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Slack全社展開プロジェクトの舞台裏: freee社内コミュニケーションツールの一元化への挑戦とそのみちのり

みなさんこんにちは🌞フリー株式会社の上野夏実です。
freeeでは2024年の年明けとともに全社コミュニケーションツールを「Slack」に統一いたしました。このnoteでは、そのプロジェクトの裏側をご紹介しつつ、難しいプロジェクトを頑張る(頑張ってる)人へ、元気とヒントが届くといいなという思いとともに書いていこうと思います。

私と所属するチームCulture Infraチーム(通称:カルフラ)についてご紹介

筆者について

改めまして、こんにちは!上野夏実です。ニックネームはnachiko(なちこ)です。どうぞよろしくお願いします!
私ですが、freeeの前は光通信という営業系の企業の情報システム部、商品企画部を経て10年くらい在籍していました。光通信は、「元気と勢いの塊!」「やるか、もっとやるか」(やるかやらないか、ではなく)みたいな会社で、いわゆる体育会系なのですが、私は結構好きでした。が、一方で「人って褒められると頑張れるよな」って思うことが多くなりました。プライベートではふたりの男児の母もしているため、「褒めて伸ばす」みたいな考え方いいな~と考えることが増えたんだと思います。
「もっとお互いのいいところを褒めちぎりながら働ける職場ないのかな~」と漠然と思っていたところにfreeeからオファーをもらい、そのカルチャーに魅力と可能性を感じて、2023年1月に入社に至りました。

freeeに入社&カルフラへ

freee入社後は最初はITストラテジーというチームに配属になり、2023年7月に、今回の「Slack全社展開プロジェクト」のためにCulture Infraチーム(通称:カルフラ)に参加しました。
カルフラは、「技術でカルチャーを醸成し、freeeらしさを全社(を通じて社外にも)に届けきる」ことを目的とした前衛的で素敵なメンバーが集まるチームです💖
今回のプロジェクトは、このチームのマネージャーでもあるYoと私の2名体制で進めたものです。

早速本題へ

このnoteでは、freeeで行った「Slack全社展開プロジェクト」について、舞台裏をお伝えしたいと思います。前述した私とYoの2名体制のチームがどのようにしてこの大きな挑戦に立ち向かってきたのかを記載したものです。(nachikoの感想を多く含む。)
「学び」という名のバッドノウハウも多いので、これを読んだみなさんがぜひ生かしてくれると嬉しいな~なんてことも思って書いていきます。

freeeにおけるコミュニケーションツールの背景と課題

今回のメインテーマである社内コミュニケーションツールですが、freeeでは2017年ごろからmeta社の提供する「Workplace」(facebookのビジネス版のようなツール)を利用していました。ここで、「なるほど、WorkplaceからSlackに一斉に移行したって感じか。」と思われたそこのあなた、違うんです。実はSlackもまたfreeeのコミュニケーションツールとして、今回のプロジェクト開始以前から利用されていました。(2014年6月くらいから利用している様子。)しかし、こちらのユーザーはエンジニアメンバーが主でした。
つまり、同じ会社の中でコミュニケーションツールが複数ある状況だったってことです。これが背景です。

ここまでで既にちょっとこのプロジェクトのポイントなるものが見えてきました。
以下の3つです。

  1. コミュニケーションツールが複数あることで情報の分断が起こっている。

  2. 一部のメンバーはWorkplaceもSlackも日々確認しなければならず、また、アカウントも2つ持つために無駄なコストが発生している。

  3. Slackに対しての知識や(暗黙の)ルールに対する理解度がメンバーによって既に違う。

ということで、上記を踏まえて実際どんなふうにプロジェクトを進めて行ったか(そしてどこにつまづき、どんな風にリリースにたどりついたのか)ご紹介したいと思います。

・WorkplaceとSlackの並行利用状態からコミュニケーションツールをSlackに統合するプロジェクト。
・一部メンバーは時間も金額も2重コストを強いられている
・すでに利用しているメンバー内で暗黙のルールがなんとなくある。

プロジェクト走りだしの心のうち

上記に箇条書きにしたポイントですが、プロジェクトを開始した当時は自分の中ではこんなにきれいに整理されてなかったと思います。
プロジェクト開始当時の私が内心思っていたことはただ以下2つ、
「既に利用しているエンジニア組織のメンバーに嫌な顔されたくない」
「これから移行してもらうビジネス組織のメンバーにSlack使いたくないって思われたくない」
です。そうです、とてもビビッていたのです。余計な事したって思われたくない、みんなに嫌われたくない…!
というのも入社して半年、まだまだfreeeのことでわかってない部分が多く、知っている人も全然いない。(本プロジェクトの前に半年間携わっていたプロジェクトは、結構決まったメンバーで進める業務が多く、あまり新しいメンバーとかかわることがありませんでした。)
そんな中で、私史上最大の「全社案件」担当になってしまったんですもの。はっきり言いましょう。ビビり散らしです。

