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オススメ本「『地域に1歩飛びだそう!』ネットワーク活動でひろがる公務員ライフ」

『地域に1歩飛びだそう!』ネットワーク活動でひろがる公務員ライフ
著者 後藤好邦 (東北まちづくりオフサイトミーティング運営委員・山形市企画調整部企画調整課課長補佐)

 今回ご紹介するのは、自分が勤める山形市役所の先輩に当たる現役公務員が書いた本です。SNSの発達により、様々な立場の人が発信する様になり、以前なら目立つことを避け「遅れず、休まず、働かず」と言われた公務員の中からも、民間企業も驚くような成果をあげる人も現れ、自らその考え方や成果を発信することで世間に広く知られるようになりました。いわゆるスーパー公務員です。
 後藤氏もその一人だと考えて良いでしょう。山形市の職員として勤務しながら、仕事以外の時間を使って、たった3人から始めた東北の公務員の勉強会ネットワークを1000人以上がコミットするまちづくり団体に育て上げました。規模的に拡大するだけでなく、大震災で大きな被害を受けた東北の被災地とそれ以外の地域をつなぐ役割を果たし、2015年には早稲田大学マニュフェスト研究会が主催する日本最大規模の政策コンテストで、マニュフェスト大賞(市民の部)、最優秀復興支援・防災対策賞を受賞しています。
 今回発刊された著書は、月刊ガバナンスという雑誌に毎月連載されていたコラムをまとめたものです。内容は、上記のような様々な活動を行う後藤氏が、仕事や業務外のネットワーク活動の中で経験したことや、出会った幅広い分野の専門家が発した心に響く言葉を、その背景とともに伝えるものです。月刊ガバナンスは主に公務員向けの雑誌ですが、公務員の仕事が国民や住民に密接に関わる以上、その内容は一般の人にも大いに参考になるものです。また、タイトルにもありますがこの著書の中で後藤氏は、公務員に積極的に役所の外に飛び出すことを推奨しています。役所を飛び出し、住民の生活や民間企業、NPOなど様々な利害関係者と連携することが、良いまちをつくるために必要だと繰り返し述べています。
 公務員以外の方は、多くが役所の仕事に不満を抱き「どうして役所はこうなんだろう」と疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。また、もしかすると最近の役所は以前に比べると良くなっていると思ってくれている人もいるのではないでしょうか。この本は役所の中で行われている地道で、そして知られざる改善の歩みも教えてくれます。
 初めに後藤氏をいわゆるスーパー公務員の一人だと言いましたが、それは正確な表現ではないかもしれません。私が知る限り、決して後藤氏は自分をスーパー公務員だと思っていませんし、この本では、むしろスーパー公務員による大きな改革よりも自治体職員一人一人の地道な改善が重要だと書いています。また、自分自身の能力はネットワーク活動で著しく向上したとは思わないが「つながり」や「ネットワーク」を広げることで自分自身の可能性はすごく広がったとも書いています。
 想像を超える人口減少がもうすぐそこまで来ている地方にとって、これからはそこに住む全ての人を活かせなければ衰退してしまいます。それを避けるためには、公務員だけでなく、全ての人が自分の小さな世界から、広い『知域』に1歩飛び出し、何かを始めることです。何かを始めるときに気を付けること、活動を広げるために必要なことは、全てこの本に書かれています。
 日本一のスーパー“ネットワーク“公務員の言葉に耳を傾けて、未来の子どもたちに素晴らしい「ふるさと」を残す活動を一緒に始めてみませんか。

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