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入社1年目の女子がかっこよすぎて、人生変えられた話

 「カリスマ性すごいなぁ」と思うことってなかなか無いと思うのですが、最近私は『これがカリスマか!』と思える人に出会うことが出来ました。
 
 それが去年の春に入社したばかりの”入社1年目の女性”。
 今回はその人について書き記しておきたいと思います。 


1.『年齢なんて関係ない』

私は2022年2月、今のテレビ局に転職した。
変な時期に入社したうえ、テレビ局は新卒入社の社員が多く中途組が少ないため、上司も自分をどう扱ってよいか分からない雰囲気。
自分の人見知りと新型コロナが流行っていて歓迎会が開かれなかったことなども合わさり、私は会社内で気楽に話せる人がなかなかできずにいた。

その3ヶ月後、彼女は会社にやってきた。
大学卒業したての入社1年目。
彼女のすごさは一日目から発揮されていた。
まず、積極的に誰とでも話に行く。
歳の近い先輩はもちろん、自分より一回りも二回りも歳上の上司まで。
しかも、時折タメ口を混ぜていてるのだが、不快感がない。彼女は、テレビ局の他にお笑い芸人が所属する芸能事務所からも内定をもらっていたらしく、笑いのセンスも抜群だった。

1年目という立場ながら堂々としている彼女の根本にあるのは、『友達になるのに、年齢とか役職って関係なくない?』という考えだった。
彼女は、学生時代から多くの人に出会い、国籍や肩書き、年齢、性別など関係なく多くの友達を築いていた。
その過程で気づいたのが、『すごい人は肩書きなど気にせず、全員と対等に接している』ということだったらしい。

彼女が入社するまで、社内で雑談してはいけない空気があったが、それを彼女の明るさがぶち壊してくれた。
その後、私が社内で話す相手を作ることが出来たのは、間違いなく彼女のおかげだろう。

2.『そこに愛はあるんか・・・?』

「コミュ力お化け」として若手から羨望の眼差しが向けられる一方、一部の人からは心無い声も聞かれた。
「1年目なのに調子に乗ってる。」
「1年目のくせに生意気。」
テレビ局は、”ザ・年功序列”。
なかでもディレクターが所属する制作系の部署は、年次が高い人ほど体育会系っぽい考えを持つ傾向が強く、上下関係を重視したがる。

明るい性格と抜群のお笑いセンスでみんなを笑わせていた彼女は、いつの間にか、そうした悪い大人たちの「いじられ役」になっていた。
自分たちの方が年齢も立場も上なんだから、少しくらいの失礼は飲み込めよ、というタイプのいじりも多かった。

彼女の体型をいじってみたり、長く生きただけで培った知識量で「そんなことも知らないの?」とマウントをとってみたり。
下ネタを言ったり、ボディタッチをしたり。
昭和育ちのオジさんオバさんたちに悪気はなかったかもしれない。
見ようによっては、可愛がられているとも捉えられたかもしれない。
しかし、彼女の精神は着実にすり減っていた。

彼女はいじられ役が嫌いな訳では無かった。むしろ友達といる時は、率先的にボケて周りに突っ込まれることも多かったし、よく自虐ネタもしていた。

彼女が言っていたのは、『普段からいじられ役の人をリスペクトしているか。いじりに愛があるのか?』で傷つくか傷つかないかが決まるということだった。

ある日、彼女と共に音楽番組の制作に関わった時のこと。
入社5年目の女性ディレクターがおじさん達から、彼女と同様の扱いを受けていた。
ただ、5年間も同じような扱いを受けて感性が麻痺してしまったのか、嫌がる様子はない。
顔芸をさせられたり、下ネタをふられたりしていたが、それをしっかり笑いに変えていく…
その空気にほだされて私もおじさん達と一緒に笑ってしまっていた。

そのとき入社1年目の彼女に目をやると、彼女は一切笑っていなかった。
本気で面白くなかったのだろうし、ここで笑ったらダメだと思ったのだろう。
その場にいた人のなかで、唯一笑っていなかった。彼女だけが、女性ディレクターの気持ちを理解できていた。

彼女を見て、一緒になって笑ってしまった自分が恥ずかしくなった。

後日、その女性ディレクターは、彼女に連絡を取り自分の気持ちを打ち明けていた。
やはり、上司に嫌われないよう立ち振る舞っていただけで、本当は傷ついているとのことだった。
笑っていない彼女を見たことで、自分の本当の気持ちに気付かされたらしい。もう上司の機嫌を取るために自分を傷つけるのは辞めると決意していた。

3.『それを"大人"って言わないよ』

彼女は、私の中の当たり前が当たり前ではないことも教えてくれた。
そのひとつが「社会人だから仕方ない」などと諦めることの愚かさだった。

私たちテレビマンは、残業するのが当たり前だと育てられてきた。
働き方改革が進み、昔に比べれば残業は激減してるのだろうが、それでも放送前の編集期間は1ヶ月以上連勤になることも珍しくない。

入社前からテレビディレクターの忙しさについてはネットで調べて知っていたし、ましてや会社員である以上、一人前になるまでは上司の指示に歯向かうなんて考えらない。多くの人が仕方なく残業をして番組制作に向き合っていた。

