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9/16〜9/17 「おんなじことを何度もうたう」について

9月16〜17日に大阪の中崎町で短歌と音楽のイベント「おんなじことを何度もうたう」を開催します。チケット発売中ですのでよろしくお願いします!(※BitfanアプリとIDが必要です。(無料))

間違いなく私にとって人生で1番大切なイベントになると思います。何がそんなにすごいのかを書きます。

イベント概要は以下です。

「おんなじことを何度もうたう」は雲居ハルカさん、藤宮若菜さんの新作短歌を軸にした短歌と音楽のイベントです。展示、ワークショップ、ライブ・トークイベントを2日に渡り同一エリア(大阪 中崎町・堂山町)で行います。

私はトークの司会と牛隆佑さん・奈良絵里子さんとワークショップをします。私、牛さん、奈良さんは運営スタッフとしていろいろとお手伝いをします。

ここまでだと、私がこれまでやってきたいろんな短歌のイベントのひとつに見えるかもしれませんが、違うんです。

今回のイベントの軸である雲居ハルカさんは、私が人生で1番好きなアーティスト、ハルカトミユキのボーカルであり、私がはじめて読んだ歌集であり、短歌をはじめるきっかけになった『空中で平泳ぎ』の作者です。

2013年の冬、私は社会人としての自分がダメすぎて、毎日毎日死んだほうがマシと思いながら、それでも死んだらあかんなら狂ったほうがマシと思いながら体調を崩すことなく出社して、そのしんどさを誰にも言えない時期でした。
通勤中に読んでいた穂村弘さんのエッセイだけが救いで、でもそれももう読み尽くしそうなころ、「穂村弘と対談もしてて短歌をやってるミュージシャンの人がいるらしい」というふわっとした情報を本屋の店長から教えてもらいました。

たまたま行ったタワレコでデビュー直後のハルカトミユキの棚があって、そのなかからなんとなく1st e.p.「虚言者が夜明けを告げる。僕たちが、いつまでも黙っていると思うな。」を買いました。

1曲目のVanillaから完全にやられてしまいました。当時の自分は本当にずっとこういう気持ちでした。それまでも歌詞に共感することはあったけど、ここまで自分の気持ちとぴったり合ったことははじめてでした。

(歌詞抜粋して書こうと思ったけどこの曲はマジで通しで聴いてください。)

この人たちの曲は歌詞カード見ながら聴くべきやとすぐに気づいて、歌詞カードを見ながら最後の絶望ごっこまで夢中で聴きました。

どこかで聞いたような
美しく薄っぺらい
言葉を並べて陶酔してる
気持ちいいだろう。

絶望ごっこ

自分がずっと抱いてきた怒りも、諦めも、憤りも、ぜんぶ言葉にしてもらえた気がして、自分のなかのマイナスな感情を肯定してもらえたような気持ちになりました。

当時手に入るCDはすぐに全部買って、隔週のラジオを聴いて、さいたまのフェスではじめてライブを見て、好きになってからはじめての新譜だった3rd e.p.「そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。」を発売日の朝から買いに行って、仕事を休んで名古屋まで行ったライブ会場で、人生ではじめての歌集を買いました。

もともと穂村さんのエッセイは読んでたし、穂村弘さんのダ・ヴィンチの連載「短歌ください」も読んでいたのですが、解説なしで短歌を読めるとは思ってなかったです。そのくらい自分にとって短歌も歌集もハードルが高かったです。
だからこそ、歌集という形でハルカさんの言葉をちゃんと受け入れられるのか不安もありましたが、読んでみたら、しっかり刺さりました。

取り返しつかない染みを絨毯につけたい一度だめになりたい

真夜中のバニラアイスに匙をさす たまには心を騙してもいい

今ならば 角を曲がって考えるどんなに曲がっても曲がっても角

福島遥『空中で平泳ぎ』

短歌のなかに曲と共通するフレーズやワードが入っていることも多く、この歌詞ってこの短歌と繋がってのでは…?みたいなことを考えながら読めたことで、短歌に苦手意識がある私でも入りやすかったと思います。
歌詞と通じる部分が多いので、内容的な部分に共感していたのはもちろんですが、短歌ならではの表現にもたくさん出会えたと思います。

比較的ひまわりであるあの人を夏の歌集の冒頭に挿す

かいくんがおひるやすみにかいくんがおひるやすみに(誰かを犯す)

福島遥『空中で平泳ぎ』

「比較的」って名詞にくっつけていい言葉なんや、とか、こういう記号の使い方をしてもいいんや、という驚きは、自分の作風と繋がってる部分だと思っています。

そのあといくつか入門書を読んでから、短歌を始めました。人生で何回も言ってきたけど、ハルカさんがいなかったら私は短歌をはじめていません。

私は短歌のカードゲームを作ったりwebメディアを作ったり、短歌ワークショップをしています。その活動の理由は私がはじめて歌集を買った場所が本屋ではなくライブ会場だったからです。
自分が本屋以外の場所で短歌に出会ったから、そういう場所から短歌に出会える人が増えたらいいなと思って活動を続けてきました。

