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戦略人事:企業統合の難しさ(文化の違いを吸収できなければ不全が生じる)

■頻発する企業の統合

大企業であればあるほど、「選択と集中」が必要になり、様々な分野で統廃合が進んでいる。その中には、それぞれの企業のキーテクノロジーの深化の思惑が強く働くものも多い。

○リコーと東芝テック、2024年目途に合弁会社--「競争力のある共通エンジン」の開発へ
2023年05月19日

リコーと東芝テックは5月19日、両社を株主として複合機などの開発、生産を担う合弁会社を組成すると発表した。

https://japan.cnet.com/article/35204073/

しかし、こうしたことが成功を約束するものではなく、官民ファンドの出資を受けて有機ELディスプレーを生産している「JOLED」が2023年に東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請したニュースはまだ記憶に新しい。

■戦略人事上の課題

こうした統廃合は、人事制度上にも問題を突きつける。一番大きな問題は「処遇」に関する事項である。

当たり前の話ではあるが、賃金体系は会社毎に異なる。そして多くの会社は、「人事評価」と対になっている。人事評価は、いわゆる目標管理制度に紐付いているものもあればそうでないものもある。また運用も異なるだろう。

資格制度や職能資格制度、退職に関する規定なども異なる。方や「ジョブ型雇用」を入れている、方や「年功序列」であるとしたら、同じ仕事・同じ年齢であってもゆがみが出てくる。

統合を発表するのはいいのだが、まずは統合後の人事制度をどのように設計して、どのようにそこに移行させるのかは難しいと言うことは想像できる。

その際に、本社の考え方をそこに持ち込むのではなく、新たな戦略の元での人事制度を設計しなくてはならない。なぜならば、インクを混ぜるように人事制度を混ぜると誰にとっても不満が生じ、機能不全になるからだ。改めて皆が新入社員として入社し、納得できる人事制度にするためには何を目指すのかを明確にした「戦略人事」を開発しなくてはならない。

■文化の差異が生み出す不全

戦略人事を考える上では、その上位概念である経営戦略との整合性も担保しなければならない。しかしこれは容易ではない。なぜなら、そもそもの2社の価値観が異なる恐れがあるからだ。「これぐらいいいだろう」という無責任な文化がはびこれば思わぬ落とし穴が待ち受けている。

○検査不正、2億本超に 日立の自動車部品子会社
2023年05月19日

 同日開いた説明会で、ブリス・コッホ最高経営責任者(CEO)は「経営陣の誤った姿勢により、コンプライアンス(法令順守)が不十分だった」と陳謝した。
 一部の製品では約40年不正が続いていたケースもあったという。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023051900875&g=eco

○日立の車部品子会社で不正2億本超 自動車や鉄道向けなど22製品
2023年5月19日

 不正が発覚したのは、自動車向けのブレーキ部品や鉄道用ダンパー、産業用ダンパーなど22製品。定期試験を実施していなかったり、試験結果を虚偽報告したりしていたほか、顧客の承認なしに設計を変更するなどの不正が見つかった。

日立アステモは日立製作所とホンダ傘下の部品メーカー4社が経営統合し、21年1月に設立された。

https://www.asahi.com/articles/ASR5M4R9CR5MULFA010.html?ref=smartnews

品質に関する考え方、法令遵守に関する考え方などは会社により異なるかもしれない。
善意で考えれば、こうしたことがないようにガバナンスを確立しているはずであるが、それができていない恐れもある。

社員がどのような考え方で仕事をしているのかを調べるのは人事部門の役割である。そのための調査手法として「社員意識調査」がある。戦略人事を組み立てる前に組織文化もしっかり把握しておく必要がある。

烏合の衆あるいは素人集団になりかねない。
くわばらくわばら・・・

<閑話休題>

(その他の参考記事)

○40年も?! 日立アステモの不適切行為---調査結果および再発防止策など公表
2023年5月20日

  1. 原因分析
    ●拠点運用とその監督における経営陣の誤った姿勢に起因する、品質保証に関するコンプライアンス意識の低さ、コンプライアンス監視の不徹底、品質保証に関する自浄作用の欠如により、不適切行為が継続した。
    ●営業部門における受注活動の段階で、現場では対応できない内容での試験検査項目や製品スケジュールの合意がなされるなど、実現困難なコミットメントを許容する文化があった。
    ●試験を実施するための人員の慢性的な不足、試験に必要な設備が整備されない状態に加え、一貫性のない業務手順により、従業員独自の解釈や手順が存在した。

https://response.jp/article/2023/05/20/371154.html

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