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戦略人事:若者の志向をわがままと片付けてはならない(革袋を変えてもワインの味は変わらない)

■人事部門の憂鬱

こと採用に関して言えば、人事部門を悩ませるのは

(1)採用の応募をしても人が集まらない
(2)内定をだしても土壇場で断られる
(3)採用してもすぐに辞める

だろうか。

人手不足が言われている一方、就職できない人々も存在する。とにかく贅沢を言わなければ何か職がありそうなのだが、企業側は「使える人財が欲しい」、働く側は「まともな職に就きたい」というミスマッチがあり、人手不足は解消されない。

○「人手不足」倒産がさらに深刻化へ、東京商工リサーチが独自データで解説
2023.5.12

「正社員不足」と回答した業種は、タクシーなど「道路旅客運送業」が90.9%、運送会社など「道路貨物運送業」が88.1%、「総合工事業」83.4%、「宿泊業」83.3%など、労働集約型の業種が際立って多い。

 一方、「正社員過剰」と回答した業種は、「印刷・同関連業」が26.0%、「広告業」が17.2%など、コロナ禍とはいえ不況業種で目立つ。業種による人員の過不足は、人材のミスマッチとして今の課題を浮かび上がらせている。

https://diamond.jp/articles/-/322756

■魅力のない仕事

かつて忌避される仕事として「3K(きつい、汚い、危険)」という言葉があり、最近では「きつい、帰れない、給料がやすい」なども意味するらしい。かつての3Kは担い手がいない代わりに給料が高かったが、いまは「安い」らしい。

そんな仕事に喜んで就くヒトはいないだろう。

○建設や運輸・倉庫で人手不足の要因、「業界の人気がない」が最多
2023/05/18

「人手が不足している要因」は、「条件に見合った人材から応募がない」という回答が54.6%となり、最も多かった。特に、即戦力を求める中小企業ではその傾向が強く、採用に苦難している状況がうかがえるという。

「人手が不足している要因」を業界別に見ると、建設と運輸・倉庫は、「業界の人気が少ない」が6割を超えていた。2024 年問題が差し迫る運輸・倉庫では、「業界の人気がない」のほか、「時間外労働の上限規制や休暇取得の義務化など働き方改革の逆作用」(32.6%、同+18.8 ポイント)、「労働環境が厳しいと受け止められる」(62.8%、同+25.6 ポイント)などが目立っているという。

https://news.mynavi.jp/techplus/article/20230518-2682113/?lead&utm_source=smartnews&utm_medium=ios&utm_campaign=sp_app

仕事自体の魅力を高め、適正な報酬を担保しない限り人材の偏向はこれからも続くであろう。

■ふさわしい仕事

他国ではあるが、深刻であるかなと感じた記事がある。

○中国、若年層の失業率が20%突破-過去最悪更新し危険水域
2023年5月16日

 統計局が同時に発表した他の経済統計は軒並み予想を下回り、債務問題や民間セクターの弱い景況感が経済成長の重しになっていることが示された。今年大学を卒業する学生は約1158万人と見込まれていることもあり、若年層の高い失業率は大きな課題だ。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-16/RUQEFJT0G1KW01

当然失業率も問題ではあるが、一方では工場などでの単純労働に従事する労働者は不足していると聞く。これが足かせとなり経済成長がままならないのだという声を聞く。

大学を卒業した知識人にとって、いったん「単純労働」の世界に足を踏み入れたならばそこから抜け出せないという恐怖があれば、自分にふさわしい仕事にしか興味を示さないのは当然であろう。

日本でも、いわゆる技能実習生が担う仕事に喜んで向かう人材もいるとは思えない。

■努力をしない企業

モチベーション3要素は「ふさわしい仕事」「ふさわしい環境」「ふさわしい報酬」と言われており、特に「ふさわしい仕事」が起点になっているかは重要な課題である。そのためには会社自身が言動を改めなければならないのに口先だけの会社もある。

革袋を変えたからと言って中身のワインがおいしくなるわけではない。という寓話があったかと思う。

企業も「働き方改革」などと言って人事の諸制度を変えたからと言って、事業プロセスを何も変えなければ働くヒトにとっては何も変わっていないと同じである。「ジョブ型雇用」といっても、業務プロセスが同じであれば期待外れ感の方が高くなる恐れがあり、かえって離職率が高くなる。

そう思わせる記事がある。

○たった1カ月で「新入社員」半分退職まさかの原因
「採用コスト」は例年の5倍かけたのになぜ?
2023/05/16

合同説明会から複数回の面接を経て入社するまで、「当社は働きがいのある会社」とアピールし続けた。社長も「働きがいのある会社に生まれ変わった」と事あるごとに繰り返していた。だからこそ、新入社員は裏切られたと感じたのかもしれない。

美味しいイチゴが使われたショートケーキだと言われたから買ったのに、肝心のイチゴがあまり美味しくなかった、ということなのだろう。

https://toyokeizai.net/articles/-/671389?utm_source=smartnews&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

■すべきことは明らかである

企業がすべきことは、革袋を新しくすることでは無い。おいしいワインを作る経営革新である.それは絵空事ではなく、確固たるビジョンに基づいた戦略的行動である。

さて、あなたの会社はどうだろう。

<閑話休題>

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