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戦略人事:労働組合はジョブマッチングのプラットフォーマーになれるか(クロネコ、労働組合、受注発注の自動化)

■顕在化している問題の不可思議

○「嫌なら辞めて」と言いたいのか…ヤマト運輸もUberも「団体交渉」拒み紙一枚でフリーランスをバッサリ
2023年11月23日

 「雨の日も風の日も台風の日も配達してきた人たちが、(来年)1月31日をもって契約解除と通達された。1枚の紙でばっさり切ったヤマトにまず団体交渉に応じてもらいたい」

 ヤマト運輸の仕事を請け負う個人事業主らが加入する労働組合「建交労軽貨物ユニオン」の高橋英晴委員長は先月末に開いた会見でそう力を込め、東京都労働委員会に救済を申し立てたことを明らかにした。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/291679

この記事の不思議なことは、団体交渉は何を俎上にあげるのだろうか?
クロネコからすればアウトソース問題であり人事上の問題ではない。すなわち労働問題だと認識していなければそもそも話し合いは成立しない。

法律問題だろうか。

配達員が無期限の雇用契約を結んでいるのであれば契約違反の話になるだろう。そうでなくても一定期間の仕事の保証を契約していても同じである。逆に、包括契約はともかく、個々の配達業務ごとの受発注であれば、仕事がなくなったので発注を継続しないことは何が問題なのだろう。

仮に、元元社員であったものをアウトシースに転換させていたとしたら偽装フリーランスの問題になる。また、社員と同等の働き方をさせているならば、フリーランスとして一律に扱うことは問題になる。

○「偽装フリーランス」が常態化する宅配業界 労働者の「無権利状態」を防ぐ立法を
2023年11月24日

 「働き方は社員と同じなのにフリーランスと扱われて労働基準法などで守ってもらえない。軽貨物などの業界で、この『偽装フリーランス』が多く見られる」

https://www.tokyo-np.co.jp/article/291864

最初の記事で「建交労軽貨物ユニオン」は何を問題視しているのか。
良く理解できない。彼らが介在できる問題なのだろうか?

■収入の安定化

本来の労働組合は働く人の労働環境の改善や法律に基づく紛争解決であり仕事の斡旋ではない。しかしクロネコの問題を働く人の立場から眺めると、「安定した仕事の供給がなされない」という点に集約できるものの、これは労働組合の問題ではない。

従って、上記の記事で

「横浜市内で約8年間、メール便を配ってきた個人事業主の男性(69)は、突然の契約解除に憤る。年金は月5万円程度で、1通の配達につき26円得られる報酬が頼りだ。「生活がかかっている。人間らしく扱ってほしい」と訴える。」

とあったとしても、一時金の交渉はできても継続的な雇用の獲得はできないだろう。事業とセットにした業務委託であれば、これを再配置しなくてはならない法的根拠が思い当たらない。

問題の本質は「仕事をヤマトに依存している」点に集約できる。そうした意味で、本当に対応しなくてはいけないことは下記のコメントに集約できる。

「物流業界に詳しい立教大の首藤若菜教授(労使関係論)はフリーランスについて「企業から『条件が嫌なら(仕事を)辞めて』と言われ、交渉の場がないのが問題。契約形態にかかわらず働く人同士がまとまり、会社側と対等に交渉できる仕組みが必要だ」と強調。」

■プラットフォーマーを作る

働きたい時間を選ぶ。働きたい仕事を選ぶと言う意味では、すでに「Timee」や「ビズリーチ」などがある。ウーバーの本質は「誰がどこからどこに移動したいときに誰に頼めるかをサポートする」プラットフォームだと認識すれば、同じ枠組みを、「運送を行なうフリーランス」に拡大できる。

そうした下地はすでに存在する。

○米ウーバー、「便利屋さん」サービスを試験運用 洗濯、掃除、雪かきなど
Nov 20 2023

技術系ニュースサイト『ザ・バージ』によれば、まず雑用を頼みたいユーザーが、仕事内容をアプリに掲載。ウーバーのドライバーや宅配業者は、アプリ上の求人を閲覧し、請負予約をする。事前に推定収益も確認可能で、同社広報担当者は、「ドライバーや宅配業者が自分のスキルを活かして自分のスケジュールに合わせて収入を得る方法だ」と説明している。

https://newsphere.jp/business/20231120-2/

こうしたプラットフォームを作るには、単にシステム会社だけに任せていてはならない。なぜなら、そこには「社会課題の解決」の思考が抜け落ちるからだ。それを防ぐためには

・労働者(配送するフリーランス)
・企業側(現業部門)
・それを橋渡しする労働組合
・人の問題として常識を働かせる人事部門

が関わるべきである。
単に、外注問題、労務問題としか扱わない部分最適にしか思いが行かない人々だけに任せてはならない。

(2023/12/05)

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