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戦略人事:人員削減戦術への対応【1/3】(日常的なリストラの風景)

戦略人事:人員削減戦術への対応【1/3】(日常的なリストラの風景)

2024年3月。リストラの記事が目につくことが多い。
人事部門はリストラを対岸の火事として見ていることへの警鐘としていくつかに分けて現状を見てゆく。

※引用が多いよ

■業績の好調は関係ない

海外でのリストラが止らない。
従来のこうした従業員の削減は、結果として業績が悪くなったとしても最後の手段であるとの印象が強かった。少なくとも私はそうである。しかし、最近の海外のリストラはそうではないようだ。財務的な影響が出る前の予防措置的な色彩も強い。

したがって、リストラと業績の相関性は弱くなった気がする。

○米テック5社、純利益5割増 AIが今後の業績を左右
2024年2月11日

米テック大手の業績が拡大している。マイクロソフトやアップルなど主要5社の2023年10〜12月期の決算を合算すると、売上高が前年同期比12%増の4779億ドル(約70兆円)、純利益が56%増の1011億ドルだった。人員削減を通じたコスト抑制が寄与した。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN062A00W4A200C2000000/

上記の記事で注意しなければならないのは
①業績は拡大している
②人員削減を通じたコスト抑制が寄与した
とあるように、人件費は単なるコストとしてみていると云うことであろう。

もちろん、ハイパフォーマーが必要なことは当然としても、彼らは簡単に転職するので引き留める策は講じないことはないにしても代替可能性を認めているのだろう。そのせいか、業績が少しでも悪くなると簡単にリストラする。

それは好業績企業として評価されている企業であっても例外にならない。

■こぞって・・・

昨年から今年にかけての人員削減の記事が驚くほど多い。
少し長いが列記する。

○米ヤフー、全従業員の20%以上の解雇を発表 アドテク部門の50%以上を削減へ
2024.2.13

対象は広告部門で、同社のアドテク部門の従業員50%以上=1600人以上に影響があるとしています。今週には全従業員の12%に当たる1,000人ほどが削減され、下半期に残りの8%が削減される予定だとしています。

理由としては、他のテック企業と同じく広告事業の不振が大きな原因となっています。Yahooは、過去10年ほどで30件以上の広告事業の買収を行い、拡大をしてきましたが、昨今の市場環境にその規模が耐えられなくなり、およそ半分の規模まで縮小させることとなりました。

https://rtbsquare.work/archives/48816

○米パラマウント・グローバル、約800人削減へ 増益目指しコスト削減
2024年2月14日

米メディア大手パラマウント・グローバル(PARA.O), opens new tabは、従業員の約3%に相当する800人前後の人員を削減するとの方針を関係筋が明らかにした。同社は年内の増益実現に向けコスト削減を模索している。
ロイターが閲覧したボブ・バキッシュ最高経営責任者(CEO)の従業員宛メモでは、対象となる米国の従業員に13日に通知を行うほか、国外の一部従業員も影響を受けると説明。「これらの調整により、これまでの勢いに乗って今年の戦略ビジョンを実現していくことができる」と述べた。

https://jp.reuters.com/business/NS7ES4FCKFO5DAKSADA34KL3MU-2024-02-14/

○米シスコ、5%人員削減へ 通期売上高見通し下方修正
2024年2月15日

米ネットワーク機器大手シスコシステムズ(CSCO.O), opens new tabは14日、世界の従業員を5%削減すると発表した。ルーターやスイッチなどの従来型のネットワーク機器への需要が低迷する中、人工知能(AI)やソフトウェアなどの高成長分野に経営資源を投入したい考え。
2024年度の通期売上高見通しを515億─525億ドルとし、従来予想の538億─550億ドルから下方修正した。

https://jp.reuters.com/markets/world-indices/IK7PMSH2KNMI3AFG7Q3KOR7U5Y-2024-02-14/

○飲食店ソフトウエアのトースト、550人削減へ-テク業界レイオフの波
2024年2月16日

21年9月の上場後、トーストの株価は食品業界の不振や他社との競争の中で52%下落。23年の年間売上高は38億7000万ドルで前年比42%増。規制当局への提出書類によると、22年末時点で4500人の従業員を抱えていた。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-15/S8X22AT0AFB400

○米ナイキ、従業員の2%1600人削減 北米・中国で低迷
2024年2月17日

米スポーツ用品大手のナイキは16日までに、従業員の2%にあたる1600人以上の人員を削減すると明らかにした。2023年12月に発表した3年間で20億ドル(約3000億円)のコストを削減する計画の一環。中国や北米での需要が低迷するなか、組織のスリム化で採算向上を図る。

独調査会社スタティスタによると、ナイキの従業員は世界で約8万3700人。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN170150X10C24A2000000/

○リビアン、10%の人員削減へ-24年生産計画は市場予想を大きく下回る
2024年2月22日

米電気自動車(EV)メーカー、リビアン・オートモーティブは21日、需要の低迷と経済の混乱に対処する中で、従業員の10%削減と、ウォール街の予想を大きく下回る生産計画を明らかにした。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-21/S98ARTT0AFB400

○エクスペディア、世界で1500人削減へ 旅行需要鈍化で
2024年2月27日

オンライン旅行代理店のエクスペディア・グループ(EXPE.O), opens new tabは26日、「組織と技術の変革」の一環として、全世界で従業員全体の約9%に相当する1500人程度を削減すると発表した。

旅行会社各社は今年の見通しを控えめにしており、需要の伸びが鈍化する兆しが見える。

https://jp.reuters.com/markets/world-indices/BKR4NLTTXRIELPZDTDPAQ7WJFI-2024-02-27/

驚くのはその対応の早さであろう。リスクヘッジに対する感度が日本企業と根本的に異なるという印象を持つ。

■人員削減を普通のこととして扱う人材市場

共通していることは、結果として業績の悪化が財務上の毀損につながる前に手を打っていることだろう。財務状況の悪化は株主や市場からの圧力につながるために迅速な対応が望まれ、その矛先が人件費に向かい、人員の削減につながっていると考える。

こうした戦術が有効であるためには、人材の高度な流動化が前提であり、需要と供給のバランスがとれていなければ成立しないだろう。すなわち、

①人員を削減する企業側は法的な遵守の上でこれを実施し、労働者も一定程度の受け入れをする素地がある。
②解雇された人々には直ちに,あるいは適切な期間で他社に移動できるマーケットが存在する
③優秀であれば高額の報酬が期待できるのでスキル向上には投資を惜しまない

が成立しているはずである。もしくはそうなる素地が含まれているのだろう。さもなくば全米規模でストが起きる。

ひるがえって日本はどうであろうか。
どこかで働くヒトを消耗品として捉えている企業がおり、それの制御のための労働法が企業の足かせであり、良い悪いはともかく、人材の流動化が進んでいない。ここで言う人材の流動化とは「正社員」の流動化である。

テレビコマーシャルで宣伝される「ビズリーチ」などはまだ他人事だと思っていないだろうか。

(2024/02/29)

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