【MLB】今こそ2021年オフのFAに着目する
2020年の無観客開催で球団の収入が激減し、FA選手の契約がなかなか決まらない、もしくは低額での単年契約が続く今オフではあるが、今回は敢えて1年先である今シーズン終了後のFA動向について紹介したい。
2021年オフのFAに着目する理由
まず、なぜ今から1年後のFAについて注目するのか、から説明したい。
1)キャリアイヤーになる可能性
FAとなり、大型契約のチャンスがあるとなると、やはり選手のモチベーションは上がるのだろうか。FAとなる年で例年以上に活躍するケースはよくある。
ピッチャーの場合、最近ではG・コールやS・ストラスバーグがそう。
G・コール
毎年安定した成績を残していたものの、2019年に20-5、WHIPは0.89、212.2イニングを投げて326奪三振とモンスター化。そのオフにヤンキースと9年$324Mで契約。
S・ストラスバーグ
正確に言うとオプトアウトして大型の再契約を勝ち取った例。
2009年のドラフトで、全米1位で入団するも、デビュー早々にトミー・ジョン手術をするなど、初めの9年間で規定投球回数到達は3回。しかし、2019年は1年間ローテを守り、209イニングを投げ、18-6、251奪三振を記録。ワールドシリーズでの熱投もあり、そのオフにナショナルズと7年$245Mで契約。
野手でいえば、JD・マルティネス、Y・セスペデス。
JD・マルティネス
メジャーデビューしたアストロズでは戦力外になるも、タイガースでライトのレギュラーを獲得。FAイヤーの2017年にはシーズン途中でダイヤモンドバックスに移籍し、1試合4HRや月間16HRなど、62試合で29HR、OPS1.107と爆発。シーズンオフにレッドソックスと5年$110Mで契約。
Y・セスペデス
こちらもFAイヤーのトレード先で評価を挙げた例。
それまで1年だけレッドソックスにいたことはあるが、他はアスレチックス、タイガースという比較的地味な球団でプレーしていた。しかし、2015年にニューヨーク・メッツへのトレード後にはクラッチヒットを連発し、ニューヨーカーの心を掴む。オフにメッツと4年$110Mで契約。
ちなみに、キャンプで毎日違う高級車で登場したことも話題に。
このようにFA直前の選手は一気に才能を開花させ、大活躍するケースが多くあるのである。
2)シーズン中のトレード
球団としては、やはり主力選手にはずっと同球団でプレーしてもらいたいものである。
ただ、選手は活躍すればするほど市場価値は上がり、FAとなりビックマーケットの球団が競合となると大型契約の資金が用意できず、流出を余儀なくされることは多い。
その時、ただ放出するのではなく、なるべく出血が少なくなるようにとシーズン中にトレードで放出し、見返りに有望な若手を獲得するケースがあり、毎年話題になる。最近では、2017年途中にレンジャーズがダルビッシュ有をドジャースへ、翌2018年にはオリオールズがマニー・マチャドを同じくドジャースへトレードで放出した例が有名。
今年もプレイオフ進出が厳しいとなると、夏の期限を前にトレードの話題が多くなると予想される。
3)ショートストップが豊富
いちばんのポイントが本点。
メジャーリーグを代表するトップレベルのショートストップが同時に5人も初めてFAになるのである。
日本でいうと(時間を全く無視すると)、石井琢、カズオ、西岡、鳥谷、坂本が20代でそろってFAになるようなものである。
特にショートというポジションは代替が難しいポジションであり、球団の顔となりうる選手である。そのため、例えばマリナーズ、マーリンズ、タイガースなど、今期の成績次第では再建の仕上げとして今回FAとなるショートの選手と大型契約をする可能性がある。
※もちろん、プホルスの呪縛から解かれたエンゼルスが、またしても先発投手不足の課題を無視して獲得に動く可能性もある。
そのため、今回は2021年オフにFAとなるショートストップ5人を紹介したい。
コーリー・シーガー(LAA)
ドジャースにはMLB屈指のスーパースター(カーショウ、ベリンジャー、ベッツ)、人気者(ターナー、ヘルナンデス)がいるため地味な存在ではあったが、実力は確かであり、昨季のリーグチャンピオンシップとワールドシリーズのMVP。