・みんなに嫌がられたくない、嫌われたくない気持ちが強くビビっていた。

学びその1:「保守」に回っているうちは、プロジェクトは進まない。

そんなわけで、7月にプロジェクトは開始したものの、どこから何を始めたらいいのかわからない。このため、Slackのサクセス担当さんに「社内でイベントやってみませんか?」とか「アンバサダーをしてくれる人を募ってみましょう」とかいろいろアイデアをくださるんですが、自分的には”準備”たるものができていないと思っている訳です。
同時期、社内からも「Slackってどう進めたらいいんですか?」「Workplaceどうなっちゃうんですか?」って質問が来るんですが、めちゃくちゃ穏便な返答をしていました。
そんなことをして気づけば1か月が経とうとしていた頃、これはまずいぞと思いSlackのサクセス担当さんと1時間みっちり壁打ちをしました。そして腹を据えたのです。「私たちの思っている準備ってなんだ?このままだと100年たってもSlackがfreeeで利用される日は来ないぞ…( ゚д゚)ハッ!」
いま思えば、このころが「Slack」というものを社内全体がいっきに意識してくれた時期だったように思います。このタイミングでみんなにもっとエネルギーをもって、全体像やスケジュールなんかを伝えられたらスムーズだったかもしれない。しかし当時はうまくできなかったなあ。

・スタートしたけど何からやったらいいかわからない状況に陥る。
・Slackサクセス担当さんとの壁打ちで状況が整理され、気持ちも上がって腹を据えることができた。

学びその2:失敗して攻めよう

そして起こる大事件

さて腹を据えた私たちですが、その後はしばらく順調な感じでプロジェクトを進めていました。各チームと連絡を取ってスケジュール通りプランアップグレードに伴う環境移行(マイグレーション)を完了し、環境整備の第一歩を踏み出しました。
また、全社でのSlack利用のために、今まで暗黙知だった部分を明示化した利用ガイドライン設計や、プロフィールや個人の利用環境などを設定するための初期設定手順書を作成したり。やっと走り出せたな~、このまま頑張っていくぞ~👍
が、この後大きな事件を起こすことになります。「ワークスペースまたぎ運用」事件です。
当時、「Slack全社で利用したいけど、できることなら低コストで運用しつつ、情報の機密性も担保したいよね」というちょっとワガママな野望を抱いていた弊社。
この贅沢プランに応えてくれそうだな、と発案されたのが「ワークスペースまたぎ運用」です。これ何かというと、同じ会社内で複数ワークスペースを組み合わせ、Slackコネクトを利用して同じチャンネルを見に行けばやりたいことができるんじゃない?というものです。ザックリこんな感じ。
が、しかし、この方法だと以下の問題が発生します。

  1. カスタムレスポンスはコネクトされたチャンネルでは機能しません。

  2. グループメンションはワークスペースをまたいで機能しません。

今思えば相当悪い冗談のようですが、当時の私たちはこのあたりの知識があまりなく、導入時点では想定できていませんでした。また、導入開始後は代替機能で乗り越えられるだろうと考えていました。(当時に戻れるのであれば、sandboxなどのテスト環境でもっとしっかりテストをします。みなさん、テストは大切です…。)
結果、無邪気にも、エンジニアのみなさんが利用している本番環境で、この「ワークスペースまたぎ状態」作業への対応を依頼してしまったのです。結果はご想像にお任せしますが、本番なので影響ははかり知れずです。(その節はfreeeでエンジニアとして働くすべての皆様本当にすみませんでした…。)
しかしこれ、契約内容にかかわることなので当時は簡単にあきらめる訳にも行かず…上記2点の問題をどうにかアプリを開発して乗り越えようとかいろいろ頑張りつつ、2回もトライして(つまりエンジニアメンバーには2回も作業依頼し迷惑をかけ)粘ったけど、結果無理で諦めました。。。
そうです。恐れていたことが起きたんです。
「既に利用しているエンジニア組織のメンバーに嫌な顔されたくない」だったのに。おわった~~~~。

みんなの応援で助けられたし火が付いた🔥

がしかし、実際は全然違った。freeeってマジであったかい人だらけです。とにかく見てほしいこのリアク字の嵐。

痛恨のミスを犯した報告の投稿に対する暖かいリアクション

freeeのカルチャーは素敵なものがいろいろあるのですが、「失敗して攻めよう」というのがあります。(画像のリアク字にもある。)この言葉にめちゃくちゃに救われました。
こうして「ワークスペースまたぎ運用」は完全に失敗に終わった訳ですが、freee社内のみんなの応援を受け、「絶対にみんなに最高の環境を提供するんだ🔥」ということでハートに付いた火がより燃え盛るきっかけとなるのでした💖

