要素を分解するという自戒

自分へのメモ用に。

私は長年定石を覚えられないという悩みがある。正確には、一度覚えてもすぐ忘れてしまう。恐らく周囲のイメージでは私は定石に精通しているほうだろう。実際のところ、積読状態の情報が多い。いつでもぐぐれる状態にはなっているが、自分に身についている知識はかなり少ない。リアルトーナメントで打っている方はわかると思うが、自宅のパソコンに多くの研究が入っていたとしても、自分が覚えていなければ現場では何の役にも立たない。このように形成された私の記憶は、全般的にぼんやりとしている。いざ細部のことが必要になると全然ダメだ。周りにはびっくりするくらい細かいことまで覚えている人間もいるので、こういうのはいわゆる才能の問題だと思っている節があった。

最近、フォロワーさんの勧めでAnkiという暗記をするのに特化したアプリを勉強に導入した。といっても勧められたのは結構前で、実際に使い始めたのはほとんどこの数週間のうちなのでだいぶ期間が空いた。これは「こんなんで覚えられるとかほんとかぁ~?」とか、「覚えるためだけにここまでするなんて馬鹿らしい」といった類の感情が少なからず存在したことに因る。使用をし始めてからすでに一か月か二か月になる。これがマジで覚える。しかもかなり鮮明に覚えるので本当にびっくりした。なんだ、自分は覚えるのが結構得意なほうなのかも?もちろん忘却はするだろうけれど、このアプリはそこもきちんとケアされている。

どうして急にこんなに覚えるようになったのか、当初は不思議でならなかった。色々と振り返ってみて気づいたのは、自分は「ついで」で覚えようとしているということだった。例えば、ある定石手順を覚えたいとする。そうなったとき考えるのは、この形をネット対局でたくさん打とう。そうすれば自然に身につくだろう。こんな感じである。ここまでを見ただけで察する方もいるかもしれないが、実際はそんなに都合よくいかない。まず、自分が覚えようとした形にあまり誘導できない。対局しているとあれも試したいこれも試したいとなって誘導できてもその通りにしない。しまいにはこの形を覚えたいという初心を忘れてしまって全く別のことをしている。結果としてすべてがぼんやりとした記憶になる。こういうことは私以外でも頻繁に起こるのではないだろうか。

そこで、件のアプリだ。これは自分が使い始めてあまり期間が経っておらず、機能を制覇できていない可能性が大いにあるのだが、このアプリでは良くも悪くも暗記しかやることがない。イメージ的には単語帳の暗記カードの電子版である。暗記以外の機能はないに等しいが、暗記をするための機能はかなり幅広く整備されている。暗記しかやることがないので非常に効率よく記憶できる。常日頃スマホという日常的なことは大体こなせる多機能デバイスを使っているためか、何か一つの機能を突き詰めたものに取り組むのは新鮮だった。ここに載せた情報は記憶するという、記憶と思考の線引きをしっかりできるのが個人的には一番よかった。

この急激な変化で感じるのは、つまるところ、今までは覚えたい覚えたいとは思っていても実際に覚えるための練習をほとんどしてきてなかったということだ。ネット対局の例で言えば対局は通常実戦感覚を養うための練習であって、形を覚えるのはその副次的な効果だ。元々記憶能力に秀でた人間であればそれでもこなせるかもしれないが、少なくとも私は違う。そういう特殊な能力を持っている人以外については訓練で身に着けるしかない。逆にいえば、訓練さえすればある程度のレベルには達することはできるようだ。この点は強く肝に銘じておかなければならないと思った。覚えるためには覚える練習が必要だ。ただ同じ理屈で、覚えたからといって直接強くなるわけではない。何でも追加効果を期待してしまうのは自分の悪い癖だ。覚えるなら覚える、感覚を養うならそれ専用のというふうに別々に練習する方が、一見して効率が悪いように見えても結果的にはよく身につくというものらしい。このあたりはこれからの練習で意識できればと思う。

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