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エンジニアのソフトスキル (2) コミュニケーション力

(この記事は「エンジニアに求められるソフトスキル」のPart 2です)

コミュニケーションにも色々な種類があります。話し言葉か書き言葉か、誰が相手か、同期的か非同期的かなど。ここではそれらをひっくるめてコミュニケーションと捉えました。

専門外の人に説明する力

エンジニアはソフトウェアの専門家です。専門家だからこそ、専門外の人に説明する力は重要になります。

これは、コミュニケーションする相手に応じて、自分の世界の言葉を翻訳する力です。これができないと、自分の仕事や提案の価値が伝わりません。他人からの理解や協力、承認を得るために大切な力です。

この力を伸ばすためには、立場・専門・視点が違う相手に対する理解や想像が必要です。また相手に応じて翻訳する語彙力が必要になってきます。また、問題解決力の記事で触れた「目的と手段の連鎖を把握する力」も関わってきます。自分がもっている手段が何の目的のためかが言えれば、自ずと説明の質が上がります。

事実と意見を分けて述べる力

これについては、既に色々なところに素晴らしい解説がありますので、それらの紹介に留めます。この力があると、上位者から信頼されたり、任せてもらえたりします。

上記の記事を引用して、更に解説や訓練法を加えている記事がこちらです。

文書作成力

エンジニアの仕事と、文書(ドキュメント)は切っても切り離せません。一言で言うには粒度が大きすぎるスキルですが、これもまたコミュニケーション力の一部と位置づけました。他のソフトスキルと重なる部分も多いでしょう。

正直、そう簡単に語り尽くせるスキルではありません。理工系の人ならば、学生時代に実験レポートや卒論・修論・博論などを通して身につけている人も多いかもしれません。そういう人もそうでない人も、これからも地道に磨く必要があります。

苦手意識がある人には、まずこちらのド定番名著をおすすめします。

これだけで終わるのもあんまりですので、文書作成力を私なりに少しでも分解してみます。ざっくり、戦略的な力と戦術的な力に大別できるかなと考えています。

戦略的な力とは、文書のスコープを考える力、章立てを考える力です。そもそも何のテーマについて書くのか、そのテーマをどのような章や節に分解するのか、それらをどのような順番で並べるか、それらの繋がりをどう述べるかを設定する力です。

ここがうまくできると、できあがる文書の完成度や価値は高まり、長く読み継がれ、メンテされる文書になります。ここができないと、短命で使い捨てられる文書になります。ソフトウェアに例えると、システム全体のアーキテクチャ設計みたいなものです。

戦術的な力とは、言葉を的確に使って記述する力です。これは、自然言語に関する様々なHowの積み重ねです。例を挙げるとキリがないものです。

語彙力とか、主語を明確にするとか、一文を短くするとか、助詞(いわゆる"てにをは")や接続詞を丁寧に使い分けるとか、修飾する語とされる語の距離を近くするとか、時制をはっきりさせるとか、安易な体言止めは避けるとか、一度書き上げてから余分な言葉を削ぎ落とすとか・・・。

このようにキリがないですが、一つ身につければ一歩上達できるはずです。つまり、小さいながらも成長実感を日々得やすいです。

最後に付け加えると、たくさん読んできた人は、書くのも上手になります。たくさん読みましょう。

他人の期待値を調整する力

相手が自分に何を期待するのか、どんな成果や行動を期待するのかを調整する力です。5W1Hなどを明確にする力、相手の期待が上がりすぎないようにする力、合意する力です。

期待値という言葉は、顧客満足度の理論などに登場します。顧客満足は、期待値と結果の差分ですよという考え方です。結果が期待値を上回れば、その幅が満足となります。下回れば、その幅が不満となります。

相手の期待値をよく理解しないままでいると、自分の努力が報われるかどうかは出たとこ勝負になります。不用意に相手の期待値を高めてしまうと、満足を得にくくなります。

プレゼンテーション力

大勢の前でスライドを映しながら話すだけがプレゼンではありません。チーム内外での「これどうですか」「これやっていいですか」「これやりました」といったコミュニケーションも、プレゼンの一部と言えるかもしれません。スケールの大小はあれど、誰しもが誰かに、いつも説明、提案、発表しています。

文書作成力と同様、簡単に語り尽くせるスキルではありませんし、世の中にはたくさんの書籍や記事があります。色々ある中で、特に意識したい点を挙げると、要点を簡潔に述べようという点です。

エンジニアって、正確に網羅的にという気持ちが強すぎて、全部述べちゃうんです。聞かれてもいないことを長々と話すことは避けましょう。メンバーの時間を浪費し、信頼残高を貯めにくいです。多くのプレゼンでは要点を絞ることの方がはるかに重要です。引き算の美学を知りましょう。引いた部分は、聞かれときに答えられればOKです。

最後に

コミュニケーションは、大きな会議やプレゼンの場、公式な文書の中だけではなく、エンジニアの毎日の何気ないところにも存在します。また、色々なスキルが相互に関連します。他人と接する部分のスキルなので、信頼残高への影響度合いも強いです。

身構えすぎる必要はないですが、以下のようなちょっとした場面でも、コミュニケーション力を磨いたり発揮したりできるはずです。

・毎日の短いミーティング
・Slackでのちょっとした報告
・GitHubのIssueやプルリクの説明文、コメント
・Gitのコミットメッセージ
・ソースコード中のコメント

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