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認知症の方とのコミュニケーション方法(バリデーション)

バリデーションとは、確認や検証を表す言葉で、ビジネスの場では、プロセスの妥当性を検証する意味で使われています。

しかし医療の現場でバリデーションというと、認知症の方とのコミュニケーション方法のことをいいます。

今回は、コミュニケーション方法である「バリデーション」について書かせて頂きます。

バリデーションの目的

認知症の方は、自分の思いや行動、伝えたいことを言葉で表現することが困難で、周りや社会から孤立することがあります。

バリデーションは認知症の方の感情を表出させ、その感情に共感し、受け止めることで、尊厳の回復と孤立の防止を目的としています。

バリデーションの効果

認知症の方への効果

  • ストレスや不安の軽減

  • BPSD(行動、心理状態)の緩和

  • 自尊心、生存意欲の回復

  • 他者交流

認知症の方に関わる人たちへの効果

  • 言動や感情の理解ができる

  • フラストレーションの緩和

  • 信頼関係の構築

  • 仕事で関わっている人は自信につながる

バリデーションのテクニック

  • センタリング
    認知症の方に関わる前に自分の精神を整えておく。
    ヘソの数センチ下に意識を向けて、足先から頭まで一本の線で繋がっているイメージを作り、ゆっくりと呼吸します。

  • オープンクエスチョン
    「はい」「いいえ」で答えられる質問ではなく、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのように」のような質問を使うことで、相手をより深く理解します。

  • リフレージング
    相手の言葉を繰り返して確認すること。
    「お茶がほしい」と言われた場合、「お茶がほしいんですね。」と繰り返すことで、認識していることを伝えることができ、安心感を与えます。

  • 極端な表現を使う
    極端なケースを聞くことで、感情を表出させる。
    「頭がいたい」と言われた場合、「今までの人生で1番頭がいたいのですか?」と聞き返す。

  • 反対のことをイメージさせる
    反対のことを質問することで、過去の対処法を思い出させたり、ネガティブな感情をポジティブに変えたりすることができます。
    「物が盗まれた」といった場合、「盗まれていないものは何ですか?」と聞き返す。

  • レミニシング
    会話を過去とつなげることで、思い出話をする。過去の経験を思い出すことで、過去の解決方法や考え方を取り戻す。
    「夜眠れない」と言う場合、「若い頃、眠れないことはありましたか?」と聞き返す。

  • あいまいな表現を使う
    相手の言っていることがわからない場合、無理に聞き返すと不快感を与えてしまいます。
    あいまいな表現の「それ」「あの人」などを用いて、会話を維持します。

  • 好きな感覚を用いる
    視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感で相手が好む感覚や表現を使うことで、過去の体験を思い出す。
    「好きな景色はどこですか?」「どんな香りが好きですか?」「ふわふわして気持ちいいですね」など。

  • アイコンタクト
    高齢者は視界が狭くなっている方が多いため、相手の目の高さに合わせて話を聞きましょう。
    理解しようとする姿勢が安心感を与えます。

  • タッチング
    肩や腕、手の甲など触れることで、親密感や安心感を与える。
    触れられることが苦手な人には使わない。

  • ミラーリング
    動作や姿勢、表情、声の大きさなどを同じようにすることで、親密感や安心感を与える。
    真似されることで不快感を感じる方もいるので注意しましょう。

  • はっきりとした低い声で話す
    普段は低く、優しく、温かい声で話す。高い声は聴き取りづらい場合があります。

  • 音楽を使う
    好きな音楽、思い出の音楽を聴く、唄うことで、会話の導入をスムーズにする。

  • 行動に意味を与える
    意味のなさそうな行動に対して、満たされない欲求があるのではないかと想像して、話しかける。
    ぐるぐると歩き回る方に、「歩くと楽しい気分になりますね」と声をかける。

まとめ

高齢化が進む日本では、認知症への悩みも多いと思います。

家族や介護者が抱える問題や悩みを解決するためにも、認知症の理解と関わり方を知ることが重要です。

バリデーションのテクニックをすべて使う必要はありませんが、コミュニケーションに役立てることができたら幸いです。

バリデーションは、認知症の方とのコミュニケーションだけに限らず、上司と部下などのビジネス関係でも役に立ちます。

同意ではなく、認識や理解を示すことで、「情緒の安定化」「ストレスの低下」「忍耐力の向上」などの効果があります。

「そう思うのも無理はありません」
「そのような状況であなたが抱いている気持ちは当然のことだと思います」
「あなたの意見は理解できます」
「言いたい事はとてもわかります」

このような言葉が、心理的安全性を高めてくれるのかもしれませんね。

普段からバリデーションを意識していれば、自然と周りに良い影響を与える人になれると思います。

より良い人間関係を築くためにも、バリデーションを知っておくことをお勧めします。

最後まで、読んでいただき、ありがとうございました。

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