社内外の説得&調整を経てワークスペースをまたぐことなくSlackを利用し続けることができるようになったことをアナウンスしたときの投稿とそれに対する社内のリアクション。あったかい。

・事件を起こしてみんなに迷惑をかけるという恐れていたまさにそれをやらかす。
・でもみんな頑張ってる姿を応援してくれた。
・わたし、freeeのためにSlack移行プロジェクトやり切る。

学びその3:「自分よりプロ」を見つけたら巻き込んで手伝ってもらった方が絶対に良い。

上記の事件ですが、圧倒的に知識が足りないがために起こした事件であることを痛感した私。AekyoHourに登壇し、事件の騒ぎについての謝罪をしつつ、「もし良かったら…」と横柄にも仲間を募りました。その名も#pj-slack統合お助け隊、という名前のチャンネル。(マジ身の程知らずだな。)
そしたらなんと集まってくれたんです!協力者!150人近くも!!!freee優しい人ばかり!!!
このチャンネル、存分に使いこなせたかと言われると課題も多かったかなと思いますが、集まってくれたメンバーはエンジニア組織の私よりSlackを長く身近に使ってきたメンバー(Slackつよつよ勢、と勝手に名付けて呼んでいる)が多く、いろんな質問をしたり、ルールを決めるときにコメントをもらって参考にしたり、アプリのテストに協力してもらったりと、本当にお世話になりました!!

「#pj-slack統合お助け隊」チャンネルを作成して呼びかけた結果、ものすごい勢いで仲間になってくれた人たち

・事件の後、知識不足を痛感した著者はAekyoHourに登壇し、謝罪と共にプロの協力を求める。
・#pj-slack統合お助け隊というチャンネルを作成し、150人近くの協力者が集まる。
・協力者はSlack経験豊富で、様々な支援を提供してくれた。

学びその4:組織がフラットな会社は草の根運動が必要。

伝えてたつもりだが全然伝わってなかったSlack移行プロジェクト

そんなわけで、多大な迷惑をかけながらも、エンジニア組織のメンバーとのつながりもでき、少しほっとしたタイミングだったかと思います。ビジネス組織のマネージャー層から「Slackって何」(意訳)的なことを言われてしまう事件が発生。それなりにWorkplaceでも発信してきたつもりでしたが十分には伝えきれてない、というかマネージャー層からこの発言が来ている時点でまずいです。(当時、移行完了を予定していた期日の2か月前でした。)
だがしかし待ってくれ。これって全社プロジェクトだよね?私の知ってる(超トップダウンの強い)会社はアナウンス出したら(なんなら出さなくても勝手に)「お前らしっかりやれよ!!」「ゾス!!」みたいな感じだったけど…?違うの?(ちがう)
上記は冗談ですが、freeeはトップダウンの強い会社ではなく(少なくとも私の見てきた中では一番弱い)、「全社プロジェクトだから」って別に上からの強制めいたことは勝手に起こらないのでした。

ということで、以下のことをしました。

  1. マネージャー層を対象としたWorkplace→Slack移行の説明と手順オンボーディング

  2. ビジネス組織の各チームAllHands(決起集会的なもの)に登壇させてもらって、Slackについてのご案内

  3. Workplaceのグループに対応するSlack移行作業(チャンネル作成とメンバー招待)をカルフラで代行

ここは分担して、1つ目はYo、2つ目が私、3つめはチームでそれぞれに対応しました。
1つ目について、当初ビジネス組織のマネージャーの中には、結構「Slack反対勢」がいたと思います。使い慣れたツールがあるのに新しいツールに置き換えて一から利用を開始するのは誰でもストレスを感じる。当然のことです。しかし、ここはYoの爆裂に高いコミュニケーション能力と普段から培われているコミュニティに、基礎のしっかりした資料が合わさって、説明会のあとはほとんどの方が納得し、協力の姿勢を取ってくれました。さすが。

2つ目については、現場のメンバーはまだまだSlackに興味ない(というか日々の業務で手一杯でそれどころじゃない)状態だったので、私のほうから1組織ずつ連絡をして、直近のAllHandsに参加させてもらえるようにお願いして…という感じで全部の組織ではなかったけど、いろんなところでお話させてもらいました。実際の登壇は2分とか本当に短いものがほとんどでしたが、それでも「Slackの担当はnachiko」と覚えてもらうには十分でした。

