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IoT×SaaSというビジネスモデルに辿り着いて気付いたこと

 1ヶ月ほど前に資金調達のリリースで、IoT×SaaSの会社としていくつかのメディアに取り上げていただきました。

 IoT(Internet of Things)の会社として創業して約4年、プロダクトの価値の追求はもちろんですが、ビジネスモデルという観点で何が正しいかを常に問い続けていました。

最近は自信をもってIoT×SaaSというビジネスモデルの会社であると対外的に宣言していますが、ここまで来るのにいくつかのチャレンジがあったので変遷を残しておこうと思いnoteを書くことにしました。

併せて、ハードウェアを自社開発しながらIoT×SaaSというビジネスモデルを取ることによるメリット・デメリットもあり、このビジネスモデルについて外の方から意見をもらえればありがたいです。

①IoT×SaaSというビジネスモデルに辿り着くまで

1) 機器売り切り

最初に採用したビジネスモデルは最もベーシックな機器売り切りというビジネスモデルでした。

そのモノの持つ価値を定め、購入者がその金額に納得をしてもらえば購入してくれるというやり取りがお客さんと行われます。

企業側としては製造時点でそのモノを提供するのに必要なコストが発生していて、販売することで製造コストを回収し利益を生む構造なのですが、IoTだとそうもいかずに悩みました...

具体的には、サポートコスト、サーバーコスト、システムメンテナンスコスト(エンジニア人件費)etc... が発生し続けます。マイナーアップデートした新製品を買い替えてもらうことが企業側にとってベストになってしまいかねません。

2) 機器売り切り+サービス利用料

次に採用したのが、機器売り切り+サービス利用料です。

製造時点でそのモノを提供するのに必要なコストが発生していて、販売することで製造コストを回収し、更にサービスを維持するために発生するコストもお客さんに払ってもらうモデルです。

顧客目線に立つと、プロダクトの価値って初期と月額ってそれぞれ何なの?という感じで、価値に対して対価を払うという商取引の基本に振り返るとなんだかややこしいな、と感じるようになりました。

3) IoT × SaaS = サービス利用料 = 機器レンタル料+システム利用料+サポート料・・・いまここ

現時点で採用していて、最もしっくり来ているのがサービス利用料を継続的にいただくモデルです。サブスクリプション型と言い換えることもできます。

顧客への提供価値である、入退室管理ができるのでセキュリティレベルを高められることや、遠隔での鍵の発行剥奪・履歴管理ができるので施設運営を効率的にできることなど、プロダクトの価値を提供し続け、かつ更に顧客に提供する価値を高めることに没頭できます。

②IoT×SaaSのメリット

IoT×SaaSというビジネスモデルを採用して会社経営してみると、各種ステークホルダーの目線に立ったときのメリットが多くあるなと感じるようになりました。以下にまとめました。

1) 顧客目線:買い替え需要を創出せず、プロダクトの品質・耐久性を磨き続けられる

お客さんは壊れると再設定の手間や使えない期間が発生してしまうので、一度使い始めた製品が壊れずに長く使い続けられるほうが基本的に嬉しいです。機器レンタルというビジネスモデルの側面があることで、会社としてもプロダクトの品質・耐久性を磨き続けることが完全に正になるので、Win - Winな関係性になります。 

2) 顧客目線 & 社内目線:プロダクトの価値を顧客に提供し続けることにコミットできる

もし売った時点で会社として顧客との取引が終了してしまうと、購入後の満足度向上のためのプロダクト改善やサポート改善をして顧客に価値を届け続けることに力学が働きにくいです。(もちろんソーシャルの力が強い時代、劣悪なサポートは長期的にいいことは無いですが...)

逆にSaaS型だと獲得コストの回収LTVの最大化を目指すので、顧客の満足度向上や利用促進に注力できます。
またIoTという特性上、ソフトウェアやアプリサービスと同じようにカスタマーヘルススコアが高度に取れるため、顧客の利用状況に応じたサポートもしやすいです。

3) 投資家目線:重要指標に関する共通理解がある

SaaSというビジネスモデルは以下のリンクなどに詳しいですが、一般的に成功法が確立されている分野だと思います。

ビジネスがうまくいっているのか?課題があるのはどこなのか?についての議論がまとまりやすくなりました。

③IoT×SaaSのデメリット

IoT×SaaS特有のデメリットもあれば、一般的なデメリットもありますが、以下にデメリットをまとめてみました。

1) 顧客目線:サブスクリプション型への抵抗がある顧客は顧客でない

非常に悲しいことですが、サブスクリプション型のサービスに抵抗感のある人が多いのは事実です。その場合は顧客でなくなってしまいます。
もちろん様々な料金体系を準備できることがいいこともありますが、一番の顧客のために最適な料金体型とプロダクト・サービスを築くには仕方ないと思っています。

2) 経営目線:キャッシュフローが苦しい

ただでさえソフトウェア開発以上にプロダクト開発に投資が必要、ソフトウェアと違って自社で機器を資産として抱えるため、1獲得に対する初期投資が多いというのはキャッシュフロー的に苦しいです。リース会社からのファイナンスなども活用してキャッシュフローの改善を試みていますがそれでも苦しく、ここは課題だと感じています。

SaaSのビジネスモデルの価値の一つに、顧客のファイナンス機能の代替があると個人的には思っているので致し方なし、という考え方もできますが、自社の資金調達能力との戦いでもあるモデルです。

3) 経営目線 & 社内目線:会社として必要な機能が多い

ハードウェアベンチャーは部品調達製造管理在庫管理ロジスティクスなど通常のITサービスより必要な機能が多いです。
プロダクトの開発も、ソフトウェアだとアジャイル的にできますが、ハードウェア開発は金型などもあり、不可逆性があります。
それにも関わらずれレンタル資産管理、返却品管理、交換管理など追加の業務が発生し、オペレーションが煩雑になりがちです。

④最後に

以下が、noteのまとめです。

●ビジネスモデルの変遷
1) 機器売り切り
2) 機器売り切り+サービス利用料
3) IoT × SaaS = サービス利用料 = 機器レンタル料+システム利用料+サポート料・・・いまここ

●IoT×SaaSのメリット
1) 顧客目線:買い替え需要を創出せず、プロダクトの品質・耐久性を磨き続けられる
2) 顧客目線・社内目線:プロダクトの価値を顧客に提供し続けることにコミットできる
3) 投資家目線:重要指標に関する共通理解がある

●IoT×SaaSのデメリット
1) 顧客目線:サブスクリプション型への抵抗がある顧客は顧客でない
2) 経営目線:キャッシュフローが苦しい
3) 経営目線・社内目線:会社として必要な機能が多い

現時点ではベストだと思っているIoT×SaaSも2-3年後全然違っていること言っている可能性あるので、そのときにこのnoteを振り返るのが楽しみです。

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