そんななか彼女は最初の担当番組の業務を終えた後、上司に勤務体制がいかに異常かを訴えていた。

「夜中の3時まで仕事をしなければいけないなんておかしい」
「管理職が自分の残業時間を把握していないなんておかしい」

しかし、彼女の熱弁むなしく、上司は「社会人なんだから我慢も必要。実力ない1年目が色々言っても無駄だよ。」といった反応だった。

もちろん彼女は納得しておらず、『「社会人なんだから」って言葉で言いくるめるの本当おかしい・・』と愚痴をこぼしていた。

ある日、ディレクター仲間で食事をしていた際のこと。
入社3年目の男性ディレクターが「俺、芸人になりたいんだよね」と切り出した。
大学時代に漫才を作って人前で披露した経験もあるらしく、冗談ではなさそうだった。

それを聞いた皆は「いいじゃん!」と言いつつも、内心では「現実的には厳しいよね・・・」と感じていた。

それは彼も同様で「でも、ディレクターもそこそこ楽しいしなあ。いつまでも夢を追ってないで”大人”になるのも大事だよね・・・」などと現実的なことも呟いていた。
すると、すかさず彼女は『それを大人っては言わないよ』とたしなめた。
そして『本当にやりたいことがあるなら、絶対にやった方がいいよ。』と全力で後押しし出したのだ。

大人だから、安定して収入を得なくてはならない。
社会人だから、嫌なことも我慢しなければならない。
会社員だから、仕事のためにプライベートを犠牲にしなくてはならない。

そんなこと誰が決めたんだろう。
彼女の言葉を聞いたとき、いつの間にか自分の脳内がつまらない大人たちによって書き換えられていたことに気づいた。
彼女の考えは、まさに自分を原点に帰してくれた。

果たして今の日本を生きる“大人”は幸せなのか・・・?

そう考えた時、多くの”大人”が自分のなりたい”大人”と違うことに気づかされた。

4.『勝手に"判断"するな』

 彼女は、他人のことを分かってるかのような発言をする人が嫌いだった。

  「君は才能あるから、3年経てば化けるよ」
  「君みたいなタイプは、エンタメ系が向いてるよ」
  「あの人とは、話合わないと思うよ」

  その度に彼女は『勝手に”判断”しないで欲しい』と言っていた。
  自分のことを表面上の付き合いで理解した気になられるのも嫌なのだろうし、他人を分かったような気になっている人が嫌いなのだった。

   たしかに、他人が何を考えているかなんて分かりっこないわけで、自分の見たいように他人を見て判断を下すしかない。

 それを聞いてから、私も「勝手に人のことを判断してしまっていないだろうか」と考えることが増えた。

 『あの人は、末っ子だから甘やかされて育った』
 『あの人はアイドル好きだから、面食い』
 
 果たして本当にそうだろうか。
 人を判断するというのは、簡単なことではない。
 だからこそ、もしその人に判断を告げるのであれば、どうしてそうした判断をしたのか丁寧に説明してあげないといけない。
 
 ディレクターの仕事は、分かりやすく伝えるために、被写体の気持ちを勝手にストーリーに落とし込むことも多い。改めて、勝手に判断してはいけないなと考えさせられた。

5.『なんであと10年生きられると思うの?』

 ある日、私が投資の話をしていた時のこと。
 内容は「最近、サイドFIREっていう考えが流行っている。10年間くらいは我慢して仕事をしながら投資をして、ある程度の資産を築いてから会社を辞めて好きな仕事をするらしいよ」といったものだった。
  
 みんなが「10年耐えるか!」と息巻く中、それを聞いた彼女は『なんであと10年も生きられると思えるんだろう』と驚いていた。

 ”人生100年時代”と言われて久しいはずだが、彼女の根底には『人はいつ死ぬか分からない』という考えがあった。

 だから彼女は、『人生がもったいない』ともよく言っていた。
 常に自分がやりたいこと、やってみたいことに貪欲だった。
 仕事の後には、習い事を何個も入れるような人だった。

 FIREに憧れを抱いていた私にとって、彼女の一言は衝撃だった。
 たしかに、やりたくないことをどうして10年間も我慢しなければならないのか。  
 どう考えてもやりたいことをやる10年間の方が幸せじゃないか。
 いま死んだとして、自分は後悔しないと言い切れるか。
 
 大学時代は「やらない後悔より、やる後悔」をモットーにしてきたはずなのに、会社員になってから楽な方へ逃げるのが癖になってしまった。
 なんだか自分の中から抜け落ちていた感覚を取り戻した気がした。

さいごに・・・

 正直、彼女が我々に及ぼした影響は、こんなものではないです。
 もっともっと多くのことに気づかせてくれました。 
 私の周りには、彼女を”恩人”だと思っている人ばかりです。
 
 私は、彼女に出会ってから、自分が本当に何がやりたいのかを突き詰めて考えるようになりました。
 そして、今では会社に採用されやすい提案ではなく、自分がやりたい提案を書くことにしています。

 その他にも、こっそり挑戦し始めたこともあります。
 今はまだ苦しいことも多いですが、人生進んでいる気がしています。
 
 ほんと彼女についてはまだまだ書き足りないので、また何かの機会に書こうかなと思います。
 

 














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