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なべとびすこ短歌連作

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なべとびすこが作った短歌の連作をまとめています。
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記事一覧

第6回笹井宏之賞最終選考候補作 短歌連作50首「flow」

「第六回笹井宏之賞 最終選考候補作」に残りました。 『ねむらない樹 vol.11』に 10首掲載されています。 * flow 傘をさす それでもぶつかる雨粒のひとつひとつを睨みつけてた 駅前のベンチんとこで待ち合わせ 成功した人から席を立つ いま足を伸ばせば蹴れる鳩 僕はまだ犯罪をしたことがない ガタガタのチェーンで走る少年の無事を祈って買うコカコーラ 手を振った っていうか挙げたら君も手を挙げる ハイタッチとかはせずに 君が火をつけると風は白くなり海に向かっ

短歌連作「青を辿る」

*1月に和歌の浦に短歌ワークショップのサポートに行ったときに作った連作です。 「青を辿る」  なべとびすこ 鼻炎薬飲んだらいつもより眠い知らない町のココカラファイン 鳥を撮るためにズームをするうちに鳥はとっくにいなくなってた 釣り堀の足場は不安定だから何度も見てる大好きな靴 椅子たちが自販機前で話してる首相が襲撃された港で 曇天は雨をこぼさず灯台に登れば僕も誰かのしるし 殿様はすごくて祭のためだけに橋かけたって のど飴渡す <神域は撮影禁止>"写真には写らない

たにゆめ杯4応募作品 短歌連作「フェイクグリーン」

親に手を振らされていた遊園地 将来の夢なんてなかった もしものも、なすびのび、もうずっとめくり損ねているカレンダー 夜だから目を閉じるだけ眠いから目を閉じたこと最近ないな 痣の理由は嘘でもよくてその色がちゃんと薄れるかを気にしてた あくまでも話せる範囲でだけ話し氷に埋もれていくさくらんぼ 来月も会いましょうって手を振って口約束を約束にする 月を見てただの丸だと思ってる隠しておきたいことばっかだな 心配してたってまた言えんかったドライアイスを水に沈める フェイク

短歌連作「セットリスト」

*2022.5.22「Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス」京セラドーム大阪に寄せて 会場に一番近いジャンカラでいろんな人の声のミスチル 五月って思えないほど暑いけど八月よりは涼しい昼だ 高校でBUMPの話を一度したクラスメイトにかけられる声 後輩が一曲目から泣いていてタイトルの意味にはじめて気付く 歓声のないinnocent worldで大サビ前に崩れるリズム 間違えたことを間違えたと言って笑って次の曲に向か

7SEEDS短歌連作「月を避けずに」

大好きな漫画『7SEEDS』が3月31日までLINEマンガで無料です。7SEEDSは現在月9で放送中のドラマ『ミステリと言う勿れ』の原作者、田村由美先生の名作漫画です。 10巻まで無料期間をいいことに友人におすすめ(※ゴリ押し)しまくり、私も再読したくさんの方と感想を語り合うことに多大なる時間を費やしました。 同時期に、オンライン講座「ぎゅぎゅっと! 推しと短歌」(講師は榊原紘さん)を受講していました。 せっかくなので7SEEDSで一番好きなキャラクターで連作を作ろう!と思い

サイゼリヤ短歌連作「Youthtopia」

ミラノ風ドリアとドリンクバーだけでよかった頃を経てからの今日 ガストでもラパでもサイゼでも良いわとか言ってたな サイゼが良いな 運勢は最下位でもまあいけるやろ辛味チキンは辛くないから サイゼリヤ 泣いていた日の翌日にウチのために空いていた席 今回のまちがいさがしもムズそうで「Kids Menu」の文字からチェック 「とりあえず青豆頼んどいて」ってLINE来たから頼みつつ食お マッシュルームスープ見た目は泥水でも美味しいから世界の正解だ 好きだったりするのよ期間限

ポケモンダイパリメイク短歌連作「レポートを書く」

ポケットモンスターダイヤモンドパールを購入したので、貝澤駿一さんと郡司和斗さんと歌会をしました。 貝澤さんがTANKANESSに歌会レポートを上げてくださっているので読んでくださいね。 記事では最初のジム(クロガネジム)までの短歌を詠みましたが、そのあとも私はポケモン短歌を詠み続けていました。 ようやく殿堂入りを果たしたので、35首の連作にしました。 連作「レポートを書く」 いつだって かがくのちからってすげー! ね、関東(カントー)の友達とZoomする ライバルじゃ

