見出し画像

成功体験シナリオでプロジェクトにブレない軸を通す

こんにちは、AQUARINGの渡辺です。ディレクターとして、主にサイト制作におけるUXリサーチやそれを基にした情報設計なんかをやっています。

今回は、2019年9月にリニューアルした「中部国際空港 セントレア」、そのサイト開発プロセスの一部を紹介します。

1年を超える制作期間で、多くのメンバーが関わったこのプロジェクト。当初の目的からゴールまで、ブレずにアウトプットへ導いた「成功体験シナリオ」という手法のお話です。

成功体験シナリオとは?

画像6

まず初めに、成功体験シナリオとは何なのか

ユーザーの行動を可視化するという点で、ジャーニーマップに似ていますが、理想(成功体験シナリオ)と現実(ジャーニーマップ)を描くという明確な違いがあります。

成功体験シナリオ
ターゲットニーズを紐解き、ユーザーにとっての体験価値を最大化する「理想」の行動パターンを示したもの

ジャーニーマップ
ユーザーがある目的を達成するまでの行動や思考、感情を時系列にまとめ、可視化したもの

では、どんな場面で価値を発揮するのか。

成功体験シナリオの価値は「一貫性」

画像6

設計から開発、検証、その後の運用に至る、さまざまなフェーズで「考えの拠り所」として機能し、プロジェクトに一貫性をもたらしてくれるのが成功体験シナリオであり、その価値だと考えています。

特に、長期間かつ多数のメンバーが関わるプロジェクトにおいて、「時間経過」や「個人の価値観」によるブレを無くす共通指針として有用です。

プロジェクトへの導入のきっかけ

画像6

「中部国際空港 セントレア」のサイトリニューアルは約6年半ぶり。当然、さまざまな変化に対応する必要がありました。

空港自体の変化
・新しいターミナルが開港予定
・商業施設や駐車場の増設

空港利用者の変化
・訪日外国人の増加

サイト利用者の変化
・閲覧環境がPCからスマートフォンにシフト

そこで、ユーザーのニーズや行動を改めて整理し、「あるべきサイトの姿」(=成功体験シナリオ)を描くことからスタートしました。

情報を集めて仮説を立てる

画像6

まずは身近なところから情報をかき集め、以下の流れで成功体験シナリオを作りきりました。

制作プロセス
・社内で「旅マエ・旅ナカ・旅アト」での行動とニーズを意見だし
・↑の内容と現行サイトのアクセスログ等を参考にターゲット設定
・ターゲット別にジャーニーマップを作成し、現状(課題)を可視化
・空港の体験価値を高める理想形として、成功体験シナリオを作りきる
・↑に空港を最もよく知るセントレアさまの意見を反映

結果的に、社内外含め多くのプロジェクトメンバーを巻き込みながら作ったシナリオ。皆の意見も踏まえることで、共通指針として意識してもらうきっかけにもなるので、この巻き込む工程が重要だったと感じています。

ユーザーの実態調査で精度を高める

画像6

しかし、まだ完成ではありません。仮説の域を出ない成功体験シナリオを、ユーザーインタビューを中心とした調査で検証。ブレを無くす共通指針として機能させるために、さらに精度を高めます。

検証内容
ユーザーニーズやタッチポイントが、シナリオと乖離が無いかを、被験者一人ひとりに対してテストを実施

被験者
ターゲット別に、計7か国40名のユーザーをリクルーティング

検証その1:行動観察
空港サイトを利用するシナリオをタスクを用意し、被験者のサイト閲覧の過程を観察。その後、被験者と一緒に振り返り、思考や感情を深掘り

検証その2:ユーザーインタビュー
旅行時に必要とする情報やその入手先、空港での過ごし方などを確認

結果として、シナリオと大きな違いはありませんでしたが、旅慣れしている上級者は、空港サイトとの接点が極めて少ないことや、アクセスは他サービスやアプリで見るなど、リアルな声を得ることができました。

これらの結果から、最初のタッチポイントの見直しや、他サービスとの連携強化など、細かい修正を反映することで完成としました。

活用される成功体験シナリオへ

画像6

こうして完成した成功体験シナリオは、さまざまな場面で活用。活用することで、プロジェクトに一貫性をもたらす指針となり得ます。

活用シーン
・画面設計、導線設計など、UI/UXを考える際に
・ユーザビリティテストの検証項目やタスクの検討時に
・KPIを立てる際に
・社内外のコミュニケーションに(ブレのないプロジェクト進行)など

「活用される成功体験シナリオ」にするポイントは以下の2つです。

・プロジェクトメンバーを巻き込んでシナリオをつくる
・ユーザーのリアルな意見でシナリオの精度(説得力)を高める

ぜひ、みなさんのプロジェクトでも、こちらの内容を参考に成功体験シナリオを制作・活用してみてください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?