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57577ゴーシチゴーシチシチ きらきら青春編を発売します!

2021年7月に幻冬舎から発売した短歌のカードゲーム、「57577(ゴーシチゴーシチ)」の第2弾が2023年2月22日発売されます!
第2弾にふさわしく「2」がいっぱいで覚えやすい発売日ですね!2023年に突入していることに驚きを隠せません。

タイトルは57577 ゴーシチゴーシチシチ きらきら青春編です!
今回も原案、ゲームデザインをつとめています。

原案というのは、私が同人ゲームとして企画制作した「短歌カードゲーム ミソヒトサジ」シリーズがこのゲームの原作だからです。ちなみに「ミソヒトサジ〈定食〉」はまだまだ販売中なのでこちらもよろしくお願いします!

57577の話に戻りまして、今回は「きらきら青春編」です。

「きらきら」も「青春」も自分からかなり遠い言葉のため、「きらきら青春編…この私が…?!」という感じですが、私の思う精一杯のきらきら青春を詰め込みました。

きらきら青春編というタイトルですが、学校生活に関するワードだけにはしたくなかったし(学校にいい思い出がない人もいるし、学校に行けなかった人もいるから)、恋愛だけにもしたくなくて(恋愛しない人も恋愛したくない人もいるから)、いろんな側面から「きらきら青春」を考えました。

「青春」という言葉で私が最初に思い出したのが、syrup16gの「さくら」の歌詞でした。

これはこれで青春映画だったよ 俺たちの
さくら/syrup16g

そうか、「これはこれで」でいいんだよな、と思いました。

もちろん商業的に出版されるものですし、たくさんの方に買ってもらうことを考えて、ある程度「王道」っぽいきらきら要素や青春要素は入れています。
でも、ゲームを遊んだ人が「これはこれで青春」だと思えるものを提示するために、王道以外にもいろんなパターンの言葉を選びたいと思いました。

そうえば、きらきらからも青春からも遠い私の人生でも数少ない青春と思えた瞬間はありました。

鳥貴族に開店前から待ち構えて一番最初に店に入るときとか、
29歳になってから先輩とお揃いのジャケットを買ったときとか、
遠征のために乗った深夜バスで着いたパーキングエリアで1人でめちゃくちゃきれいな朝焼けを見た日とか、
大勢で串家物語に行って、行きのエレベーターはみんなで乗れたのに、帰りのエレベーターでは重量オーバーになって「ウチら全員で人間1人分のご飯食べてるってこと?!」って気づいてみんなで笑ったこととか、
いつもはZoomで夜からやってる人狼ゲームを夕方からやってみたけど「これご飯食べてからもう一回やりませんか?」って言って夜からもう一回Zoomで集まったこととか、
仕事帰りに1人で新幹線に乗って名古屋までライブを見に行って、歌集を買って帰った日のこととか。

考えてみると大人になってからも、友達とでも家族とでも、ひとりでも、きらきらした青春の瞬間はあると思います。
前回に引き続き、基本的には友達や家族で盛り上がれるパーティーゲームという立ち位置です。

その作者の立場でこんなことを言うのも変かもしれませんが、ひとりでも楽しめるし、きらきら青春編のなかでめちゃくちゃ暗い歌を目指すのも良いと思います。
カードを選んで、並べ替えて、言葉の組み合わせを見て、それが楽しかったらその瞬間を青春と呼べばいいんじゃないでしょうか。

私は私で青春を作るし、あなたはあなたで青春を作ってください。

57577シリーズの原作の「ミソヒトサジ」シリーズはもともと短歌の楽しさを広めるためにどうすれば良いかを考えて作ったゲームです。

とはいえ、ゲームとしては盛り上がったけど別に短歌に興味を持たない人だってたくさんいるだろうし…というかむしろそういう人がほとんどだと思います。

でもいつか、このゲームで遊んだ人が、何かのタイミングでつまずいたときに、短歌が救いになるかもしれないといつも思っています。それは「ミソヒトサジ」の頃からずっと一緒です。