また、3つ目については「freeeみんなのSlack移行によるストレスを少しでも軽減したい」という目的の元、それまで利用していたWorkplace上のグループの代わりとなるSlackのチャンネルを作成&メンバー招待することをカルフラで代行しました。(代行作成した数、500チャンネル以上!)
その結果、ビジネス組織も少しずつ「WorkplaceからSlackに移行になるんだ」「時期が来たら作業をしないといけないんだ」「困ったらカルフラに相談すればいいんだ」といった認識が広がっていき、ビジネス組織からの具体的なaskも増え、フォローにつなげられる場面も各段に増えていきました。

・トップダウンの弱い会社では草の根運動が必要で、マネージャー層からの認識不足が発生。
・それを解消するために、Slack移行の説明や手順オンボーディング、AllHandsでの登壇などを行い、ビジネス組織の理解を深め、移行作業をサポートした。
・結果として、Slack移行に対する認識が広がり、作業への参加やフォローが増えた。

そして来たる2024年1月4日…

freeeのコミュニケーションツールは完全にSlackとなりました。
年明けから大きなトラブルに見舞われたり、askが山のごとく襲ってきたりしたらどうしよう…と正直年末年始休みは気が気じゃなかったですが、蓋を開けてみたらビックリするほどの落ち着きっぷり。なんならみんな「Slack?3年前から使ってますけど?」みたいな顔して使っていやがるぅぅぅぅぅいや最高じゃん!!超安定稼働じゃん!!!
ということで細部ではまだまだ課題は残るものの、ひとまず無事にリリースを終えたのでした🎉🎉🎉

freeeのコミュニケーションはSlackに完全移行。トラブルやaskに不安だったが、実際は驚くほどスムーズで安定。課題はあるものの、リリースを無事に終えて一安心🎉

最後に

ここまで読んでくださったみなさま、ありがとうございます🙌
最後に、私が今回のプロジェクトを進める上で(というか仕事する上で)常に念頭に置いていることを2つ紹介させていただき、このnoteの締めとさせていただければと思います。

1.相手の置かれた状況を想像して「メリット」を提案することで、Win-Winの関係が作り出せる。

プロジェクトを担当したとき、「進めること」に目の前がいっぱいになってしまって、あまり相手の状況を意識できなくなってしまう、といった場面があると思います。でも、プロジェクトを進めたいのはあくまで「自分」であって、相手にとってそのプロジェクトは業務のメインではない、という場合がほとんどだと思います。
今回のSlackもまさに同じ構図で、私にとってのSlackはまさに活用を推進するメインテーマ。ですが、社内のメンバーにとってのSlackはあくまで「業務をするためのツール」に過ぎない訳です。
すると、依頼の仕方や説明の方法が「進める側」の視点になりやすい訳ですが、これだと依頼された側はあまりメリットを感じないし、後回しにされがち。しまいには「なんでこんなに言ってるのに対応してくれないんだろう…(鬱)」みたいな結果に。
だからこそ、相手の置かれた状況を考え、相手の「メリット」を明確にして依頼をすると良いです。こうすることで、相手も自分もhappyな状態で物事を進めることができるようになると思います。そして、これを繰り返すうちに、「誰も取りこぼさない姿勢」が出来上がり、プロジェクトやその顔であるメンバーに対する安心感、信頼感を育てていくことができると思っています。

メンバーから「誰も置いていかないサポート姿勢マジ尊敬してます」の言葉をもらった時の投稿のスクショ画像。
こういうことを言語化して、本人にしっかり伝えてくれる人がいるのもfreeeのカルチャーであり魅力だと私は思っています。あずにゃんいつも応援してくれてありがとう💖

2.「本気でやってる人」を見ると人は協力してあげたい気持ちになる。

これは自分でいうのもアレなのですが。でもこれからプロジェクトを進めようとしている人、進めている人に伝えたいのであえてここで言わせてください。
大きな課題に向き合ったとき、自分一人でできることって本当に限られていると思います。だからこそ、みんなに少しでも協力してもらって、ムーブを起こしていくことが本当に大事だなって感じています。そのための種になるのが、私は自分自身の「本気で向き合う姿勢」だと思っています。「本気でやってるな」「キラキラしてるな」って人に、みんな協力したいんです。そしてそれを軸に起きたムーブはとてつもないスピードをもって、とんでもなく大きな結果を残すことができると思います。「主役は自分」の気持ちで、ぜひ、頑張ってください。私も頑張るぞ🙌

コーポレート組織内でMVPもらった記念で撮ったカルフラチームメンバー5名の画像。
コーポレート組織内でMVPもらった記念🎉前衛的で素敵なチームカルフラのメンバーです✨

ここまで読んでいただいた皆さん、ありがとうございました!
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