これまでハルカトミユキと出会わなかった世界線の自分のことを何度も考えたけど、想像できませんでした。
今の自分が好きなものはぜんぶハルカトミユキと繋がってます。私がよく褒められる行動力もハルカトミユキを見るために遠方のライブに行ってるうちに培ったものです。
私の人生を救ってくれて、今の私を創ってくれたのはハルカトミユキの音楽とハルカさんの短歌です。
長々書きました(というかこの倍書いてたけど削って今の量になりました)けど、そんな人がメインの短歌のイベントに関われるんですよ。これって本当にすごいですよね?!

今回のイベントのもうひとりの主役、藤宮若菜さんの歌集『まばたきで消えていく』(新鋭短歌シリーズ)の帯文はハルカさんが書いています。

遺書のようなラブレター
「さみしい」と「死にたい」と「愛してる」をいっぺんに感じた人
にしか、書けない歌がある
────ハルカ(ハルカトミユキ)

私はそのときに藤宮さんを知りました。
私は短歌をはじめた頃、いつか新鋭短歌シリーズから歌集を出してハルカさんに帯文を書いてもらいたいと思っていたので、藤宮さんの帯を見て「ハルカさんが歌集の帯、最高…!」と「誰か知らんけどおめでとう!」と「自分も新鋭短歌シリーズで歌集出したかったし、ハルカさんに帯書いてもらいたいと思ってたのになんで頑張れんかったんやろう……」がごちゃ混ぜでした。

ただ、藤宮さんのプロフィールに「2012年、福島遥の短歌に出会い本格的に作歌を始める。」と書いてあり、「この人はもしかして同志なのでは…?」という気持ちが強くなっていきました。

帯文が書かれた当時は、ちょうど東京でハルカさんが短歌の展示が決まっていたのですが、どうしても都合がつかなくて、「誰か行く人いたらどんなんやったか教えてください…」「歌集通販あるかわからんけど誰かお願いします…」みたいなことをTwitterで書いていたところ、藤宮さんから「歌集代講しましょうか?」というDMが来ました。しかも過去にハルカトミユキのライブ会場で話したことがあることも教えてもらいました。
「めっちゃいい人かい!というか私が忘れてただけで会ったことあったんかい!すみません!帯書いてもらえてほんまによかったですね!」と一瞬で手のひらを返して、おめでとうの気持ちMAXで藤宮さんの歌集を読みました。歌集めちゃくちゃよかったです。

酔ったとこみてみたかった 天国のおさけは酔わないからだめじゃん ね
だんだんと消えていくあざ きみがみたことないからだで花束を買う
生きる側の人間になる 夕暮れにながく使えるお鍋をえらぶ

藤宮若菜『まばたきで消えていく』

ハルカさんの短歌とかハルカトミユキの音楽の影響もしっかり感じながら、藤宮さん自身の色も強く感じましたし、どの目線やねんって感じですけど、「この人に短歌があってよかったな……」という気持ちになりました。

そもそも同じ音楽を聴いてきて、同じルーツで短歌をはじめた人が、ぜんぜん違う場所で短歌を詠んでいたことやその人の短歌がよかったことは自分にとって本当に嬉しかったし、自分ももう一度短歌に向き合おうと思えました。

藤宮さんがそのあと出した私家版歌集『春だったわたしたちへ』や溺れるさんとの共著『とうめいな暴力、ゆれる祈り』も全部読んでます。
特に『春だったわたしたちへ』はめちゃくちゃすごくて、こんなに全編「祈り」みたいな歌集ある?!って思いました。

藤宮さんと会ったときに「歌集の出版記念イベントってもうやりましたか?!まだならハルカさん呼んで、絶対やってください!
関西には牛隆佑さんという人がいて、新鋭短歌シリーズの歌集出版の記念イベントの多くを主催してたので、ノウハウも聞けるんでやるなら声かけてください!」みたいなことも言いました。

ハルカさんから短歌のイベントを考えていることをお聞きしたときに、これは藤宮さんに主役になってもらおうと思いました。私の夢を叶えてくれてありがとうございます。

(あと藤宮さんがハルカさんの歌集を紹介しているエッセイも読んでください。)

また、牛隆佑さんは先述のとおり、関西でたくさんの短歌のイベントを開催しています。
私がハルカさん以外ではじめて本気で好きになった歌集が岡野大嗣さんの『サイレンと犀』で、安福望さんの『食器と食パンとペン』との合同イベント「とととと展」を主催していたのが牛隆佑さんでした。
展示だけでなく、イベントではトークセッションや木下龍也さんのポエトリーリーディング、岡野さんが敬愛するミュージシャン長谷川健一さんのライブもあって、「いつかこういうイベントでハルカトミユキがライブして、自分は歌人として関われたら最高やな」と思っていました。