連作「空を歩く」

※なべとびすこが制作した過去の短歌連作を少しずつnoteに掲載していきます。 今回は、千原こはぎさん企画の「獅子座有志による獅子座のための獅子座な短歌集「獅子座同盟6」」に掲載した連作です。 「空を歩く」 棒の足4本君と引きずって梅田の日曜は人人人人 梅田にはスタバがめっちゃあるつまり梅田は夜空、夜空で話す 星型の星はどこにも無いんだし君は君型にこだわらないで 結婚の知らせが続続届く年齢(とし)たった一人を君も見つけた UNIQLOもマクドもサイゼリヤも君と行った

連作「スペアマン」

※なべとびすこが制作した過去の短歌連作を少しずつnoteに掲載していきます。 今回は、短歌連作サークル『あみもの』2019年12月号に掲載した連作です。 「スペアマン」 客のフリするのも「サクラ」タダで見る花も僕らはありがたがれる B組に主役の教師がいたとして僕はD組あたりの生徒 このモブの女生徒もそれなりに役作りとかしてんだろうな 居るだけで充分だって言ってくれ。メガネをかけて目を閉じてみる 天国に行ってしまった君がいない集合写真に写る僕たち 拍手音。ひとつ聴

連作「清水の舞台の横を通る」

※なべとびすこが制作した過去の短歌連作を少しずつnoteに掲載していきます。 今回は、短歌連作サークル『あみもの』2020年1月号に掲載した連作です。 「清水の舞台の横を通る」 大吉じゃなくても平気 末吉も努力でカバーできる君なら おみくじの結果で笑いあったからこの1年はきっと良くなる 神さまは君を幸せにしてほしい今年の僕は自力でやるんで 誠実に慎重にでも前を見る力が僕ら3人にある 祈ったよ 僕らはちゃんと祈ったから推進力でゆっくり進む 清水の舞台を飛ばなくても

連作「真ん中にいる」

※なべとびすこが制作した過去の短歌連作を少しずつnoteに掲載していきます。 今回は2018年に九条しょーこさんが発行した同人誌、同人誌『Crescent Chocolat vol.2』に掲載した「平成」をテーマにした連作です。 「真ん中にいる」 元号をはじめて跨ぐ元号を跨げず死んだ人を数えて 「あの頃は良かった」なんて平成もノスタルジーの文脈へ行く 新しい時代の最初の1日が雨だとしても延長はない 平成の幕を下ろして「  」の幕が上がるよ主役は変わる 僕たちは最

連作「こっちの世界が正解」

※なべとびすこが制作した過去の短歌連作を少しずつnoteに掲載していきます。 今回は2018年に小泉夜雨さん、笠原楓奏さんが企画したネットプリント企画、ゆとり教育世代短歌アンソロジー「ゆとったけっかがこれだよ!」に掲載した連作です。 「こっちの世界が正解」 あ、ビール無理です。えっとジンバックあります?それでお願いします。 とりあえずビールなわけがないでしょう一杯目から楽しまないと いやビールでもいいですよ本当にビールが一番好きな人なら すみません、個人プレーで梅茶

連作「飲まずにやってられるよ」

※なべとびすこが制作した過去の短歌連作を少しずつnoteに掲載していきます。 今回は2019年「関西短歌な忘年会」開催記念として千原こはぎさんが制作したフリーペーパー「うたげ」に掲載した連作です。 「飲まずにやってられるよ」 腹を割るための酒なら要らなくて話せる場所としての居酒屋 失恋をしたって君は飲まないし僕も酔わない火曜のトリキ なぐさめてくれたもんなあ、就活のときは。今度は役に立ちたい 「とりあえず」とかで決めない僕たちが入店直後に頼む釜飯 オールフリー/ミ

連作「ふるさとと呼ぶには騒がしすぎる」

※なべとびすこが制作した過去の短歌連作を少しずつnoteに掲載していきます。 今回は私家版歌集『ふるさとと呼ぶには騒がしすぎる』に収録した表題作を掲載します。 縦書きが好みの方は画像を、横書きが好みの方は本文をお読みください。 ふるさとと呼ぶには騒がしすぎる 自転車のタイヤを空気でパンパンにしてからずっと町が揺れてる ふるさとを離れた人がふるさとを語るテレビをふるさとで見る 埋め立てて作られた町かつて海だったと知らずに猫も雀も 学年で最初にメガネをかけた日に見えな