピットからの景色8
国の代表として7チームが世界を転戦しながら優勝賞金100万ドル(約1億円)を懸けて戦うヨットのプロリーグ「SailGP」。時速100kmで走る船のちょっとマニアックな内容を数回に分けてお届けしたいと思います。
今回のテーマは「走る司令塔」です。
シーズン1のカウズ大会ではペデスタルが根元から折れたり、ハルの一部が剥げたりトラブル続きではあったものの大会2位、そして総合結果も2位と好調でした。そんなTeam Japanの直ぐ側で支え続けているのは「司令塔」であるチェイスボートです。
今回はそのチェイスボートについてお届けしたいと思います。
GT-Rと同じ!?
この船もモンスターマシン!600馬力!
驚異的なスピードで走るF50を追い掛ける為このボートには600馬力(300ps×2)の大きなエンジンが積まれています。
日本が世界に誇るスーパーカー「GT-R」と同じ馬力で軽自動車約10台分!マクラーレン650Sにギリギリ及ばないくらいです(笑)
当初はこんな馬力要る?と思いましたがF50を追い掛ける以上のスピードに加え曳航する時にも大きなパワーが必要なのです。
シーズン1はシドニー、サンフランシスコ、ニューヨーク、カウズ、マルセイユと5戦ありました。こういった船は現地でレンタルするのではなく、40ftのコンテナに入れ各地に運び稼働させています。
因みにこの船にはドライバー、レスキューダイバー、ショアクルー、ショアボス、カメラマン、コーチやアナリストが乗っています。
まるで「F1」? リアルタイムで分析!
SailGP のチームはトップレベル集団。もちろん選手や船が速いのは当たり前ですが、その先も大事なのです。
Photo by Beau Outteridge / Japan SailGP Team
世界最高峰の自動車レースとも言われるF1の現場ではコンマ数秒を競っており、それはコース上だけでなくピットでも激しい情報戦が繰り広げられています。これはSailGPでも同じことが言えます。
F50にはなんと800ものセンサーが搭載されており、フォイルのアングルを始め、ウィングの状態などありとあらゆる情報がLTE回線で1,200ものデータポイントが「リアルタイム」で送られて来ます。
このスピード感に対応するために、シーズンを通してアナリストも海に出て、常に最善の走らせ方を模索しているのです。
ご存知の方が多いと思いますが、SailGPのデータ共有はかなり特徴的で、走行中に出て来たデータはオラクル社のクラウドに保存され、どのチームのデータも閲覧可能なのです。
それにより情報格差が減りエキサイティングなレースとなるのです。
特にデータ解析は、曜日ごとに異なる海面状況などの条件から最高の戦略を導き出さなければならず、そのためにもフィードバックされる膨大なデータを短時間で処理しなくてはいけません。チームにとって、ITは戦略を立案、実行していくための生命線にもなっています。
データ解析はアナリストの腕の見せ所です。
↓走りながらデータを確認中
SailGPファンの方は既にSailGP の公式アプリをダウンロードしてそこでレースを観たと思いますが、そこで見たデータも膨大なデータの一部です。是非ダウンロードしてみてください。かなりシンプルですが各チームのスピードや向きなどの情報が見れます。
『メディアとモバイルアプリにより、私たちはよりよい体験を提供して、セーラーではない方々にこのスポーツをより理解してもらいたい』
この様なメッセージも発信されており、セーリングの面白さをもっと感じてほしいという想いが込められているのです。
データの有効活用!
写真:B&G WEBサイトより
セーリングエレクトロニクスの設計と製造における世界的リーダーであるB&Gがオフィシャルサプライヤーとなっていてセンサー、チャートプロッター、レーダー、通信デバイスを備えたシステムをSailGP に提供しています。
写真:B&G WEBサイトより
先端に付いているF50のウィンドセンサーによって超高速で走る船が最大限能力を発揮しているか確認するため、データは随時クルーに提供されていますが、実はこのデータはレースコントロール(運営)にもフィードバックされ、状況を監視し安全を確保しているのです。
写真:B&G WEBサイトより
映像革命!!
F50のデータからレイラインや風速などを映像に載せる「ライブラインFX」という素晴らしいシステムがあります。
↓ これ本当に凄い!!!!!!
画面越しにレースを観た方は分かると思いますが、配信されているライブ映像に各種ラインが引かれて分かりやすくなっているんですよ!結構正確!
SailGP YouTube公式チャンネルより
誰が勝っているか分からない状態がこういった技術の進歩で分かりやすくなったのは嬉しいです。
海底探査も行う?
写真:B&G WEBサイトより
F50のフォイルはとても繊細なので傷が付くと走りに大きな影響を与えます。なので、拠点のベースからレースエリアに行くまでのルートを3Dソナーを使って海底調査も行っているのです。
もし、海底に障害物があって当たれば最悪な事になりますよね、、、。
意外と大忙し?
Photo by Beau Outteridge / Japan SailGP Team
上記の内容に加えて他にも沢山やる事があります。ハーバーからレースエリアまで曳航したり、、、(フォイリングして)
警戒船としての役割もあるので近付いてくる船には最新の注意をはらいます。
また、チェイスボートにはサイズの違うセールやスペアパーツ、担架などが搭載され、もし何かあった時には直ぐに対応出来る様になっています。
影で様々な働きがあってSailGPのレースが成り立っているのです。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!第7回までのシリーズで「5,311回」も閲覧がありました。本当にありがとうございます。
「SailGPピットからの景色」シリーズは今回で一旦お休みです。
またパワーアップして戻って来ますのでお楽しみに!
では!
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