今回のイベントの目的はハルカさんのnoteに書いているとおり、
「既存のファンの方や、音楽ファン、文学ファン、そういう垣根を超えて、純粋に興味を持ってくれた人がふらっと参加できるような、そんなイベントがやりたい。
もっともっと純粋に言葉を楽しんで、短歌のおもしろさを感じられる、そういうオープンなイベント。」を目指したものです。

「とととと展」は自分にとってそういうイベントでした。短歌をはじめて1年でそういうイベントに出会えたことは自分の短歌人生で幸運なことのひとつだと思います。
また、牛さんと奈良絵里子さんが長年続けていた短歌ワークショップ「もしも短歌がつくれたら」は私がどれだけスランプのときでも短歌が作れるワークショップでした。(短歌同人誌ジングルにはこのワークショップで作った作品を載せています。)
このワークショップの紹介記事をハルカさんが読んでくださっていたので、ハルカさんの思うイベントを牛さんと奈良さんと一緒になら絶対に実現できると思いました。

イベントは2日間あって、両日ハルカさんと藤宮若菜さんの新作短歌の展示があります。
これに関してはハルカさんと藤宮さんにほぼお任せしているので、ふたりの新作を見れるのを単純に楽しみにしています。展示はチケットも入場料もいりません。

展示の短歌は作品集として販売します。イベント中は展示会場近くの葉ね文庫で販売します。イベントが終わっても通販など、なんらかの形でイベントに来れなかった皆さんの手に届くようにしたいと思っています。

葉ね文庫は私が一番好きな書店なので、イベント期間に関わらず行ってください。
奈良さんが書いた葉ね文庫の紹介記事も読んでください。

1日目は短歌のワークショップをします。(【追記】ワークショップはチケット完売しました。)
私と牛隆佑さんと奈良絵里子さんがファシリテーターをつとめます。短歌を作ったことない人向けのワークショップです。作ったことあっても興味あったら来てください。
しかもハルカさんと藤宮さんとミユキさんも参加してくれるんです。すごくないですか?!
ミユキさんは短歌初挑戦らしいです。
私がハルカトミユキを知ったころはハルカさんがメインで曲を作ってて、ミユキさんが毎週新曲を作曲してはボツになってるというツイートを見て、ミユキさんはどんな曲作るのかな〜と思って楽しみにしてたら「かたくてやわらかい」という主旋律が2つあるすごい曲で度肝を抜かれました。

それから「奇跡を祈ることはもうしない」「終わりのはじまり」など、ミユキさんは誰にも似てない、どのジャンルにも当てはまらないような曲を作りながら「Fairy Trash Tale」とか「白い幻」とかめちゃくちゃハルカトミユキっぽい曲も作るし、「17歳」みたいなきらきらした曲も作れる人です。パフォーマンスとかもいつも想像をこえてくるし、キーボードのことを何もわからん私でも毎回かっこいいなと思えるのがミユキさんです。

そんなミユキさんのはじめての短歌を?!この目で見れるんですか?!楽しみすぎる。
ハルカさんと藤宮さんも短歌のワークショップに参加するのははじめてらしいです。お客さん含めて全員で楽しめるように今からしっかり準備しています。
ワークショップはチケットの枠が非常に少ないのですが、ぜひ抽選申し込んでください。当たった人たちは一緒に楽しみましょう。

2日目はライブ・トークがあります。
ハルカトミユキのライブのあとに私が司会としてハルカさんと藤宮さんと短歌の話をします。
トークの前に短歌好きな人にもハルカトミユキのライブ見てもらえるんですよね?!ハルカトミユキのライブは生で見るのが一番良いですからね!今回のイベントでファンになった短歌の人はいつか一緒にライブいきましょう!
トークの内容はまだ決まってないんですけど、短歌を知らなくても、ハルカさんと藤宮さんのことをまだよく知らなくても楽しめる内容にしたいという思いで構成を考えています。
短歌のことを、ハルカさんと藤宮さんの作品のことを深く知ってもらえるような時間にしたいと思います。

チケット発売中ですので、ちょっとでも気になったら申し込んでください!
当日予定あわない方は配信で見てください!

イベント発足の経緯はハルカさんのnoteを見てください。2月からこのイベントははじまっています。

2月に声をかけていただいた日から、正直ずっと夢だと思ってます。

短歌のカードゲームを作ったのも、そのゲームを出版できたのも、ワークショップデザイナーの資格を取ったのも、TANKANESSを作ったのも、いろんな短歌の人たちに出会えたのもぜんぶハルカトミユキの音楽と、ハルカさんの短歌のおかげです。

私の短歌人生はハルカトミユキがくれた命だと思っているので、私が使えるすべての力を使って良いイベントにしたいと思います。

よろしくお願いします。


サポートいただいた分はTANKANESSの運営費など、全て短歌のために使用します。サポートいただけると本当に助かります。