何度も書いている話ですが、私がはじめて歌集を買ったのはライブハウスでした。ハルカトミユキというミュージシャンのライブ会場で買った歌集です。

私は10代のころ、短歌というか詩歌全般のことが嫌いでした。
宿題で川柳を作れと言われたときに何を書いてどう作っていいかわからなくて、はじめて宿題をサボって注意されました。

あれが川柳じゃなくて俳句でも短歌でも詩でも絶対に作れませんでした。

短歌に苦手意識があるなかで、最初に心が動いたのは雑誌「ダ・ヴィンチ」で穂村弘さんが選をしている「短歌ください」コーナーでした。でも短歌が面白いんじゃなくて、このコーナーだけに面白い短歌が集まってるんだろうと勝手に思っていました。

数年後に穂村弘さんのエッセイにハマったけど、「こんなにエッセイがおもしろいのに歌集を読んでぜんぜんわからんかったらエッセイまで嫌いになるのでは…」と思い、歌集を避けながらエッセイだけを読んでトークイベントに行っていました。

穂村弘さんのファンで短歌もやってるミュージシャンがいる、という情報でハルカトミユキに辿り着いて、ハルカトミユキにハマって夢中になりました。

穂村弘さんのエッセイを読み尽くして、もう読めるものがなくなったときに、短歌の入門書を読むしかなくて、入門書を読みました。おもしろかったけど、読み物としておもしろいだけで、入門する気はありませんでした。

そしてようやく、ハルカトミユキのライブ会場で歌集を買う日です。その前から歌集は物販にあったけど、「こんなにハルカトミユキの歌が好きなのにハルカさんの歌集を読んでぜんぜんわからんかったら…」と、穂村さんに感じた懸念と同じ気持ちを抱いて歌集を買いませんでした。

でも、帰りの新幹線で読む本がなくて、とりあえず歌集を買いました。それではじめて、「短歌っておもしろいんや」と思いました。

何回書いても最初に短歌で心が動いてからここまで長すぎるやろと思います。

そのくらい自分のなかで「短歌」に対する苦手意識は大きく、厚い壁でした。

厚くて高い壁のいろんな場所にいろんな人が用意した短歌のドアがあって、それをいくつか開けて、覗き見しては閉めていました。

長い時間をかけてようやく短歌の世界に踏み込むことができました。

だから、いまゴーシチゴーシチシチを遊んだ人がすぐに短歌を始めなくても良いです。ゴーシチゴーシチシチもひとつの短歌のドアです。よかったら開けて中を覗いてみてください。

ゲームの作者は短歌と違ってあまり注目を浴びることがありません。ゴーシチゴーシチシチを遊んでくれた方の多くはきっとこのnoteにはたどり着かないでしょう。ほとんどの人は、私の名前も知らないし、そもそもゲームに「作者」という存在がいることを知らないまま過ごすでしょう。私自身も自分がゲームを作り始めるまではそうでした。

逆にいえば作者を知らなくても手に取ってもらえるのがゲームという形の強みです。

出版社からゲームを出すことで、自分の手の届かない場所まで流通して、自分の知らないお店の人にプッシュしてもらえて、自分だけじゃ届かなかった人に遊んでもらうことができます。本当にありがたいことです。

前作は天野慶さんとの共作でしたが、今回はゲームデザイン(主にワードの選定)は私ひとりになりました(天野慶さんは「ルール協力」として後方支援してくださいました)。

クレジット上は私ひとりですが、今回はたくさんの歌人の方や友達にテストプレイに付き合ってもらいました。いろんな方にアドバイスやご意見をいただいたおかげで、自分でも満足のいく作品になりました。

少しでもこのゲームに関わってくださった皆さま、本当にありがとうございました。

発売したらあとは精一杯告知して、ひとりでも多くの人に遊んでもらえることを願うだけです。

改めまして幻冬舎から発売する「57577(ゴーシチゴーシチ)きらきら青春編」をよろしくお願いします!!!

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