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晴耕雨読:「学習する組織」(世界を含む社会システムと未来への洞察:第16章 システム市民)

■はじめに

我々が向き合う「生きたシステム」を、数々の要素の相互関係で成り立つというのであれば、その範囲を限定することは予期せぬ障害を見落とすリスクが高い。

「どんな組織も、より大きなシステム、たとえば産業界、地域社会、もっと広げれば生命活動の中に存在している。」

「今や企業は、個別にも集合的にも、こうしたシステムに影響を与えること、その関係がもたらす結果は重大さを増しているが次第に明らかになってきた。」

狭い世界観で自己利益に走れば「自分で自分の首を絞めかねない」。

■相互依存と未来のパターン

システムを見るには二つの観点があると言う。
一つ目は、相互依存のパターンを見ることであり、その方法論はすでに第4章から第7章で示した。
二つ目は未来を見通すことである。
最もこれは難しい。

「未来は私たちにとって未知の世界に見えます。未来がこれまでの時代と決定的に異なる点は、その未来を形作り、評価する適切な単位が地球そのものであることです。」と、その困難性を示唆する。

本章では気候変動システムを題材として、その対応が難しいことを述べている。「私たち自身がシステムであることを自覚して生きる」は、非常に皮肉に富んでいる。
サプライチェーンのシステムで生産量の拡大は「価格が下がれば、豊かな消費者にとってはありがたいかもしれないが、農業収入に頼るしかない世界中の農家にとっては悲劇だ」と、システムに内包される人々の動作が構造を創り、構造が人々を規定するという前章までの議論が繰り返される。

■変えようとする動因

したがって、我々がすべきことは、まずは「より大きなシステムを変え得る共有ビジョン」を作り上げることであり、下記の4つを配慮することを、本書は求めている。

①きわめて解決しにくいシステムの問題は地理的に広くまたがり、組織の境界を越えている故に、システムに対処するために必要な戦略的ミクロコスモスも同様に企業、政府、市民団体を代表するセクター横断的な集団でなければならない。
②集団でシステムを見ることは必然的に、考えること、感じることの多面的な旅になる、人々がされかのせいにするのを乗り越えて、誰もが問題の一部なのだと気づき始めたとき、システムが見えてくる。
③集団で見ることの質と、その結果生じ得る共同のコミットメントは、集団の構成員が創る人間関係の質によって決まる。
④新しいシステムを実現することは、「唯一の答え」を見つけることではない。現在のシステムについての共通認識として新しいシステムを創造しようという誓約によって導かれる、熱心で人を信じる人々のネットワークを築くことである。

こうしたことを推進するための「21世紀の教育」という話題で本章が続く。

■いったんは終わりかな

さて、まだ第17章が残っているが、「学習する組織」としての事例やプラクティスなどは一応のまとまりが終わったと思う。第Ⅳ部は、技術論ではなく「学習する組織」の周辺トピックなどが中心となっている。
次回。第17章、そして第18章を簡単に紹介した後で、この「学習する組織」をどのように活用した良いかを少し検討する。

<続く>

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