短歌連作「エラーコード」
朝九時の免許更新待機列 夏に生まれた僕たちの夏
窓口でお金払えばStay Gold悲惨な事故が教材になる
陸橋の底ぬけそうだ、ここからは無料で青空が見放題
誕生日性別血液型名前ぜんぶ自分に似合ってないな
走ったら乗れてたはずの急行を見送ってInstagram(インスタ)で見る猫
十九時まで店員だった店員が私服になって帰っていった
酔った先輩の自論で喉に傷がつくそれでも黙るよりマシだった
直前まで笑ってたのは関係ないグラスの水滴にも影がある
居酒屋のトイレに格言 しょうもない言葉で変われたらよかったな
生きるって決めずに生きていける人の言葉は僕たちには届かない
反射した月を見て本体を探す行かなくていい飲み会だった
▶ ︎(再生)を押せばいつでも聴ける曲 ガラスの杖で歩いた夜道
不在票三通 背の小さい僕の訃報はあなたに届くだろうか
泣いたこと誰にも言わないままでいて除湿機だけを共犯にする
一匹だけやたらうるさい蝉がいて八日と言わずに死んでほしいよ
あの人に教えてもらったリフだった 二度と会わなくても別にいい
「人命にかかわる仕事はロボットにやらせましょう」と伝える仕事
もうとっくに僕の仕事はAIもできると社長は気づいていない
センサーで不具合品を検知する機械がなければ合格のねじ
つきたくて嘘ついてきたわけじゃない世界に嘘をつかされてきた
終業のチャイムが鳴れば早足で行け駅のトイレでTシャツになる
地下鉄の空気はエスカレーターに乗って真夏の風に変わった
火を掴むように見る夢 十八時ライブハウスの列に並んで
人生をイチからなぞりながら立つ全てを変えたイントロがある
間違ったコードでそのまま弾き切ってあなたは私を許してくれる
立ちっぱなしの足を支えたスニーカー今だけ地面が平面になる
ライブ中に降ってライブ中に止んだ雨 水たまりを大股で跳び越えた
夏と冬だけの日本になるだろう金ぴかの免許を返すころ
エラーって言われた耳で聴いた曲 この足で行ける駅までは行く
あなたの猫にあなたのライブを見てほしい 晴れ間にジャンプ傘をひろげて
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