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2回目はラブレターで【#MarryMeを訳してみたら】

わたし、絵梨。現在26歳で大手食品メーカーに入社して4年が経過した。
仕事は順調でプライベートはと言うと・・・
彼氏というか婚約者はいる。
う~ん、いるにはいるのだけど、これからどうなるか見えないのが悩みだ。

大学のサークルで知り合った星也とは、なんとなくつき合い出してもう6年。
大学を卒業しても交際は続き、2年前にプロポーズされた。
「絵梨、結婚してくれ」
お台場のフレンチレストランの窓際特等席でデザートのミルククレープを
食べていた時。いつかそうなるんだなぁと思っていたから
迷わず「はい!」と頷いた。

それから両家に結婚の挨拶をしないとね、と話していた矢先に
星也のお父さんが脳梗塞で倒れた。
お父さんはリハビリを続けていたけれど回復の見込みがつかずに会社を退職。
星也は両親と妹の沙也ちゃんの4人家族でとても仲が良かったから、
寝たきりになったお父さんをヘルパーに依頼することもなく、
お母さんと星也、沙也ちゃんの3人で介護する日々が続いた。

平日は商社勤務で夜遅くまで残業で、
帰宅してからはお母さんと交代してお父さんの見守り。
かなり疲れ切っていて、私と会う回数は次第に減り
1か月に1回あればいいほどになった。

そんな状況だから、私もお父さんの介護を手伝おうかと聞いたら
「絵梨はまだ家族じゃないし、そんな負担かけたくない」と言うばかり。
それじゃぁ、私はどうすればいいのだろう。

星也が疲れるのを見ているのと、結婚できないことにあせりを感じ始め
この半年は悶々としていたが、このままだと突然怒りが爆発して
「それじゃぁ、わたしは別れる」と言い出してしまいそう。
そんなことで今までの関係を無駄にしたくない。
だから思い切って星也に聞いてみることにした。

「星也、お父さんの介護をしながら、一緒に生活しない?」
わたしからの逆プロポーズに星也は心底驚いたようで
「ちょっと考えさせて」と答えを保留した。
6年のつき合いで星也の性格はある程度わかっていたので
しばらく時間がかかるなと思っていたが、意外と早い3週間後に
星也から手紙が届いた。

ドキドキしながら封を開けると、几帳面な文字が便せん2枚にわたって綴られていた。

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絵梨へ

絵梨に手紙を書くのは初めてだね。
なんだか変な感じがするけれど、今回は証拠というか後に残しておきたいなと思って手紙にした。

この前、絵梨に「父さんの介護しながら、一緒に生活しない?」と言われて
本当にびっくりした。
まず、絵梨が父さんの病気を心配して手伝ってくれると言ってくれたことに
感謝している。そして俺たちの結婚が延び延びというか、停滞してしまい
本当に申し訳ない。

親父の介護に追われて将来について考える余裕がなかったというのは本当だけど、実際は結婚から逃げていたかもしれない。
介護をしてわかったけれど、家族って大変だよな。
今までは自分の進学、就職のことを考えていればよかったけれど、家族が病気、特に介護が必要になるとは想像がつかなかった。
だから、俺は結婚ってこういうことを背負うことなんだなぁと感じて始めた。

そのことを絵梨に話もせず、家族は大変だ、大変だとずっと思いこんで
2年が経ってしまったよ。
でも絵梨はそのことを責めずに俺のことを想ってくれた。
なんだかじーんときてあの時は言葉が出なかったな。

それから俺、考えたよ。そして母さんに言ったんだ。
「これからの父さんの介護はヘルパーに頼もう。父さんはもちろん大切だけど、俺たちはみんな自分たちの生活もあるから」
母さんはその言葉を待っていたかのように「そうだね、そうしよう」と賛成してくれたよ。

俺たち家族はみんなどこかで無理をしていたんだと思う。
介護はいつまで続くかわからない長期戦なのにな。

そのことを気づかせてくれた絵梨はやっぱりすごいなぁ。
本当は俺の態度にかなり頭にきてただろう、わかるよ。
でもその怒りをぶつけずに、どうしたら俺の反応があるかをちゃんと理解している。
もう俺以上に俺を知っているから、まいるよ(笑)

俺にはもったいない人だけど、あえて言わせてください。
1回目のプロポーズから2年が経ってしまったけれど、
これからどうぞよろしくお願いします。
結婚してください、というのは同じ言葉を2回言うようで情けないから
違う言葉で言いたい。
そして、一緒にいたいというぴったりのこの言葉を見つけた。

「Marry Me?」

ねぇ、俺の気持ち伝わった?

追伸:絵梨、この手紙をおばあちゃんになるまでちゃんと持っててな~。

                              星也

書き続ける楽しみを感じています、その想いが伝われば嬉しいです~