デビューしてすぐに長打力を発揮し、その後トミー・ジョン手術を経験したものの、ショートのまま見事にカムバック。
しっかりと振り切るタイプであり、センターから逆方向(レフト)の打球の伸びもある。
ちなみに、マリナーズの兄、カイル・シーガーは守備力が高いが、コーリーは平均的。
なお、ドジャースはベッツと高額な長期契約を抱えているだけではなく、同じタイミングでカーショウがFA、まだFAまでに時間はあるがビューラー、ベリンジャーと長期契約をする場合にはかなりの高額になる可能性がある。
そのため、ドジャースがシーガーと契約を結ぶかどうか注目ポイントである。
トレバー・ストーリー(COL)
今回紹介する中で最もボクが好きな選手である。
2016年のデビュー戦でいきなりグレインキーから2HR。更にそのまま4戦連発。守備中のケガで97試合出場にとどまるも、その年は27HRを記録。
翌年は打率が.239、191三振とブンブン丸になると思いきや、その後は打率を.291、.294、.289と3割近くまで上げ、OPSも.900前後をキープしている。
確実性を向上させながら、パワーも維持。
打者天国コロラドでチートではあるけど、505フィートの一発。
そして守備も一級品なところも魅力である。
これは現地で観たプレー。
走力も高く守備範囲も広いため、チームへの貢献度は高い。
同じロッキーズのサード、アレナドがトレードで放出されたこともあり、チームは再建モード。今シーズン中にトレードでほかのチームへ移籍する可能性がある。
カルロス・コレア(HOU)
2012年にプエルトリカンとして初の全米1位で入団。
193cmの長身であり、フットワークが強く、広い守備範囲と強肩を活かした守備は見ごたえがある。
そしてコレアの特徴はセンターから逆方向への長打力である。
その能力は認められているものの、ケガが多い。
2015年のデビューから規定打席に到達した年は2年目の1度しかない。そのため、FAとなり、どの程度の大型契約になるかは、今シーズンどれだけ健康でいられるかだろう。
多くのファンが、シーズンを通してハイパフォーマンスをしたときに、どんな成績を残すのか楽しみにしている。
※サイン盗みのアストロズであり、バットフリップや言動から、アンチも多い。
ちなみに、ミニッツメイドパークでサインをもらったことがあり、その際に間近で見たのだけどとにかく肩幅が広い。
一般人の2倍はあった。
ハビアー・バエズ(CHC)
2014年のデビュー当時はスターリン・カストロやアディソン・ラッセルが内野にいてユーティリティとしての役割であったが、2016年にショートのレギュラーを獲得。
かなり積極的なバッターであり、四球が少なく出塁率は低い。また、トップに入るまでの動きも大きく、ひねりすぎる傾向にあるがスイングスピードが速く、フィールド全体に長打を打つことができる。
2018年に111打点で打点王を獲得。
異常に広い守備範囲も魅力だが、バエズの特徴はセカンドベース上でのタッチプレー。
目視では分からないレベルで、そのスピードだけではなくベースへの入り方も含めて、ビデオリプレイの普及でフォーカスされるバエズ特有の技術である。
ストーリーと同様、所属するカブスはダルビッシュ有、カイル・シュワバーを放出するなど再建モードであり、トレードで移籍する可能性が高い。
フランシスコ・リンドーア(NYM)
2021年、年明け早々にメッツへトレードで移籍。
メジャーリーガーとして小柄であり、デビュー当時は15HR程度のバッターと思われていたが、2017年から3年連続30HR以上を記録。
守備力も高く、20盗塁以上できる走力もあり、さらにスイッチヒッターであるうえ、ムードメーカーでもありかなり稀有な存在。
おそらく今回の5選手の中で最も人気を集めそうな選手であり、FAとなればハーパーやマチャドクラス($300M)の資金が必要になると予想される。トレードでロザリオやその他若手有望株を複数放出したメッツとしてはなんとか契約をまとめたいところである。